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ドゥテルテ氏またお騒がせ “人権弾圧”のマルコス元大統領を「英雄」墓地に 「歴史を浄化するな!」と数千人デモ

産経新聞 9月23日(金)18時32分配信

 【シンガポール=吉村英輝】フィリピンで長期独裁政権を維持し、1986年の「ピープルパワー(民衆の力)政変」で失脚した故マルコス元大統領の遺体について、ドゥテルテ大統領が「英雄」として埋葬することを決め、波紋を広げている。ドゥテルテ氏には、薬物犯罪容疑者らの「超法規的殺人」を容認する姿勢に、批判が上がっている。人権弾圧などで現代史に汚点を残したマルコス氏の“名誉回復”は、世論の反発を増幅させそうだ。

 「歴史を浄化するな」。マニラ首都圏の教育省前などで21日、数千人の学生らがデモ行進し、マルコス氏の英雄墓地への埋葬に反対する声を上げた。この日は、44年前の1972年にマルコス氏が戒厳令を布告した日。マルコス氏は、戒厳令で学生らの民主化運動を弾圧し、私腹を肥やして政治家や官僚の腐敗を進行させたとされる。

 マルコス氏は89年、亡命先の米ハワイで病死。ラモス政権下の93年、遺体の帰国が許され、故郷の北イロコス州の博物館の廟で冷凍保存され公開されている。イメルダ夫人(87)らが大統領経験者や戦没者が眠るマニラ首都圏の英雄墓地への埋葬を訴え続けてきたが、父親がマルコス政権下で暗殺されたアキノ前大統領らが反対してきた。

 ただ、独裁時代を知らない若い世代が台頭し、「開発独裁」とも呼ばれたマルコス政権を「黄金時代」と再評価する動きも出てきた。5月の副大統領選で父親の功績を訴えた長男フェルディナンド・マルコス氏(59)は、僅差で敗北する人気ぶりだった。

 マルコス家とも親しいドゥテルテ氏は6月に大統領に就任するとともに、「国民の和解」を理由に英雄墓地への埋葬を決定した。

 これに対し、かつて拷問を受けた人権被害者が差し止めを求める仮処分を申請し、フィリピン最高裁は今月7日、10月18日までの埋葬を禁止して審理を継続する決定を下した。

 マルコス独裁時代を知り「社会主義者」を自称するドゥテルテ氏は、学生らの反対運動には理解を示す。一方で、今月2日に発生した南部ダバオでの爆弾テロを受けて全国に無期限で「無法状態」を宣言し、軍や警察による治安対策強化も推し進めている。

 デ・ラサール大学(フィリピン)のリチャード・ヘイダリアン助教は、貧困や汚職の解決が進まないフィリピン社会のこの現象を「歴史の忘却ではなく独裁への懐古だ」と指摘する。

最終更新:9月23日(金)19時55分

産経新聞