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なぜ『オフサイド』が異才を生むのか

朝日新聞デジタル 9月23日(金)11時20分配信

【北條聡のフットペディア】

■サッカー用語編『オフサイド』

 待ち伏せは、よろしくない――。

 そうした説が一般的らしい。オフサイドの反則が初めてサッカーのルールブックに記載された理由である。1866年のことだ。

【写真】J1歴代最多得点を決めたサンフレッチェ広島・佐藤寿人

 密集から遠く離れ、ひとり敵のゴール前で好機をうかがう。その行為を、卑劣な手口として断じたわけだ。いかにも英国紳士の発想らしい。サッカーがイングランド以外で体系化されていたら、オフサイドは「禁じ手」にならなかったかもしれない。

 当時のルールでは前方にボールが送られた時点で、守備側の選手が「3人未満」の場合にオフサイドの反則が適用された。しかし、1925年に現行の「2人未満」に変更される。ビル・マクラッケンというアイルランド人の巧妙な手口によって、ゴールの数が減少したからだ。

 オフサイド・トラップである。

 ボールが蹴られた瞬間、前方にすっと飛びだし、攻撃側の選手をオフサイドにしてしまう。相手チームは、この狡猾(こうかつ)なワナにことごとくハマったらしい。

 当時は2-3-5システムが主流だから、DFはフルバックの2人。GK以外にどちらか1人が残っていても、攻撃側をオフサイドにできたわけだ。仮にトラップをかけ損なっても、残った1人が対応できる。

 だが、現代はそうはいかない。

 GK以外に守備者が1人でも残っていたら攻撃側はオンサイドだ。トラップに失敗したらGKしか残っていない。たくらみは一か八か。ハイリスク・ハイリターンというわけだ。

 オンか、オフか――。その境界線とも言うべきオフサイドライン(守備側の最後尾)をめぐる攻防は、より知的で、かつスリリングなものとなった。

 もし、オフサイドの反則がなかったら、どうなっていたか。ゴール周辺だけに密集ができるハンドボールやバスケットボールのような攻防が常態化するかもしれない。

 スペースのないゴール前で求められるのは高密度で連動するコンビネーションに加え、空中戦、1対1、ミドルやロングシュートの達人だろうか。そうなると、ラインブレーク 一筋のストライカーは出番を失うことになるかもしれない。

 元イタリア代表のフィリッポ・インザーギやサンフレッチェ広島の佐藤寿人ら、巧みに最終ラインの背後へ抜け出す専門家は、ほかのボールゲームには存在しにくいフリークス(異形の人)か。彼らもまた、オフサイドの産物と言ってもいい。

◆北條聡(ほうじょう・さとし)サッカーライター。栃木県出身。早大卒。1993年より老舗の専門誌『サッカーマガジン』勤務。以来、サッカー業界一筋。2004年より『ワールドサッカー・マガジン』編集長、2009年より『週刊サッカーマガジン』編集長。2013年に退社し、フリーランスに。著書に『サッカー世界遺産』『サカマガイズム』(ベースボール・マガジン社)。敬愛する選手はカルロス・バルデラマ(コロンビア)

(朝日新聞デジタル「&M」)

最終更新:9月23日(金)11時36分

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