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アメリカンスタイルをまとった「V9ボバー」はイタリアン・ミドルクルーザー

朝日新聞デジタル 9月23日(金)13時1分配信

【モーターサイクル・リポート】

 イタリア最古のバイクブランドであるモトグッツィは、今夏から新型車「V9 Bobber/Vナイン・ボバー」をリリースしている。排気量853ccの縦置きV型2気筒エンジンは、モトグッツィ社のスタンダードモデル「V7」のエンジンをベースに排気量を拡大。そのエンジンを、“ボバー”と呼ばれるアメリカンカスタムスタイルの車体に搭載しているのだ。

【フォトギャラリー】モトグッツィ V9 Bobber

 イタリアンブランドがアメリカのスタイルを採用することに違和感を感じるかもしれないが、これは95年の歴史を持つモトグッツィがバイクの大排気量時代の到来と、その市場が北米へとシフトした1960年代後半の販売戦略が大きく影響している。当時、二輪の巨大なマーケットになっていたアメリカは、1970年にマスキー法と呼ばれる、いわゆる排ガス規制を施行。それにより二輪マーケットは、未燃焼ガスを放出する2ストロークエンジンから4ストロークエンジンへと急激に舵(かじ)が切られ、また同時に高出力とそれによって得られる快適性を求め、排気量の大型化が一気に高まった。

 多くのブランドがそれをクリアしながらもアメリカ市場でのシェア獲得を目指し、様々なニューモデルを投入。モトグッツィ社も、その覇権争いに加わったメーカーの一つだった。そこでモトグッツィは四輪用に開発し、その後軍用三輪車に搭載されていた縦置きV型2気筒エンジンをバイクに搭載。それが今日へと続く、モトグッツィ縦置きV型2気筒エンジンの歴史のスタートとなった。また同時に初の縦置きV型2気筒エンジン搭載車が“V7”というツアラーモデルであったことから、ツアラーブランドとしてのモトグッツィの歴史がスタートしたと言ってもいいだろう。

 そもそもモトグッツィは、ツアラーモデルの人気が高かったアメリカで、威風堂々としたスタイルと個性的なエンジン特性で人気を博した。1972年に“カリフォルニア”と名付けた北米専用モデルをリリースするほか、警察や軍用車両も数多く手掛け、アメリカ市場での存在感を増していったのだ。

 今回「V9ボバー」が採用した“ボバー”というスタイルは1940年代にアメリカで流行したカスタムスタイル。当時は路面状況が悪く、前後輪は泥ハネを防ぐディープフェンダーや幅広く高いハンドルを装着するバイクが一般的。それをベースに軽量化を求めてフェンダーをカットしたり、低く構えるライディングポジションが可能なロー&スリムなハンドルを装着したりしたレーシングマシンが登場した。それをまねたカスタムスタイルを“Bobber/ボバー”と呼んだのだ。その語源は、短く切りそろえた競走馬の尻尾/Bob Tail(ボブ・テール)であり、短く切ったフェンダーからそう名付けられた。

 排気量853ccの「V9ボバー」の新型エンジンは、クランクケースを「V7」と同様としながら、ボアストロークを変更し排気量を拡大。空冷エンジンの冷却効果を高めるためオイル潤滑システムを新設計し、またクラッチ容量を増やすとともに、新設計の6速ミッションを採用するなどギアレシオの最適化も計られている。

 またモトグッツィ独自のトラクションコントロールシステム/MGCT(モトグッツィ・コントローロ・ディ・トラツィオーネ)を搭載。エンジンマネジメントシステムと連携し、路面温度が低いとき、またウェット路面など路面状況が悪いときにタイヤのグリップ性能を最大限に発揮できるよう、ライダーのアクセル操作をサポート。またABSの採用により、ブレーキ操作もサポートする。

 ユニークなのは、「MG-MP(モトグッツィ・メディア・プラットフォーム)」と呼ばれるスマートフォンアプリがアクセサリーとしてラインナップされていること。Bluetoothを利用し、スマートフォンを通して「V9ボバー」のさまざまな情報を手に入れることができるのだ。

◆河野正士(こうの・ただし)二輪専門誌の編集部員を経てフリーランスのライター&エディターに。現在は雑誌やWEBメディアで活動するほか、二輪および二輪関連メーカーのプロモーションサポートなども行っている。ロードレースからオフロード、ニューモデルからクラシック、カスタムバイクまで好きなモノが多すぎて的が絞れないのが悩みのタネ

(朝日新聞デジタル「&M」)

最終更新:9月23日(金)13時14分

朝日新聞デジタル