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米の自動運転車指針が示す、実用化への長い道のり

ウォール・ストリート・ジャーナル 9月23日(金)12時37分配信

 米デトロイトの自動車メーカーやシリコンバレーのテクノロジー企業は、オバマ政権が20日に発表した自動運転車に関する指針を歓迎している。しかし、機械が完全に人間に代わって運転するまでの道のりは依然長く、さまざまな困難が待ち受けている。

 今回の指針は法的効力を持つ規制を避けると同時に、自動運転車の発展を妨げないよう、国の指針と矛盾する規則を策定しないことを州に求めている。これは、メーカーやテクノロジー企業側が自動運転車の規制を巡る初期の戦いを制したことを意味する。

 だが、政府が確固とした模範的な規則の策定に消極的なことは、一部の当局、都市計画担当者、保険会社の間で自動運転車に対する準備がいかに進んでいないかを示してもいる。

 自動運転車開発における技術的課題をメーカーが全て克服した場合、急成長中のこの分野は、馬車から自動車へ移行してからは起きていなかった変化を日々の生活にもたらすだろう。都市では道路の舗装や信号の配置などを改める必要が出てくるかもしれない。保険会社や弁護士は、自動運転車同士が衝突した時の責任の所在について、対応を迫られることになりそうだ。

 調査会社IHSマークイットの自動車アナリスト、ジェレミー・カールソン氏はこうした想定が「現在の状況からは依然遠い話だ」と述べた。同社は、2020年には米国で数千台の自動運転車が販売されると予想している。

 フォード・モーター、ウーバー・テクノロジーズ、アルファベット傘下のグーグルといった企業は、完全な自動運転車が5年以内に開発されるとの見方を示唆している。テスラ・モーターズは、限られた状況で車体を制御できる「オートパイロット」機能を製品に搭載し、技術というものがいかに急速に組み込まれうるかを示した。この機能は、自動運転に向けた大きな1歩とみられている。

 グーグルは150万マイル(約240万キロメートル)を超える自動走行を行って、自動運転技術に対する世間の想像をかき立てた。同社は、ハンドルや足で操作するブレーキといった従来の装置がない自動車を想定している。

 そうなれば、米国の自動車安全基準に課題を突きつけるかもしれない。自動車の設計や構造に関する規則は数百ページに及び、バックミラーの寸法などの細部にまで及んでいる。

 運輸省道路交通安全局(NHTSA)は3月に公表したリポートによると、現在の基準を検証したところ、ドライバーが乗る従来設計の自動運転車については規則面でのハードルがほとんど見当たらなかった。一方、ドライバーがいないことを想定した自動車については問題が多かったという。

 同リポートによると、ハンドルや運転席、一部のディスプレーやブレーキペダルがなく、「人間が運転する可能性を排除し、自動運転に限定した自動車を販売したいのなら、基準を満たすことは難しくなりそうだ」という。

 米当局はこうした規則に例外を設ける可能性があるが、政府の現行規則によると、新たな安全機能の開発について例外が有効なのは最大2年だ。ある業界の技術担当者は、例外のおかげで、「誰かが近い将来にやりたいことが(規則に)妨げられることはないが、将来これが普及した時に何らかの変更が必要になる」という。

 運輸省の当局者らは20日、将来の自動運転車設計との矛盾に対応するため規則を変更するかどうかを検討中だと述べた。

 連邦政府の当局者はこれまで新たな規則の策定に抵抗してきた。猛烈なペースで技術革新が進むなか、数年にわたる策定プロセスで規制の意味が失われかねないと懸念しているためだ。その代わり、企業に情報共有を求め、設計や機能について当局に知らせるよう促してきた。

 連邦政府や州が問題解決に努めるなか、都市も変更に直面しそうだ。全米都市連盟(NLC)によると、長期計画の中で自動運転車の影響について考慮している都市は6%程度にすぎない。同連盟は、当局者が自動運転車の専用レーンを設けるかどうかや、「潜在的に不要な多くの駐車場」への対応を決める必要があるとしている。

 自動車保険会社も、自動運転車が事業に及ぼす影響を見極めようとしている。例えばKPMGのアクチュアリー(保険数理)部門によると、完全自動運転車の登場もあって、米国での自動車事故の発生頻度は2040年までに80%低下するという。弁護士の間では、衝突の責任がどこにあるかといったことが議論されている。

By TIM HIGGINS and MIKE SPECTOR

最終更新:9月23日(金)12時37分

ウォール・ストリート・ジャーナル