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信頼関係築く「ミラーリング」、仕事でも有効

ウォール・ストリート・ジャーナル 9月23日(金)13時17分配信

 それは日常的体験だ――。例えば、誰かと会話している時、相手と同じポーズを自分がしていることに突然気づく。あるいは、相手と同じように南部なまりになったり、早口で声が大きくなったりし始めていることに突然気づくこともある。

 研究によれば、会話相手のそぶりや表情、姿勢、声の高さないし調子を鏡映しのようにまねする「ミラーリング」は、親密さ、あるいは相手を喜ばせたいと思う気持ちの反映と言える。それは恋人同士の間では極めて頻繁にみられるが、コネ作りやミーティング、そして同僚たちとの会話など、仕事上でも起こり得る。

 気持ち悪い? そうかもしれない。それは大半の人が無意識にしている行動だからだ。しかしミラーリングは他者との強力なつながりを作るのに役立つ場合がある。これは「カメレオン効果」とも呼ばれ、まねされた側からより好かれ、より信用されるようになることがあるのだ。実際、関係作りの達人やプロの交渉者などは、ミラーリングを使っているという。会話に一段と深く入り込み、話し相手をより良く理解するためだ。

 フランスの研究者チームが行った2011年の調査によれば、顧客の非言語・言語行動をまねするよう指示された販売員は、指示されなかった販売員よりも売り上げが増加し、顧客からの前向きな意見も多かった。また、2008年に「実験社会心理学ジャーナル」に掲載された別の研究論文では、学生62人を対象に同様の実験を実施。相手の姿勢や話し方をまねた学生は、67%の確率で交渉が妥結した一方、まねなかった学生が妥結した確率は12.5%だった。

 会話に深く没頭している人は、互いにミラーリングしているのに気づいて驚く場合がある。ボストンのネットワーキングコンサルタント、ダイアン・ダーリングさんは最近、フランスにいる友人とビデオ通話していた時、2人がいずれもイスに深く腰を掛け、両腕を頭上に伸ばしているのに気づいた。「向こうは午後2時だったにもかかわらず、朝のストレッチ運動のように」両腕を伸ばしていた、とダーリングさんは言う。

 研究者らは最近、こうした行動は単なる「物まね」以上のものになることを、脳画像化技術を使った新しい方法で突き止めた。プリンストン大学のウリ・ハッソン准教授(心理学・神経科学)が共同執筆した2016年の研究論文によれば、機能的磁気共鳴画像診断装置(fMRI)を使って聞き手と話し手を研究したところ、双方が「ダイナミックに連結している」ことを発見した。つまり話し手と聞き手の脳が互いのシグナルに反応し、順応していることが分かったという。ハッソン博士は、このつながりは脳のいわば「ワイヤレスボンディング(無線接合)」のようなものだと述べている。

 この種の共有行動は、親密さと信用を育む。コミュニケーション分析会社クウォンティファイド・コミュニケーションズの創立者で最高経営責任者(CEO)のノア・ザンダン氏は、「こうした脳と脳の連結を実現できる程度に応じて、人々は(コネ作りなどで)より強力になれる」と述べている。

 しかし、心から関与しようとしないままで、他者の行動を意図的にまねしようとすると、逆効果になる場合もある。まねされた側が、自分を操縦しようとしているのではないかと勘ぐる可能性が大きいからだ。英ユニバーシティー・カレッジ・ロンドン(UCL)の名誉教授(神経心理学)で、ハッソン准教授との16年の研究論文の共同執筆者でもあるクリス・フリス氏は「われわれは自分を模倣する人々を好む傾向がある。ただし、模倣していると気づかない限りにおいてだ」と語った。

By SUE SHELLENBARGER

最終更新:9月23日(金)13時17分

ウォール・ストリート・ジャーナル