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Brexitが英国のFinTechに与える影響

ZUU online 9/24(土) 19:10配信

6月23日のBrexitに関する投票から3カ月が経過して、一時期の衝撃は収まり、落ち着きを取り戻しつつあるように思われる。現時点では、英国のEU離脱は2019年までは生じないと目されているが、Brexitにより世界のFinTechハブとしてのロンドンの地位と英国のFinTech業界にどのような影響を生じる可能性があるのかを検討したい。

■金融パスポート問題

金融業界で注視されているのが、いわゆるEU域内金融「パスポート制度」の行方であろう。これは自国で免許を取得している場合、EU加盟国内であれば拠点設立や免許取得なく金融サービスを提供できる制度である。

仮にBrexitにより、英国に拠点を置く金融機関やFinTech企業がこの制度を利用できなくなるとすれば、これまでのように自由にEU加盟国でビジネスを行うことが難しくなる。その結果、拠点をロンドン以外の都市(例えば、フランクフルトなど)に移し、そこで免許を得ることでEU加盟国全体でビジネスを行うことを検討する金融機関も現れるだろう。

ただしパスポート制度が利用できないことによる影響は、FinTech企業については限定的になるように思われる。なぜならFinTech企業の中には、パスポート制度の対象であるEU指令(EU Directive)と呼ばれる規制上の規制業務をビジネスとして行っていない企業もあり、そのような企業は今後もEU域内で免許等を取得することなく業務を行えると考えられるからだ。

現在のEU指令上、FinTech関連で規制される業務としては、投資運用や資産管理関連、エクイティ型クラウドファウンディング、保険比較プラットフォーム・仲介や決済関連サービスなどがあげられる。

従って、これらのビジネスを営むFinTech企業については、パスポート制度が利用できなくなることによる影響は大きいであろう。一方仮想通貨やブロックチェーン関連のサービスは現時点ではEU指令で直接的に規制されていないため、パスポート制度が利用出来なくなることによる直接的な影響は少ないものと思われる。

■人材の移動・投資の継続・データ保護

これまでは、EU加盟国の市民であればビザの心配なくロンドンで働けたことから、FinTechハブとしてのロンドンに魅力的な人材が集まりやすくなっていた。

実際に英国のFinTech企業の従業員の約30%以上が、英国外のEUや他国出身者であると言われている。Brexitにより、仮にEU市民であってもロンドンで働くにはビザが必要になるとすれば、人材確保にコストがかかり、優秀な人材の容易な移動は難しくなるであろう。

なお現在英国で働いているEU市民がBrexitにより居住・就労の正当性を奪われる可能性は低いと考えられている。

FinTechスタートアップの成長には投資が重要となるが、現在の不確実な状況においては、英国のFinTechスタートアップに対する投資は細る可能性があると思われる。しかし革新的なサービスについては、そのような状況下であっても投資が継続する可能性はある。

FinTech企業の有する重要なアセットとしてデータが上げられるが、Brexitにより、英国と、EU各国や米国との間でのデータのやり取りに影響が生じるおそれがある。

2016年9月時点では、英国のデータ保護法制はEUのデータ保護指令に沿った内容となっている。しかしEUは16年4月に、厳格なデータ保護規則を制定しており、18年5月に施行される予定である。Brexitにより、英国にはEUの厳格な新規則は当然には適用されないことになる。

そのため英国では、同程度の厳格なデータ保護法制を整備するなどして、EUと英国とのデータのやりとりが可能となるようにするという見方も強い。

しかし、このような手当てが行われなかった場合、英国のFinTech企業はEU各国との間で自由にデータの移転・共有を行うことができなくなる可能性がある。

またEUと米国との間では、プライバシーシールドと呼ばれる枠組みの下でデータの移転が認められるが、Brexitにより英国は当然にはプライバシーシールドの枠組みに入ることができなくなるため、英国のFinTech企業が米国との間で自由にデータの移転・共有を行えるよう、英国と米国との間で調整が必要になると考えられている。

以上のように、Brexitは英国のFinTech業界の一部に影を落としている。現時点では、FinTechハブとしてのロンドンの地位をベルリン、アムステルダム、フランクフルト、パリ、ルクセンブルグやダブリンなどが引き継ぐという見解もある。

しかし、Brexitまでにまだ2年以上あり、不確定な要素が多いことや、英国の金融当局や中央銀行のFinTechに対するコミットは引き続き予想されることから、ロンドンの地位は揺らがないという見方もある。英国のFinTech業界の動きについては、引き続き注視していきたい。

渥美坂井法律事務所・外国法共同事業 FinTechチーム

最終更新:9/24(土) 19:10

ZUU online

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