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大規模リコールの富士重。拡大路線にモノづくりは追いつけるか

ニュースイッチ 9/24(土) 9:06配信

生産、日本重視の姿勢変えず。カギ握る新車台

 北米市場を中心に快進撃が続く富士重工業。2020年度の世界販売目標を当初計画比10万台増の120万台超に見直した。そして満を持して13年ぶりに投入したのが新しいプラットフォーム(車台)「スバルグローバルプラットフォーム(SGP)」 を採用した新型「インプレッサ」の販売が始まり、車の需給はいまだ逼迫(ひっぱく)している。

 とことが23日にはフロントワイパーに不具合があるとして「レガシィ」計約93万台を世界でリコール(回収・無償修理)すると発表、拡大路線に警鐘を鳴らす形となった。2018年度までに生産能力を15年度比で3割増やす計画だが、サプライヤーはついてこられるか。今こそモノづくりの底力が試されている。

 新型インプレッサは北米向けは米国工場で生産する体制になる。 部品の現地調達は、現在米国で生産している「レガシィ」と「アウトバック」と同水準の70%前後になる。

 既存の取引先が完成車の増産に合わせて部品の増産を実施する。また日本で取引のある深井製作所などは新たに豊田鉄工との合弁で米国に進出する。新型車も日米どちらかで取引のある企業からの調達する予定だ。

 大手の自動車メーカーでは工場近隣のサプライヤーパーク設置や、工場内に部品メーカーの生産工程を取り込むなど、調達と連携した生産効率化を進めている。

 ここ数年、富士重と同様に、クルマづくりで高い評価を得て販売を伸ばしてきた中堅規模のマツダ。同社は海外工場近隣に進出した系列サプライヤーのレベルアップを支援している。タイを皮切りに今年からはメキシコで本格的にスタート、マツダの生産技術担当者が取引先部品メーカーに出向き、コストや効率、品質の改善に加え、「モノ造り革新」と呼ぶマツダの新しい生産方式への対応を進めている。

 富士重の場合、主力生産拠点は日本と米国。サプライヤーパークは設置していないが、日本の群馬製作所本工場と同矢島工場、同本工場と同大泉工場との距離がそれぞれ3―4キロメートル。その間に大きな部品を組み立てる工場があるため、大きな完成車工場の中に部品メーカーが入っているようなもので、「距離の間隔は克服できる。米国も完成車と部品工場の距離が離れているが、トレーラーの利用で日本と同様に効率的に輸送できる」(同社幹部)という。

 一方で最大の課題は人材の採用だ。吉永泰之社長は「設備投資ができても人がいなければ車ができない。米国工場と現地サプライヤーがかなり緊密に連携して、一緒になって採用活動している」と話す。

 北米での販売が伸びる中、生産の軸足は徐々に海外へと移っていくのだろうか。吉永社長 は「いくら北米が好調だからといって、日本から米国に生産の軸足を移すことは考えていない。為替が円高に推移しても考え方は変わらない。日本のサプライヤーの皆さんにはぜひ安心してモノづくりに集中していただきたい」と訴える。

 16-18年度までの設備投資額は4700億円。うち6割を国内投資に振り向ける。具体的には主力車種「レガシィ」や「フォレスター」などを生産する矢島工場(群馬県太田市)内にある塗装ライン2ラインのうち、1ラインを刷新するなど国内拠点の新規の設備導入や老境化した設備の更新費用が投資のメーンになる。

 そこでコストや品質面でカギを握るのが新車台「SGP」だ。全車を相似形の構造とすることで、共通部品の拡大や生産体制の柔軟化できるのが特徴。開発初期から部品各社と連携し、多様なコスト削減施策を盛り込んだ。20年に20%の原価低減を目指しており、新車台がその中核を担う。
 
 SGPは、各国の安全や環境規制の全てに対応できるよう開発。対象は「インプレッサ」から「アウトバック」まで。

 全車を相似形にするため、部品各社と共同で取り組む。現行車台も同様の考え方で開発したが、各国の規制に順次対応するうち、共通部分が薄れていた。新車台は将来の規制強化の動向も反映している。

 具体的には、新車台は全長を長くする場合や重くする場合のそれぞれで、どの部品を変更するか細かく設定し、モデル間の共通部品を増やす。また、現行車は規制に対応するため当てパッチ(追加の部品)していたが、新車台では余計な部品がなくなる分、軽くできる。材料が減る軽量化は原価低減に直結する。

 生産ラインへの投資も工夫する。例えば、現行では車種によって前から溶接するか、横から溶接するかによってロボットの配置場所の違う部品もある。新車台は溶接方向を統一して同じラインで全車を生産できる設計とし、車種ごとの設備投資を減らす。よりフレキシブルな混流生産もできるという。20年には大半の車種への新車台導入が済んでいると見られ、コスト低減効果が大きくなる。

 相似形の車両によるコスト削減は、国内ではマツダが先行し、大幅な収益改善を実現している。富士重もマツダと同様に、限られた生産拠点で複数の車種を効率的に生産し、輸出競争力を高めなければならない。新車台の効果が注目される。

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最終更新:9/24(土) 9:06

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