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台風禍で牧草刈れぬ 生乳減産の危機 北海道

日本農業新聞 9/24(土) 7:00配信

 8月から続く台風と長雨の影響で、北海道の酪農地帯で牧草収穫の遅れが深刻化している。例年なら最終盤を迎えている二番牧草の収穫が大幅に遅れており、収量と品質の低下が危ぶまれる。来年までに必要な粗飼料を十分に確保できない恐れがあり、生乳生産量の低下や輸入飼料の購入によるコスト高など、酪農家への影響は必至だ。生乳生産の半分以上を担う北海道酪農への打撃は、全国の生乳需給にも影響しそうだ。

 「去年の今の時期は収穫がほぼ終わっていた。今年は3分の1しか終わっていない」。北海道鶴居村の松下雅幸さん(35)は焦りを隠せない。雨続きで、1、2日の晴れ間だけでは圃場(ほじょう)のぬかるみは消えず、大型機械が入れないためだ。

 松下さんは、乳牛200頭以上を擁し、草地130ヘクタールをフル活用した、自給飼料主体の経営。良質な飼料の確保でコスト削減と健康な牛づくりを進め、所得は年々上がっていた。しかし、今年の計画は大幅に狂った。

 9月下旬からは飼料用トウモロコシの収穫も控える。松下さんは「トウモロコシの適期刈りのためにも、牧草の一部は収穫を後回しにせざるを得ない」と語る。ただ、大幅に刈り遅れた牧草は枯れることになり、栄養分を大きく失う。

 二番牧草の収穫は北海道全体で例年より10日遅れている。鶴居村のある釧路地方は15日遅れと最も深刻だ。

 道内では、主力となる一番牧草の収量が悪かった地域もある。二番牧草も収量が少ないと、来春以降の粗飼料不足が深刻化し、酪農家は輸入乾牧草などに頼ることになる。飼料用トウモロコシの生育も悪く、収量が低下する見込みだ。

 都府県の生乳生産量が減少する中、北海道が増産でカバーして全国の生乳生産量を維持する構図が続いている。北海道の自給飼料へのダメージは全国的な生乳需給にも影響する可能性がある。

 道内の生乳生産の1割を占めるJA道東あさひでも、作業の遅れが深刻化している。JAの小島友喜営農部長は「酪農家は少しでも収量を確保したいが時間がなく、条件のいい圃場から収穫を進めざるを得ない」と語る。そのため、一部の収穫を後回しにすることもあり、刈り残しでまだらの圃場もある。

 長雨で水浸しの状況が続いたことに、長期的な影響を懸念する声も多い。JA管内の別海町の酪農家、臼井貴之さん(40)は今年予定していた草地更新を見送った。来年以降の収量にも響くとみている。「これだけ雨に打たれると土壌の構造そのものが変わってしまう」と心配する。来年以降の収量・品質を維持するため、草地のつくり直しを迫られる圃場も発生するという。

 小島部長は「少し晴れるだけでは作業は進まない。冬に入り今年産の飼料の給与が本格化してくると、生乳生産に少なくない影響が出てくるだろう」と予測する。(岡信吾)

日本農業新聞

最終更新:9/24(土) 7:00

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