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「古いビジネス=時代遅れ」ではないワケ

ZUU online 9/26(月) 19:40配信

「ものが売れない時代」と言われるようになってから久しい。日本政府はさまざまな手段を使って、景気の底上げを行おうとしているが、日本を再び成長軌道に乗せることは、簡単なことではない。必要なものは、もうほとんどの人の手にいき渡っているからである。

ではものが全く売れないのかというとそんなことはない。「商品」とひとくちにいっても、実際には「ニーズ」商品と「ウォンツ」商品の2種類に分けられる。この区別が意識出来ているかがものを売るためには必要になる。

■「ニーズ」商品は、安ければ安いほどいい

ニーズ商品とは「ないと痛みを伴うもの」のことで、簡単にいってしまえば生活必需品のこと。対するウォンツ商品とは、「あれば快楽となるもの」のことをいい、要は嗜好品を指す。

通常、ニーズ商品とは「ないと困るもの」だから、顧客はその商品が必要なことを自覚しているのが普通である。歯磨き粉や洗剤、トイレットペーパーなどといったニーズ商品は、「1円でも安く買いたい」と思う方が消費者心理だろう。

■「ウォンツ」商品は単価を高くできる

対するウォンツ商品とは、顧客が普段は自覚していない「潜在的ニーズ」を掘り起こす商品のことをいう。たとえばアイフォンがいい例である。

アイフォンが世に出るまでは、誰もスマホ自体を知らず、それを欲しいと思うことさえできなかった。それまでの携帯は1円携帯などといって、本体にはお金を払わないのが普通だったが、アイフォンはその概念をも変えた。つまり、ウォンツは高単価を狙えるのである。

ウォンツ商品の難しさとは、いかに顧客に「自分の中の欲求に気づいてもらうか?」という点にある。ニーズとウォンツの具体例については、拙著『プロフェッショナルサラリーマン』の中にも記載しておいたので、よろしければそちらもお読みいただければと思う。

■リアル店舗ビジネスの強みとは?

最近のインターネット業界の伸長を見て、「やがては従来の小売業が成り立たなくなるのではないか」といった悲観的な意見をいう人がいるが、筆者はそうは思わない。

小売業を含めた「リアル店舗ビジネス」のこれからは、「ウォンツを喚起する場所」として、新たな需要の掘り起こしに力を発揮できるのではないかと、筆者は考えている。

たとえば筆者は先日、台湾に出張にいった際に、「誠品書店」という本屋を視察した。誠品書店は、台湾を代表する大型総合書店のひとつで、TSUTAYAのモデルになったと言われる店舗である。最短距離でレジに向かわせる利便性ではなく、書籍にこだわらずにファッション、ブランド、飲食、ライフスタイルなどを総合的に提案する情報発信基地となっている。

誠品書店が目指しているのは、顧客にとって「居心地のいい空間」を提供することである。顧客の滞在時間を延ばし、楽しんでもらうことによって、店に入るまでは「欲しいとも思っていなかった」商品の需要を呼び起こそうという戦略である。

確かに「効率性」においては、リアル店舗はインターネットのECサイトには敵わないだろう。だが、「体験を売る場所」としては、インターネットの仮想世界は、リアル店舗には敵わない。「ウォンツ商品の掘り起こし」に関しては、今の所リアル店舗の方に分があるといえる。

■「古いビジネス=時代遅れ」とは限らない

社会の変化に伴い、時代遅れのビジネスが廃れ、新しい形態のビジネスが生まれてくるのは当然である。しかし、古いビジネスが一様に変化に適応できないのかといったら、そういうわけではない。

たとえ同じ商材であっても、置き場所を変えたり、販売する際の切り口を変えることによって、新たな需要を喚起することは可能である。大事なことは、他社と競合することではなく、「競合しないで済む道を探る」ことである。

その答えのひとつが、「他社にはないウォンツ」を打ち出すことだといえるのではないだろうか。

俣野成敏(またの なるとし)http://www.matano.asia/
1993年、シチズン時計株式会社入社。31歳でメーカー直販在庫処分店を社内起業。年商14億円企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン』(プレジデント社)や『一流の人はなぜそこまで◯◯にこだわるのか?』(クロスメディア・パブリッシング)のシリーズが共に10万部超のベストセラーに。2012 年に独立。複数の事業経営や投資活動の傍ら、「お金・時間・場所」に自由なサラリーマンの育成にも力を注ぐ。

最終更新:9/26(月) 19:40

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