ここから本文です

オムロン、画像認識の“オープン化”で広がる可能性

EE Times Japan 9/26(月) 11:38配信

 当社の画像センシング技術を、もっと世界中に届けたかった――。

 オムロンは2016年8月、組み込み機器に取り付けるだけで人の状態を認識する画像センサー「HVC-P2」を発表した。HVC-P2は、2014年3月に発表した「HVC-P」の後継機モデル。長距離検出と広角検出タイプを選べるだけでなく、認識速度を最大10倍に向上している。あらゆる設備や機器のIoT(モノのインターネット)化に貢献するという。

【取り付けるだけで人の状態を認識する画像センサー】

 HVC-P2は、独自の画像センシング技術「OKAO Vision」の10種類のアルゴリズムと、カメラモジュールを一体化した「HVC(Human Vision Components)シリーズ」の1つだ。HVC-Pに加えて、「HVC-C1B」と「HVC-C2W」が発表されている。

 HVC-C1Bは、Bluetooth Low Energy経由で、スマートフォンやタブレットにセンシング情報を入出力できるプロトタイプ製品である。HVC-C2Wは、“家族目線”を掲げたコンシューマー向け製品。無線LAN接続に対応しているため、クラウドに送られた画像を専用のアプリから確認することが可能だ。赤ちゃんや高齢者、ペットの見守りとしての用途を想定している(関連記事:家族目線のカメラセンサー、暮らしを優しく見守る)。

 HVCシリーズに共通するのは、“オープンイノベーション*)”である点だ。オムロンは、HVCシリーズの用途についてハッカソンを開催したり、HVCシリーズのSDK(ソフトウェア開発キットを提供したりして、ユーザー自身にアプリを開発してもらっている。同社は、この取り組みを「SENSING EGG PROJECT」と呼んでいる。

*)社内外のリソースやアイデアを組み合わせて新しい技術やサービスを生みだすこと

 今回、同社アプリケーションオリエンティド事業部の商品開発課でHVC開発リーダーを務める真鍋誠一氏に、HVCシリーズが生まれたきっかけや、オープンイノベーションにおける取り組みと成果、今後の展開についてインタビューを行った。

■5億ライセンスの出荷実績

 真鍋氏は、HVCシリーズを開発したきっかけについて、「OKAO Visionの裾野を広げたかった」と語る。同社のWebサイトによると、OKAO Visionは、老若男女、国籍問わず、さまざまな環境下における人画像をリアルタイムに検出、認識する画像センシング技術である。同社が、約20年にわたって開発を続けてきた技術で、顔や人の位置推定だけでなく、顔の器官や動きの検出、ペットの動き検出などの複数の機能を持つ。デジタルカメラやスマートフォンを中心に、これまでに5億ライセンスの出荷実績があるという。

 OKAO Visionの特長について、真鍋氏は「小型、高速、高性能の3つ」と語る。「OKAO Visionのエンジンは、組み込み用途で活用されており、メモリで処理が可能だ。IoT時代の画像処理は、データ全てをサーバに上げると、トラフィックが膨大してしまい、商用ベースとしてネットワークの信頼性が確保できない。サーバに上げる中で、タイムラグも生じてしまう。IoTでは、OKAO Visionのように組み込み機器で処理を行い、価値のあるデータのみをサーバに上げることが、主流の1つになると考えている」(真鍋氏)。

 ソフトウェアのライセンス提供で、ビジネス規模を成長させていたOKAO Vision。しかし、ライセンスの提供というビジネスでは、デジタルカメラやスマートフォンのように数量が多く出る顧客にしか届けられない。また、ソフトウェアの提供では、カメラを買うことから開発する必要があるため、使いこなしに手間が掛かる。そこで、OKAO Visionをスモールスタートで始められるよう、HVCシリーズが生まれている。

 「OKAO Visionで培った技術は、当社が持つ強みであり、スマートフォンやカメラ以外にも活用できると思っていた。もっと世界中の人に届けたかったのだ」(真鍋氏)

■「最初は反対だったオープンイノベーション」

 HVCシリーズは、最初からオープンイノベーションを掲げていたわけではない。きっかけは、HVC-P発表当時、ハッカソンが注目され始めていたことにある。試しに、ハッカソンで使用できるデバイスの1つとして、HVC-Pを提供したところ、開発者から「ぜひ使いたい」「面白い」という声が届いた。そこから、HVC-Pを活用したアプリがユーザー自身によって多く開発されたことで、オープンイノベーションの可能性を感じたとする。

 しかし、真鍋氏をはじめ、オープンイノベーションを進めることに最初は賛成しない人もいた。“リスクの方が大きいのではないか”という懸念があったからだ。

 「私も、最初は反対派だった(笑)。一般的な企業にもあるように、新しいことを始めることに抵抗感がある人は少なからずいたようだ。エピソードを話すとキリがないが、社員それぞれに思いがあり、方向性の違いからたくさんの議論もした。しかし、ライセンスビジネスは成熟期に入りつつある。次の成長を実現するには、挑戦しなければいけない。OKAO Visionで培った技術を、世界中の人に手軽に使えるような仕組みを作るには、自分たちだけでプロダクトを開発しても、そこまで広がらない。ハッカソンなどをはじめ、ユーザーとともに創るオープンイノベーションがマッチしていたのだ」(真鍋氏)

■徘徊検知システムが生まれる

 オープンイノベーションを進める中で、真鍋氏が「特にうれしかったこと」として、HVCシリーズを用いたシステムの商品化を行った企業が出たことを挙げた。その企業は、福岡に本社を置くY・S・Y・エンタープライズである。認知症の徘徊者早期発見補助システム「HITOMI」(ヒトミ)を開発した。HITOMIでは、対象者が外出しようとした瞬間を感知し、徘徊を検知。検知したら、スピーカーから音声で呼び止め、動画でも録画する。事前登録した家族や協力者にも、個人情報に配慮を行った上で、メールが配信される仕組みだ。これらの機能を実現するカメラの中に、HVCシリーズが内蔵されている。

 ハッカソンで出会った人とのつながりから、新しいことが生まれることも多い。ハッカソンで出会った「TMCN(Tokyo MotionControl Network)」とは、HVC-C2WにおけるSDKの使い勝手の良さを改善するため、1泊2日の開発合宿を行ったという。

 また、オムロンは2016年9月、Yahoo! JAPAN(ヤフー)が提供するIoTプラットフォーム「myThings Developers」とHVC-C2Wを連携したサービス開発に関する基本合意締結を発表している。この発表に関しても、「オープンイノベーションに共感してくれるヤフー社員とハッカソンで出会ったことがきっかけだった」と真鍋氏は語る。

 「オープンイノベーションは、ビジネスとして立ち上がるまでに時間を要する。今は、ユーザー(オムロンは、ソリューションベンダーと呼んでいる)に使ってもらいながらフィードバックを受け、HVCシリーズを育てていく時間と思っている」(真鍋氏)

 今後は、ソリューションベーダーに使ってもらいやすいように、より高性能な新製品を開発するとともに、各アプリに応じた性能改善を進めていくとした。

最終更新:9/26(月) 11:38

EE Times Japan

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

「水中に潜む本当の危機」
インドガリアルとキングコブラはインドの象徴ともいえる爬虫類ですが、水質汚汚濁のために存亡が危ぶまれています。環境保護者のロミュラスウィトカーがこの素晴らしい動物たちの貴重な映像をお見せして、彼らのそして私達の生活を支えている川の保全を訴えます。