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「中国政府、鉄鋼能力削減に本腰」=今年「4500万トン削減」に手応え

鉄鋼新聞 9/26(月) 6:00配信

 【北京発=高田潤】世界鉄鋼業の共通かつ最大の課題である能力過剰問題―。最大の過剰能力を抱える中国が解消に向けて本腰を入れ始めた。設備を止めた企業に対し雇用調整のための補助金を支給するという新政策も手伝って、今年は年産規模で4500万トンの能力を削減できる見通しだ。過剰能力は5億トンを超えるとされるだけにゴールはまだ先だが、かつてないほど中国の削減計画に対する期待は高まっている。

 「過剰生産能力の削減およびゾンビ企業の淘汰などを着実に進めてほしい。近年、中国がこの問題に対して真剣な取り組みを始めたことを高く評価する」
 経済界合同の訪中団団長として先週、中国に入った新日鉄住金の宗岡正二会長(日中経済協会会長)は、張高麗副首相との会談で、過剰能力問題に対する中国政府の取り組みをこう評価した。
 宗岡氏は昨年11月、訪中団団長として李克強首相と会談。過剰問題を取り上げ、「取り組みが急務」と訴えた。あれから1年弱。中国政府は宗岡氏の訴えに応えるかのように取り組みを加速させている。
 第13次5カ年の策定に合わせ、20年までに1億5千万トンの削減計画を打ち出したほか、それと並行して鉄鋼業と石炭産業を対象に、雇用調整資金に充てる財源1000億元(2年間、約1兆5千億円)を予算化した。
 中国はこれまでも何度か設備廃棄計画を打ち出してきたが、その実効性には常に疑問符が付いた。内需がマイナスに転じた2014年以降も高水準の生産が継続。鉄鋼輸出も1億トンを超える規模に達しており、計画は空回りしているかにみえた。
 これに対し今回の削減計画は雇用対策に初めて踏み込んでおり、実効性の面でそれなりの期待が持てる内容だ。補助金も実際に5月から支給がスタート。杭州鋼鉄が補助金を受け取り200万トン規模の設備を止めるなど、目に見える形で補助金効果が出始めている。
 経済界訪中団の中国政府との協議でも、中国側はその実績を強調した。国家発展改革員会の幹部は「今年の削減目標4500万トンを達成できる見通し」と発言。工業信息化部は、今年すでに3465万トンを削減したことを明らかにした。
 同部の担当幹部はその一方で「能力過剰は中国だけの問題ではない。世界経済に回復の力が足りないのが要因」と述べるなど、従来通りの消極姿勢も見せたが、削減実績をみる限り、これまでとは異なるステージに入ったのは確かだ。
 国有大手の宝山鋼鉄と武漢鋼鉄の統合もこれまでにない動きだ。新会社が設備集約を進めるのは必至で、結果として能力削減効果が期待できる。
 宝鋼、武漢はともに国資院が管理する中央政府直轄の企業で、省政府のコントロールが効かないことも大きかったが、足元の厳しい収益状況が背中を押したのは確かだ。鋼材価格は底値を脱したとはいえ、中国の鉄鋼メーカーの赤字は依然深刻。省政府にとっても、税収の見込めない赤字企業はお荷物ですらあり、雇用問題さえ解決すれば従来のような延命策は意味をなさないとの見方もある。雇用調整の補助金効果も相まって、設備廃棄や統合の動きが中国全土に広がる可能性もある。
 ただ不安要素も残る。補助金支給が決まって以降、設備休止を申請する企業が相次いでいるが、こうした企業に共通するのは雇用の受け皿がある大都市圏に立地していることだ。雇用の受け皿がない地方企業では要員削減はそう簡単にいかない。
 さらに気がかりなのが中国国内の需要が回復し、鋼材価格上昇が鮮明になった場合。実際、鋼材価格が昨年末から今年春にかけて反転した際は休止設備を再稼働させる動きが相次いだ。これらの再稼働は政府の削減計画の外数とはいえ、気になる動きだ。宗岡会長も中国政府との協議で、設備再開の動きを指摘し、手綱を緩めないでほしいとくぎを刺した。
 中国の今年の削減計画4500万トンは5億トンともされる過剰分の10分の1に過ぎず、世界的な供給過剰を解消する即効薬とはならない。ただ、こうしたスピード感は織り込み済みで、最高顧問として訪中団に参加した新日鉄住金の三村明夫名誉会長(日本商工会議所会頭)は「時間がかかるのは間違いない」と中国の本気度を見守りたいと話した。

最終更新:9/26(月) 6:00

鉄鋼新聞

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