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F1GP残り6戦、チャンピオン争いはメルセデスの同門同士の争いに絞られた!?

オートックワン 9/26(月) 21:04配信

9月18日に、シンガポールGPが行なわれた。シンガポールGPは実に特徴的なレースだ。

F1GP2016も終盤戦に差し掛かり、この2人から目が離せない

東洋のモナコを目指して初開催されたのは2008年。シンガポールの空の玄関チャンギ空港からクルマで20分ほどのシンガポールのシティセンター、屋上にプール付き巨大広場を頂くマリナ・ベイ・サンズ・ホテルが望める、その名もマリナ・ベイ・ストリート・サーキットが舞台だ。

そこでニコ・ロズベルグが初めて勝った。他ではなく、ここで勝ったことには特別な意味がある。マリナ・ベイ・ストリート・サーキットは、モナコ同様の公道コース。ガードレールに囲まれた非常にリスキーで、鉄の心臓が必須。

もちろん、リスクをギリギリで切り抜ける繊細さも重要で、そのためには高い集中力が要求される。それが、夜祭の高揚感の中でスタートするのだ。ただでさえ張りつめた神経に、さらにテンションがかかるシチュエーションだ。

ドライバーの腕からして、こういうコースは、ハミルトンのが方が上というのが相場だった。だが、2016年シンガポールGPは、予選の段階からロズベルグが主導権を握った。ハミルトンは、トラブルもあったが、ペースを乱された形で、フリー走行から何度もタイヤをロックさせたり、予選ではコースオフしたりとリズムを掴めず、ポールポジションから逃げきったロズベルグの後塵を浴び続け、レースは3位に甘んじた。

今シーズンは同チームのこの2人が、シリーズチャンピオンを争っている。シンガポールGPの前までは、ハミルトン250点に対してロズベルグは248点だったが、ロズベルグの優勝でこの序列が逆転した。2人のタイトル争いは白熱化して終盤戦に入った。

シンガポールGPを終わって、ロズベルグが273点、ハミルトンが265点。3位のリカルドを大きく引き離している2人。F1のポイントは、1位から10位に、25、18、15、12、10、8、6、4、2、1点が与えられる。残り6戦だから、全部優勝すれば25×6の150点が加算でき、シンガポールGP終了時点でドライバーにチャンピオンの可能性が残っているのは以下の6人になる。

1.ニコ・ロズベルグ(メルセデス)=278

2.ルイス・ハミルトン(メルセデス)=265

3.ダニエル・リカルド(レッドブル)=179

4.セバスチャン・フェッテル(フェラーリ)=153

5.キミ・ライコネン(フェラーリ)=148

6.マックス・フェルスタッペン(レッドブル)=129

ただし、3番手以下のドライバーがチャンピオンになるには、残りのレースで少なくともメルセデスの前でゴールすることが必須。3位のダニエル・リカルドさえ、優勝を続けても、ロズベルグとハミルトンが2位なら7点しか差が付かないことになり、そう考えると逆転の可能性は限りなくゼロに近いといえる。

つまり、チャンピオンはメルセデスの同僚であるニコ・ロズベルグと、ルイス・ハミルトンに絞られたと言ってほぼ間違いない。

となると、今度はロズベルグとハミルトンの比較になる。残りレースが少なくなればなるほど、得点の差よりも重要になることがある。それは、チャンピオン経験だ。経験のなさが重圧になり、力を出せなくなるのだ。

ワールドチャンピオンの称号は、欧米、特にヨーロッパでは、我々が考えるよりはるかに価値がある。ハミルトンはイギリス籍、ロズベルグはドイツ籍。イギリスもドイツも、自動車じたいが文化的に溶け込み、それを使って戦うモーターレーシングの認知度は、日本では考えられないくらいに高いのだ。

タイトルマッチのドライバーの状況を分かりやすく伝えるケンウッドの話がある。マクラーレンのラジオシステムを担当するケンウッドは、1992年からマクラーレンと契約し、長年のパートナー企業として信頼関係にある。

1998年最終戦日本GPは、マクラーレンのミカ・ハッキネンが、フェラーリのミハエル・シューマッハと初めてワールドチャンピオンをかけたタイトルマッチの舞台にたった。ハッキネンはポイントリーダーだったが、シューマッハとの差は4点。いつひっくり返されてもおかしくない差、相手はターミネーターと呼ばれるミハエル・シューマッハ。ハッキネンを不安にさせる要素が満載だった。

その状況を察知したのが、ニキ・ラウダ、アラン・プロスト、アイルトン・セナなど、何人ものワールドチャンピオンを排出しているマクラーレンの総帥ロン・デニスだった。ドライバーの心理を知りつくしていたデニスは、初めてのタイトルマッチで不安な心境のハッキネンに、レース中にエールを送ることを考えていた。そして、ケンウッドのエンジニアに「無線がよく聞こえるようにしてほしい」と注文した。

申し出を受けたケンウッドのエンジニアは、「デジタルに振るか、アナログに振るか」と聞き返した。デジタルにすると言葉はよく聞こえるが、機械的な声になる。アナログにすると人間的な声になるが聞こえにくくなるからだ。

ロン・デニスは「私は気持ちを伝えたい」と答えた。その言葉にケンウッドのエンジニアたちは燃え、気持ちを伝えるアナログの声を、デジタルレベルまで高める性能を達成した。そのおかげで、デニスのエールを聞いて力を発揮できたハッキネンは、シューマッハを倒し、ワールドチャンピオンを獲得した。

さて、ハミルトンはすでに3度のワールドチャンピオンを経験している。ロズベルグにその経験は、ない。ここから先の6レースで、ニコ・ロズベルグは、レースが消化される毎により不安な状況に置かれていく。速さでは一枚上手と思われているハミルトンが相手だ。ロズベルグは、いわば針のムシロの上で残りのレースを戦うことになるということだ。

初めてのタイトルを意識したニコ・ロズベルグがどんなレースをするのか、そしてハミルトンがどう受けてたつのか。人間模様が如実に現れる残り6戦。二人の戦いが楽しみである。

[Text:山口正己]

最終更新:9/26(月) 21:04

オートックワン

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