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41歳、毎日が「旅」 地図を手に通勤 【認知症・若年当事者の記録(1)】

沖縄タイムス 9/26(月) 13:30配信

 いつもの朝、いつもの道のり。週4日のバス通勤も毎日が「新たな旅」の連続だ。

 豊見城市に住む大城勝史(かつし)さん(41)は一日のスケジュールに目を通し、身なりを整えると、朝7時5分ごろ家を出発。妻が作った地図と写真帳を手に、バス停まで400メートルほどの距離を学校や看板を目印に歩いていく。

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 日常的な筋トレや散歩で鍛えているせいか、足取りは速いが、曲がり角は一時止まって慎重に。「ここで間違えると、もうアウト。自分の居場所が分からなくなって、パニックになりますから」

 終点で降りれば会社まではほぼ一直線だが、逆方向のバスに乗って「迷子」になってしまい、妻の職場に連絡して迎えに来てもらったことも。最終手段は首から掛けて携帯するカードのメッセージだ。

 「私は認知症です。私が困った時には、あなたの力をお貸しください」

 65歳未満で発症する若年性のアルツハイマー型認知症。そう診断されたのは2015年4月、40歳だった。

 中学生から幼稚園児まで3人の娘を育てる働き盛り。「家族の大黒柱」という意気込みとは裏腹に、極度の記憶障がいや疲労感で立ち上がれず、それまで「いつまで苦しまないといけないのか」といら立っていた。

 今のところ、適切な治療や訓練で症状を抑えることはできても、進行を止められないとされる病は「一番恐れていた診断でした」。

消える記憶、揺らぐ日常 

 大城勝史さんに兆候が表れたのは5、6年ほど前だった。

 しばしば西暦や日付の感覚がなくなり、人の顔や道を覚えることが苦手になった、と感じていた。ちょうど自動車販売会社に転職し、中古車担当の営業職としてノルマ以上の販売成績を達成し始めたころだ。「ちょっとした物忘れは、誰にでもあること。疲れがたまっているな」。そう高をくくっていた。

 やがて会社で商談中に客の顔を忘れて席に戻れず、上司や同僚を、名札や座席表でしか見分けられなくなった。異変を悟られないよう、接客中に席を立つ場合は自分の携帯電話やメモ帳を残して目印に。同僚に用事があれば、遠くから声を掛けて近づいてくる人と会話をした。

すぐに限界が来た。「どんなに神経をすり減らしても、ミスが重なった。だんだん仕事が怖くなり、車を売る仕事なのに、道に迷うので運転もままならなくなった」

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最終更新:9/26(月) 17:20

沖縄タイムス