ここから本文です

“ISP最後発”ならではの戦法で――リニューアルした格安SIM「エキサイトモバイル」の狙い

ITmedia Mobile 9/27(火) 6:25配信

 「エキサイトモバイル」は、エキサイトが7月1日から提供しているMVNO(格安SIM)サービス。もともと「BB.exciteモバイルLTE」を提供しており、これをリニューアルさせた形だ。利用量に応じて料金が決まる従量制の「最適料金プラン」と、1GBからの「定額プラン」を提供しているほか、最大5枚のSIMを1契約で持てる。BB.exciteモバイルLTEでは対応していなかった音声対応SIMも提供している。

【従量制の「最適料金プラン」】

 固定回線向けを含むインターネットサービスを提供しているISPとしては、NTTコミュニケーションズ、ソニーネットワークコミュニケーションズ(So-net)、ニフティ、ビッグローブなどもMVNOとなってモバイル通信サービスを提供しているが、エキサイトモバイルは、中でも最後発のサービスとなる。

 エキサイトモバイルはどのような経緯で誕生し、2つのプランはどのような狙いで提供しているのか。エキサイト ブロードバンドサービス本部 ブロードバンド営業企画部の橋本昌和氏と、ブロードバンドサービス本部 ブロードバンド企画部の栗原春樹氏に話を聞いた。記事中の価格は税別。

●サブ回線ではなくメイン回線として使ってほしい

―― サービスを開始してからの反響を教えてください。

橋本氏 プロモーションやキャンペーンをそれほどやっていない割に、安定的にお客さまが訪れて申し込みいただいているという状況ですね。後発だったので心配はしたのですが、うちを選んでくれるポイントがあるのかなと。

―― どのあたりが評価されていると感じていますか?

橋本氏 お申し込みいただいたプランを見ると、当初の想定では、市場のニーズが大きい定額制の3GBに集まると思いきや、最適料金プランの複数枚SIMへのお申し込みが多いですね。そのあたりにお客さまが評価されるポイントがあると想定しています。

―― これまではBB.exciteモバイルLTEを提供していましたが、7月にリニューアルした背景を教えてください。

栗原氏 BB.exciteモバイルLTEは2012年7月から提供していて、(格安SIMは)早めに取り組んだ方だったのですが、当時はまだ音声通話SIMがメジャーではありませんでした。マイナーチェンジはしてきたのですが、「大手キャリアの音声SIM」と「MVNOのデータSIM」の2台持ちをターゲットにしたままでした。音声SIMの検討もしましたがそれだけだと弱いのではないかという話も出ました。

 リニューアルするならプランやブランドも一新した方がいいと考えて、いろいろ練った結果、この時期になったということです。

―― BB.exciteモバイルLTEでは、大手キャリアをメインにして、サブ回線として使うことを想定していましたが、エキサイトモバイルは、大手キャリアともガチンコで勝負して、メイン回線で使ってほしいと。

栗原氏 そうですね。2014年頃から、MVNOが大手キャリアからの乗り換え対象になってきましたが、そこの波にうまく乗り切れていなかったので、大手キャリアと使い勝手があまり変わらない内容にしようと思いました。

―― 2014年からなぜ2年も時間がかかったのでしょうか。

栗原氏 バックボーンの検討を1からする形になったので、そこに時間がかかりました。また、固定回線では(2015年に)光コラボが始まり、そちらにも注力して「エキサイト光」を提供していた事情もあります。

―― 光コラボとセット契約をすると、モバイルサービスの料金を割り引く施策を実施しているMVMOもありますが、そちらはいかがでしょうか。

栗原氏 現状はまだやっていないですが、検討はしています。

●無駄を省けるよう「最適料金プラン」を提供

―― 「最適料金プラン」と「定額プラン」の2つを用意した狙いを教えてください。

栗原氏 最適料金プランは、当初の企画からありました。弊社の場合、低容量で複数枚SIMの人気が高く、極力1枚あたりの単価を抑えたい人たちが集まっています。定額制プランは無駄が生じることがあるので、無駄を省いて効率的に使えるプランがゴールなのではと思い、従量制をやってみようと。(検討していた)当時はFREETELさんしかやっていませんでしたが、FREETELさんは刻みが大きい従量制だったので、より無駄をなくせるよう、今回は500MB~1GB刻みにしました。

―― 最適料金プランで利用するデータ容量は、どれぐらいが多いのでしょうか。

栗原氏 まだ低容量帯の方々が多いですね。上(の容量)に集まることもあるので、小容量か大容量で分かれています。

―― BB.exciteモバイルLTEの毎月のデータ容量は4GBまででしたけど、エキサイトモバイルでは(最適料金プランで)上限を15GBにしたのは、ニーズがあったからだと。

栗原氏 ニーズがありました。低容量のニーズもありましたが、大手キャリアとの遜色をなくして、乗り換え対象にしてもらえるよう、大手キャリアが持っている7GBや8GBに相当するプランが必要と判断しました。

―― 定額プランも用意しています。

栗原氏 最初は従量制だけを考えていましたが、いろいろアンケートを取ると、従量制プランを提供しているMVNOがそれほどいません。大手キャリアをずっと契約してきた方は、従量制プランにあまりなじみがない方がほとんどなので、定額プランを導入して、選択の幅を広げました。

―― 定額プランも低容量のユーザーが多いのでしょうか。

橋本氏 定額は3GBあたりが多いですね。

―― 定額プランでは20GB、30GB、40GB、50GBの大容量プランを提供していますが、これの狙いを教えてください。

橋本氏 20GB~50GBは、どちらかというと販促寄りの視点で、当初、30GB~50GBのプランは特定の販路でのみお取り扱いしていました。まれに(申し込みが)入ってきているので、通常のラインアップに追加しました。“他社がやっていないけれどニーズのあるところ”は意識しました。

●価格競争に挑むのはやめる

―― 各プランの値付けは業界最安ではありませんが、そこは意識しなかったのでしょうか。

栗原氏 BB.exciteモバイルLTEでは最安値を狙っていました。そういう文化はあったのですが、MVNOというモデル上、100円で仕入れたものを120円で売るとなると、仕入れ先の金額次第で限界が来てしまうので、価格競争に挑むのはやめました。最安までは行かなくても、お求めやすい価格に設定しました。

―― 同じ容量でも、最適料金プランの方が定額プランより安いですね。

栗原氏 最適料金プランは容量の繰り越しができず、容量面で定額制よりもメリットが薄いので、金額で反映しました。繰り越しを付けると、翌月の計算が分かりづらくなってしまうので、毎月リセットを掛けています。

―― 当月のデータ残量を確認できるアプリは提供していますか?

栗原氏 容量はマイページ上で確認できます。アプリの提供も検討はしていますが、現状はWebのみです。

―― 最適料金プランと定額プランは、どちらの契約者が多いのでしょうか。

橋本氏 内訳はお伝えできませんが、最適料金プランの方が多いです。想定よりも多かったですね。定額プランを選ぶ方は、各月のコストを一定にすることをメリットだと感じていらっしゃいます。最適料金プランを選ぶ方は利用量と料金のバランスに価値を置いていらっしゃいます。

―― データSIMと音声SIMの比率はいかがでしょう。

橋本氏 カウント方法が難しくて、1枚コースと3枚コースで変わってきます。それぞれのSIMでデータか音声を選べるのですが、例えば3枚コース全てのSIMで音声を申し込む方はレアです。当然、データの方が割合が多くなります。1枚コースだと、当初はデータが多かったですが、最近は音声が伸びています。

●最大5枚のSIMを追加して、家族で使ってほしい

―― SIMカードの追加は、BB.exciteモバイルLTEでやっていたことを引き継いだということですか。

栗原氏 1枚コースと3枚コースは引き継いだものですが、4~5枚の追加オプションは、今回から加えました。

―― 4~5枚まで追加可能になったのは、家族での乗り換えを意識したからですか?

栗原氏 企画当初のタイミングだと、MVNOは広まってはいるけど、個人で使う域から出ていないと感じていたので、今後は複数枚でシェアして、家族で使うことができるようになればいいなと。

―― BB.exciteモバイルLTE時代は、個人で複数使う人が多かったのでしょうか。

栗原氏 そうですね。きっちりと調査をしたわけではありませんが、お客さまの声を聞くと、ゲーム用やタブレットなど、1人が複数デバイスで使う方が多かったです。

―― 最適料金プランと定額プラン、どちらが複数枚SIMの利用が多いですか?

橋本氏 どちらも、複数の方が多いですね。

―― 2枚のSIMを持てるコースがないのはなぜですか?

栗原氏 2枚のコースを作っても、3枚コースよりも金額面でメリットが出せません。基本、1枚か3枚かを選んでいただいて、3枚に4枚目と5枚目を追加する形です。

―― ドコモがMVNOに対して、SIMカードの発行手数料を徴収するようになりましたが、エキサイトモバイルでも事務手数料が上がるなどの影響はありますか?

栗原氏 お話はうかがってはいますが、現状は(手数料を上げるなどは)予定していません。

―― ターゲットとしているユーザーは、BB.exciteモバイルLTEから変わってきていますか?

橋本氏 結果としては、30~40代男性が多くなっています。販路がWebのみなので、当然ボリュームゾーンはそこになっていきます。今後は、一般層や女性などへどうアプローチしていくかを考えないといけない状況です。ただ、申し込んでいる人が、リテラシーが高くて、想定している使い方をしているかが分からないので、直接話を聞いていきます。

●セキュリティやフィルタリングのサービスを拡充

―― 販路についてもお聞かせください。現在はオンラインのみですが、拡大する予定はありますか?

橋本氏 リアルな販路、外部の販路を含めて検討はしています。ただ、大きく販路を広げるよりは、サービスを拡充していく方が優先度は高いです。

―― どの部分を拡充していきたいと考えていますか?

橋本氏 お客さまに聞いてみるのが1つですし、他社がやっていて弊社ができていないところですね。回線に付随するオプション、セキュリティやクラウドサービスは拡充し、9月から「ウイルスバスター モバイル」や「i-フィルター」「クラウドバックアップ AOS BOX Android Pro」などを提供しています。

―― オプションを提供するに当たって、どのあたりを重視していますか?

栗原氏 セキュリティを気にされている方が非常に多いです。他社さんの動向を聞くと、セキュリティサービスの付帯率が高いと聞いています。MVNOに対しての漠然とした不安があると感じていて、それらがセキュリティ系オプションへのお申し込みにつながっているのかなと。あとはお子様に持たせる場合にフィルタリングも必須になっていきます。

―― 現在はSIMの契約のみですが、端末とセットで販売する予定はありますか?

橋本氏 現在、検討しているところです。

―― 使い放題プランは検討しなかったのですか。

栗原氏 使い放題も検討はしたのですが、品質を担保するのが難しくなります。どれぐらい使うか分からない状態で、ある程度の帯域を確保しないといけないので。各社さんで無制限でやっているところを見ると、苦戦されているようなので、慎重になりました。

―― 5分以内はかけ放題などの、通話オプションを提供する予定はありますか?

栗原氏 通話に関しては、かけ放題もやりたかったのですが、まだハードルが高いですね。今のところ予定はしていませんが、プレフィックス番号を付けて通話料が安くなるサービスは、今後検討していきたいと思っています。

●IIJと相談をしながら通信品質をコントロール

―― 200kbpsの低速時に利用できる「バースト転送」は、IIJmioと同様に、75KBまで高速で利用できるものでしょうか。

栗原氏 はい、そうです。弊社から公にすることは少ないのですが、(MVNEとして)IIJの設備を借りています。

―― 機能面でもIIJからノウハウを提供されていると。

栗原氏 そうですね。

―― 通信品質についても教えてください。回線の増強はどれぐらいのペースで行っていますか。

栗原氏 IIJさんとも相談はしつつですが、品質に関しては、最初から遅いとブランドイメージに関わってくるので、BB.exciteモバイルLTEのノウハウは生かしながら、同じぐらいの品質は保っていこうと。BBも遅いという評判はありませんでした(※BB.exciteモバイルLTEもMVNEはIIJとなっている)。回線の増強は定期的にというよりは、調子を見ながら行っています。

―― 3日間の通信制限は行っていますか?

栗原氏 高速で制限がなく、200kbpsの通信時のみ制限があります(3日で366MBを超えて通信をすると、速度を制限する場合がある)。MVNEの仕様に合わせました。

―― リニューアルに当たってMVNEを変えることは検討しなかったのでしょうか。

栗原氏 しなかったですね。(IIJは)品質に定評がありますので。

―― 格安SIMの世界はレッドオーシャンと呼ばれ、厳しい競争が繰り広げられていますが、その中でエキサイトモバイルの優位性をあらためて教えてください。

橋本氏 ISPの中だと(MVNOとしては)恐らく最後発の位置付けなので、競合他社と戦うというよりは、お客さまのニーズに気づいていないところを掘り起こしていきたいですね。楽天さんのようにノンターゲットで広くというよりは、真逆の形です。いろいろなところにあるニーズを拾っていき、お客さまに合わせた商品を作っていくという方向です。ビールでいうと、(地ビールメーカーの)ヤッホーブルーイングさんのようなポジションを狙っていきたいですね。

●取材を終えて:選択肢の多さが魅力だが、一般層への訴求には課題も

 1GB刻みの従量制と、1GB~50GBの定額制、そして最大5枚のSIM追加など、料金とSIM追加で多彩な選択肢を用意しているのが、エキサイトモバイルの強みだ。スマートフォンの利用スタイルはさまざまだが、これだけ選択肢があれば、多くのユーザーのニーズを拾うことができるだろう。くしくも大手キャリアが20GB/30GBの大容量プランの提供を始めたが、エキサイトモバイルの20GB/30GB定額プランの方がそれぞれ約1000円安い。

 一方で販路がオンラインのみ、端末のセット販売は実施していないなど、スマートフォンや格安SIMの初心者が契約しやすい環境が整っているとは言い難い。一般層にどれだけアプローチできるかが、腕の見せ所といえる。

最終更新:9/27(火) 6:25

ITmedia Mobile