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三越や西武など「地方・郊外で閉鎖」相次ぐ 斜陽産業の百貨店に未来はあるか?

ZUU online 9/27(火) 18:10配信

三越伊勢丹ホールディングス <3099> や、そごう・西武といった大手百貨店による郊外・地方店の閉鎖の発表が相次いでいる。その多くは、他の百貨店や商業施設との競争が激しく、販売が低迷している店舗が対象となっている。

人口分布や社会の変化、他社との競合状況を踏まえ、営業成績の低迷する店を閉じ、新たな顧客が見込める場所に新しい店を出すことは小売業界の宿命でもある。

百貨店の品ぞろえは高額品が比較的多く、所得の伸びが鈍い地域では販売も低迷しがちだ。企業として成長戦略を定めるには、都心部の基幹店と、その脇を固める郊外・地方店の位置づけを見直すことが、ますます重要となってきた。

■三越伊勢丹、統合直後以来の複数店閉鎖

三越伊勢丹HDは、2017年3月に三越千葉店と三越多摩センター店の営業を終了すると発表した。

同社による複数の百貨店店舗閉鎖は、旧伊勢丹と旧三越が経営統合した翌2009年に三越池袋店など三越6店舗を閉鎖して以来となる。その後、伊勢丹吉祥寺店やJR大阪三越伊勢丹を閉めたが、どちらも単発だった。

今回の店舗閉鎖には百貨店業の利益を引き上げる意図が読み取れる。統合後の閉鎖店舗(予定を含む)を屋号別でみると「三越」が8店と際立つ。

一方、そごう・西武は2016年2月末に西武春日部店を閉鎖した。9月末には西武旭川店とそごう柏店、来年2月には西武八尾店と西武筑波店を閉店する。さらに報道によると、セブン&アイ・ホールディングス <3382> 傘下のイトーヨーカ堂などの店舗に出店しているそごう・西武の小型店10店についても、2017年1月から閉鎖する方針という。

その他の大手では、阪急阪神百貨店を運営するエイチ・ツー・オーリテイリング <8242> が2017年に堺北花田阪急を閉店することを明らかにしている。

■三越千葉店の売り上げは8年連続の前年割れ

百貨店の店舗閉鎖の狙いは「経営の効率化」にあるのは言うまでもない。

たとえば、千葉駅周辺では同駅直結の「そごう千葉店」が強い。2018年には新しい駅ビルも開業するのも同店には追い風だ。一方、駅から離れている三越千葉店は劣勢を強いられている。三越伊勢丹HDが開示しているデータによると、少なくとも2015年度まで8年連続で売上高が前年を割り込んでいる。

消費税率が8%に引き上げられる直前には全国の百貨店では高額品が飛ぶように売れる駆け込み買いがあったが、三越千葉店ではこの分が上乗せされた2013年度(2013年4月~14年3月)でも売上高は前年を下回っていた。

三越伊勢丹HDは現在進める3ケ年計画で、2018年度に連結営業利益で500億円以上という目標を掲げているが、2015年度実績は331億円で、大きなかい離がある。不採算店の閉鎖は、目標を達成する上で有効な手段だ。

■中小型店の展開を強化する動きも

郊外・地方店にはそれぞれ取引額の大きい外商顧客がいるが、そうした顧客と関係を維持する上で、大きな店舗は必要ではなくなっている。

「三越」屋号に閉鎖店舗が偏っているのは、三越がかつて国内の小売業最大手で、各地に自前の店を数多く出してきたことと無縁ではない。

三越伊勢丹HDは、郊外・地方店の閉鎖を進める一方で、まだ利益に直結はしていないが、中小型店の展開を強化している。

具体的には、化粧品専門の「イセタンミラー」、中型のセレクトストア「イセタンハウス」、空港内小型店、アウトレットなどだ。その他ネット販売のEC事業や、仕入れ構造改革などを行い、利益をあげる体質を固め、新たな百貨店像を実現しようとしている。

■投資ファンドからの圧力も影響

一方、そごう・西武が経営効率化を進めている背景には、同社が親会社セブン&アイHDにとって経営改善の足かせとなっている事情がある。継承した旧そごうや旧西武百貨店は業界の後発組で、郊外・地方に多く出店することで、東京や大阪など都心部を地盤とする老舗に対抗してきた経緯がある。

現在、都心部に人口が集中し、地方経済の地盤沈下が進んでいる。低価格品に強みを持ち、出店攻勢をかけるイオンなどの総合スーパーに百貨店が対抗しようとしても、店の中身を刷新する改装費用が出ず、太刀打ちできないのが実情だ。

さらに、セブン&アイHDは大株主である投資ファンドから、効率の悪い事業を減らし、収益頭であるコンビニエンスストア事業を強化するように要求されている。こうした経緯が重なり、そごう・西武の小規模店が軒並みリストラ対象となった。

■新しいビジネスモデルを模索

ファーストリテイリング <9983> の衣料品店「ユニクロ」のように競争力のある専門店が台頭してきたことで、百貨店が何でもそろう「百貨」の店を目指す選択肢は難しくなっている。

百貨店は高額であっても、総合スーパーなど他の業態では真似ができない特色のある商品を用意することが命綱だ。旅行などの体験型商品やサービスの比重を高め、新しい百貨店のビジネスモデルを作り上げようと各社とも苦心している。

たとえば、三越伊勢丹HDは、都心部の基幹店に経営資源を集中すると同時に、郊外や地方で、三越や伊勢丹というブランドを活用した新しい中小型店を展開していく方針を掲げる。高島屋は、百貨店単体ではなく、百貨店を中核とする商業施設を展開する戦略を明確にしている。

■松屋の先行事例が意味するもの

百貨店業界の経営効率化には先行事例がある。

松屋は銀座本店と小型の浅草店の2店舗だが、かつては横浜や船橋にも店を持つ中堅百貨店だった。1970年代にオイルショックで経営が悪化すると、伊勢丹幹部だった山中鏆氏を副社長に招き、経営再建を進めた。

松屋は経営資源を銀座本店に集中し、効率化に成功。ここ数年は土地柄、訪日外国人向けの免税販売が好調で、営業利益が右肩上がりに伸びた。

百貨店大手が郊外・地方店を一斉に閉鎖し、都心の基幹店のみに経営資源を集約するのは、一時的にせよ売上高の急減や雇用問題など大きなリスクをともなう。

しかし、業界として売上高が年々減りつつある「斜陽産業」と呼ぶのがふさわしい百貨店業で、各社が取り組むべき経営効率化は、かつての松屋と大きな差はない。基幹店の商品やサービスの向上を続けることが、専門店などと競う上で重要な意味を持つのだ。(ZUU online 編集部)

最終更新:9/27(火) 18:10

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三越伊勢丹ホールディングス3099
1320円、前日比+19円 - 12/8(木) 15:00

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4348円、前日比+75円 - 12/8(木) 15:00

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エイチ・ツー・オー リテイリング8242
1820円、前日比+45円 - 12/8(木) 15:00