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コンビニの「トイレだけ利用」はアリなのか、ナシなのか

ITmedia ビジネスオンライン 9/27(火) 7:19配信

 コンビニの店内をめぐって、定期的に話題になるテーマがある。「トイレ」だ。

 商品を買わずにトイレだけ利用するのはアリなのか、ナシなのか。それとも、トイレを利用するときに従業員に「あの~、すいません。トイレを借りてもよろしいでしょうか?」と断わりのひとことを言えばいいのか。

【店内にトイレを設置するコンビニが増えた】

 コンビニのオーナー経験者であり、現在はお客さんという立場である筆者は、両者の気持ちがよく分かる。個人的に、以下のような形であれば店内のトイレを利用してもいいと考えている。

・買い物をするときは、断わりを入れずに利用する。
・買い物しないときは、断わりを入れる。
・従業員がお客さんの対応で忙しそうなときは、断わりを入れずに利用し、必要じゃなくても買い物をする。

 上記の3つの項目に「いやいや、それはおかしいでしょ」と批判の声もあるかもしれない。「コンビニのトイレを利用するルールはこれだ!」といった感じで、白黒ハッキリすべき問題なのかもしれない。一方で、「そんなに厳しいルールは必要ないんじゃないの? ゆるーい感じで、お願いしますよ」といった人もいるだろう。

 今回のコラムは、過去を振り返りながら、コンビニのトイレ問題を考えてみよう。

●トイレ不要論が台頭していたワケ

 現在、多くのコンビニでトイレが設置されている。我慢ができなくなって、一度は利用したことがある人も多いだろう。いまでこそ「コンビニにトイレが設置しているのは当たり前」と思われているかもしれないが、実は物販業界では異例の施策だったのだ。

 かつての物販店では、従業員用のトイレはあっても、お客さんに貸すという慣習はなかった。なぜか。会計前に商品をトイレ内に持ち込ませないという防犯上の問題もあったが、それよりも「お客さんの滞在時間」がポイントだった。

 飲食店では、昔からお客さん用のトイレがある。ハンバーグを食べたり、ビールを飲んだりすれば、用を足したくなることがある。ただ、それだけの理由ではない。トイレを設置することでお客さんの滞在時間が長くなるので、店は設置しているのだ。トイレで用を足して、すっきりした。ビールをもう一杯飲もうか……といった経験をもつ人もたくさんいるだろう。

 飲食店だけに限らず、デパートのような大きな物販店にも、お客さん用のトイレを設置している。こちらも店内にトイレを設置することで、お客さんの滞在時間が長くなる。もしトイレがなければ、お客さんは用を足すために違う店に流れてしまうかもしれない。いや、流れてしまうだろう。そうした行動に歯止めをかけるために、店内にトイレは不可欠なのだ。

 では、コンビニはどうか。パンとコーヒーを買うだけ、お弁当とお茶を買うだけ、お菓子とタバコを買うだけ。といったお客さんが多いので、滞在時間は短い。本部やオーナーの多くが「必要なモノをちょっと買って、すぐに帰るから店内にトイレは不要だ」と決めつけていた。「いやいや、トイレを設置したほうがいいよ」といった声があったとしても、「それでいくら儲かるの?」「トイレを設置するのはいいけれど、そのコストは誰が負担するの?」といった感じで、トイレ不要論を訴えてきた……というよりも考えすらしなかった。

 ところがである。お客さんの滞在時間が長くなれば、売り上げが伸びる――。といったことが指摘されるようになって、「店内にトイレを設置すれば、儲かるのでは!?」といった考えが主流を占めていくことになるのだ。

●トイレを設置するコンビニが増加

 いまとなっては「コンビニにトイレを設置しているのは当たり前」といった状況になっているが、ここで時計の軸を巻き戻していただきたい。その昔、コンビニのトイレといえば、バックヤードに設置していて、お客さんが入れるような設計になっていなかった(もちろん、すべてではない)。

 店内で、こんな張り紙を見たことはないだろうか。「トイレをご利用の方は従業員までひと声かけてください」――。この張り紙は、当時のなごりである。

 多くのコンビニで「お客さん用のトイレ」を設置し始めると、バックヤードにしかなかった店舗は大慌て。店舗の一部を改装して、トイレを設置するようになったのだ。「いやいや、オレがいつも利用しているコンビニにはトイレがないよ」という人もいるだろう。いまでもバッグヤードにしかない店の多くは、改装できないの事情があるのだ。例えば、「ビルの1階に店舗を構えているので、改装したくてもできない」「スペースの関係上、どうしてもトイレを設置することができない」といった理由がある。

●立ち読み禁止で売り上げアップ

 現在、コンビニの店内にトイレがあるにもかかわらず、なぜいまだにトイレを貸す・貸さない、断わる・断らないといった論争が残っているのだろうか。不思議に感じる人も多いだろう。

 筆者がオーナーだったころ、ある実験を行った。その内容はブログに書いているので、ご興味がある方は読んでいただきたい。

 お客さんの滞在時間が長くなれば、ついで買いをしてくれる可能性が高くなる。そのために、コンビニはどんなことをしてきたか。いろいろあるが、そのひとつが雑誌の立ち読みである。

 確かに、雑誌を立ち読みすれば、滞在時間は長くなる(らしい)。ということは、立ち読みをする人が増えれば、増えるほど売り上げが伸びるという話になる。しかし、筆者はその通説に疑問を感じていた。雑誌の立ち読みは逆効果ではないか。つまり、立ち読みを認めても、売り上げはなかなか伸びないのではないかと。

 そこで、筆者の店舗では「雑誌の立ち読みを禁止」にした。データの収集は、筆者の店舗だけ。データの収集期間も短かったので、精度が高いとは言えない。しかし立ち読みを禁止したことで、売り上げは逆に伸びたのだ。

●白黒はハッキリさせずに、あやふやなままで

 なぜ売り上げは伸びたのか。「立ち読み→ついで買い」という流れは、お客さんにとって「雑誌をタダで読んで帰るのは、申し訳ないなあ」という心理的要因を利用している。しかし、雑誌の立ち読みを認めているので、「ついで買い」という目的を失わせてしまっているのだ。

 これはトイレにも同じことが言える。コンビニ側はトイレだけの利用も可能としているが、これを公言してしまうとトイレを開放した目的である「ついで買い」が減ってしまう恐れがあるのだ。トイレの光熱費を支払っているオーナーとしては、何のためにトイレを設置したのか分からなくなるだろう。

 多くのコンビニで店内にトイレを設置しているようになったが、それでも「できれば利用してほしくない」と思っているオーナーも少なくない。「お客が『貸してください』とお願いしないから?」と思われたかもしれないが、そうではないのだ。

 マナーの悪い人がいるからだ。設置してあるトイレットペーパーを持って帰る人、保温便座のコンセントを抜いてスマホやケータイの充電をする人、成人雑誌を持ち込む人、男女共用をいいことに男女同時に使う人、買い物済みのモノをトイレ飯する人、会計前にトイレに持ち込みトイレ飯する人。

 もちろん、こうしたマナー違反や犯罪行為をするのは一部の人間であるが、「トイレ利用可」をハッキリと公言してしまうと、「これらの行為が増えるのではないか」という恐れを店側は懸念しているのだ。

 なんでもかんでも白黒ハッキリさせないと気が済まない……という人がいる。しかし、このコンビニのトイレ問題はどうだろうか。これまで通り、あやふやなままにしたほうが、コンビニ側もお客側も“すっきり”するはずだ。

(川乃もりや)

最終更新:9/27(火) 7:19

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