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最高峰ヨットレースとIT、時速80kmが出る理由は?

ITmedia エンタープライズ 9/27(火) 8:27配信

 風を操り、水上を誰よりも速く駆け抜ける――さまざまなレースの中でもヨットレースは、風や波といった自然条件をどれだけ見方にできるかが、勝負を左右する。「海のF1」と称される世界最高峰のヨットレース「アメリカズカップ」では、ITの活用がその鍵を握るという。米Oracleの年次イベント「Oracle OpenWorld 2016」では、ディフェンディングチャンピョンチームで同社がスポンサードする「Oracle Team USA」がIT活用の様子を紹介してくれた。

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 アメリカズカップは、1851年に始まった世界で最も古いスポーツトロフィーの競技として知られる。「アメリカズカップ」という名称は米国を冠したものではなく、初代の優勝チームが米国だったことに由来するという。本選は前回の優勝国(防衛艇)と予選を勝ち抜いた国のヨットチーム(挑戦艇)が1対1で戦う。Oracle Team USAは前回の優勝チームだ。現在は2017年の第35回大会に出場する挑戦艇を決めるための予選が世界各地で開催されている。

●約10年でスピードは2倍以上に

 アメリカズカップに使用されるヨットの規定は、基本的にマストの本数と水線長(船の前後長のうち水に触れる部分の長さ)に関するもので、その形状などは防衛艇と挑戦艇が合意した範囲で一定の自由度があるという。

 当然ながら、ヨットの動力は自然の風だけ。ヨットをいかに速く動かすかは、「スキッパー」と呼ばれるクルーの力量と経験が左右する。スキッパーは、その時々の風の向きや風速を常に把握しながらマストやフォイル(水中翼)を動かし、ヨットをコントロールする。

 アメリカズカップのヨットにおける最高速度は、1851年から100年以上にわたって10~12ノット(時速約20~25キロ)だったという。ところが、2007年を境にヨットの大幅な軽量化と形状の改良が進み、20~25ノット(時速40キロ前後)へ一気にスピードアップ。まるでヨットが水の上を飛んでいるかのように、高速で移動できるようになった。

 Team USAのパフォーマンスディレクターを務めるイアン・バーンズ氏によれば、「現在ではさらなる改良によって、40ノット(時速約75キロ)以上で走ることもできる」と話す。

●1000コアのCPUを駆使するヨットの開発

 100年以上も大きく変わらなかったヨットの最高速度が、約10年で2倍以上も高速化した背景にはITの活用があるという。

 「2007年頃まではタグボートでヨットをえい航しながら実際の動きを確認したり、模型を使った風洞実験で形状を確認したりしなければならず、エレメントの設計や検証に3~5カ月を要していた」(バーンズ氏)

 現在、Team USAでは1000コアのIntel Xeonプロセッサを搭載するスーパーコンピュータシステムやクラウドサービス、3Dプリンタなどを駆使している。これによって1000万から3000万点にもなるエレメントを瞬時に設計、検証できるようになったという。設計データをクラウド環境に置くことで本拠地やレース開催地でもデータを共有しながら、その場で3Dプリンタからモデルを出力して、検討するなどの活用も行っている。

 またバーンズ氏によれば、スキッパーの力を引き出すことにもITを活用している。彼らの装着したセンサで心拍数や体温、発汗量などを測定し、それらのデータを日常のトレーニングに役立てている。また、レース時には測定データからコンディションの良いメンバーを選定しているとのことだ。

 Team USAは、ディフェンディングチャンピオンとして2017年の第17回大会に出場する。同チームに戦いを挑むチームの予選大会も大詰めを迎えており、次回は11月18日~20日にアジアで初めての予選大会「ルイ・ヴィトン・アメリカズカップ・ワールドシリーズ福岡大会」が福岡市中央区の地行浜で開催される。

最終更新:9/27(火) 8:27

ITmedia エンタープライズ

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