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スピントロニクスLSI、見えてきた実用化-待機電力ゼロのMRAMがIoTの主役になる日

日刊工業新聞電子版 9/27(火) 13:51配信

スピンを使った次世代半導体で日本は世界をリード

 固体中の電子が持つ電荷とスピン(磁石の性質)の両方の性質を工学的に利用するスピントロニクス分野。世界中で活発に研究されている、今、最も勢いのある研究分野の一つだ。ひとくちにスピントロニクスと言っても幅広いテーマがあるが、半導体の集積回路と融合した「スピントロニクスLSI」の研究は近年進展し、実用化が現実味を帯びつつある。スピンを使った次世代半導体で日本は世界をリードする。(藤木信穂)

【総合力が勝負】

 スピントロニクスは基礎となる物性研究から応用を目指す工学研究まで、日本が強みを持つ代表的な領域だ。4月には、東北大学と東京大学、大阪大学、慶応義塾大学を中心とした横断型の研究組織「スピントロニクス学術連携研究教育センター」が発足した。

 4大学にそれぞれセンターを設置し、多様な技術を連携することで、スピントロニクス分野全体の成果の底上げを狙う。産業技術総合研究所などの研究機関のほか、NTTや東芝、日立製作所、NEC、ソニー、TDKなど企業が参画する。東北大のセンター長を務める東北大電気通信研究所の大野英男所長は、世界で戦うには「総合力が勝負。ネットワークが非常に重要だ」と強調する。

 これまでエレクトロニクスは、電荷の性質を利用する半導体素子と、スピンを利用するハードディスクなどの磁気記録素子を両輪に発展した。スピントロニクスはこの二つの性質を同時に利用する点で新しい。スピントロニクスの応用の一つが、磁気抵抗メモリー(MRAM)だ。MRAMは、電源を切ってもデータが消えない「不揮発性」を持つ。

 LSIに搭載する既存の揮発性メモリーをMRAMに置き換えれば、消費電力を大幅に削減できる。待機電力がゼロの電子機器の実現も夢ではない。

 電流がつくる磁場で情報を記録する初代のMRAMに対し、日本は2000年代初頭から、次世代の「スピン注入磁化反転型」MRAMの開発を加速してきた。ソニーが05年に4キロビット、東北大と日立が07年に2メガビット(メガは100万)のMRAMを試作した。これらは、基本構造となる磁気トンネル接合(MTJ)素子に情報を記録する際、磁性膜に対して水平に磁化させる「面内磁化方式」を使う。

 だがその後、水平ではなく、垂直に磁化させる「垂直磁化方式」の実証に東芝が成功。東芝と産総研は08年に、垂直方式を採用した素子を世界で初めて開発した。同方式は大容量化が可能で、10年には東芝が64メガビットのMRAMを試作した。

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最終更新:9/27(火) 13:53

日刊工業新聞電子版