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超ホワイト企業はいかにして生まれたのか

ITmedia ビジネスオンライン 9/28(水) 10:31配信

 ITmediaエグゼクティブ オープンセミナーに、ランクアップの代表取締役である岩崎裕美子氏が登場。著書「ほとんどの社員が17時に帰る10年連続右肩上がりの会社」の内容に基づき、いかにブラック企業の取締役から超ホワイト企業の社長になり、ほぼ全員残業ゼロなのに、10年連続で売上高が伸びている会社を実現できたのかその秘密を紹介した。

●以前はブラック企業の取締役だった

 ランクアップは、オリジナルブランド「マナラ化粧品」の開発および通信販売を事業として展開している化粧品メーカーである。代表製品である「ホットクレンジングゲル」は、20秒に1本売れる大ヒット商品だ。すでに累計販売本数600万本を超え、2016年9月期の売上は約90億円を予想しているという。

 驚くべきは、45名の社員が17時に帰社する、ほぼ残業ゼロの状況でありながら、2005年の創業から10年間、右肩上がりの成長を続けていることである。また2013年には、東京都が実施する東京ワークライフバランス認定企業の「育児・介護休業制度充実部門」に認定されている。これは通信販売業者としては、初めてのことである。

 ランクアップは、なぜ残業をしないことにこだわったのか。岩崎氏は、「ランクアップを起業する前は、ブラック企業の取締役だった。ベンチャーの広告代理店だったので、夜を徹して働かなければ競合に勝つことができないと思っていた。そのため最長でも3年しか社員が耐えられず、離職率100%の会社になっていた。特に女性社員は、結婚や出産で残業ができなくなり退職してしまう。このままでは、人材の流出を止めることができず、会社を成長させることができないと思った」と話す。

 自分自身も35歳になり、結婚や出産をしたいと思うようになったが、自分自身も出産をすると会社をクビになることに気が付いた。そこで将来に夢が持て、長時間労働が不要で、女性が一生働くことができる会社をつくらなければならないと考えるようになり、設立したのがランクアップである。

●女性が一生働ける会社をつくる

 化粧品メーカーを創業したのは、前職で夜も寝ずに仕事をし続けた結果、実年齢よりも見た目が老け込んでしまっていたので、自分で開発し、若返ろうと考えたそうだ。

 「化粧品を作ったことはなかったので、周囲からは"あたま大丈夫?"と言われたが、情熱だけはあったので何とかなると思っていた(笑)。そして何人子どもを産んでも、定年まで、安心して働き続けることができる会社にしようと決めた。実際に創業からこれまで、残業をすることなく会社を成長させてきた」(岩崎氏)。

 女性が一生働くことができる会社をつくることができたポイントは、大きく以下の3つである。

(1)差別化した製品づくり

(2)分かりやすい広告力

(3)親切で丁寧なサービス

 化粧品メーカーとしては後発のランクアップは、他社と同じものをつくっていたのでは、市場競争に勝つことができない。そこで(1)差別化した製品づくりが重要になる。岩崎氏は、「売れそうなものとか、流行りのものとかをつくるより、自分が本当にほしいものをつくる方がゴールを明確にできる」と言う。

 「広告代理店時代に、強力な合成洗顔料を使って化粧を落としていたので、顔の皮膚が傷み、そのため年齢よりも老けて見えることに気がついた。そこで、肌に優しい美容液の成分を中心とした洗顔料をつくれば若返れるのではないかと考え、生まれたのがこれまでになかったホットクレンジングジェルである」(岩崎氏)。

 また、広告代理店で働いていたときに、売れなさそうな広告原稿をつくるクライアントを数多く見てきた。そこで、分かりやすい広告力が不可欠だと考えた。さらに親切で丁寧なサービスだが、製品に社長室あてハガキを同封しており、利用者が感想や要望、を書けるようになっている。

 もらったハガキには、必ず返信し、常に改善を繰り返している。例えば、チューブの口が小さく、最後までゲルを絞り出せないという指摘が多かったので、チューブの口を大きくした。この3つのポイントすべてを追求することは非常に難しい。それができるのが、ランクアップの強みである。

●残業なしで右肩上がりの会社をつくる仕組み

 女性が一生働くことができる会社を実現するためには、残業をしなくてもいい仕組みをつくることも必要になる。ランクアップは、定時が9時~18時の会社だったが、自分自身が出産して復職してみると、18時退社でも子供の迎えや家事に追われ、仕事も、子育ても、家事も中途半端になった。

 そこで取り組んだのが、以下の4つのポイントである。

(1)全社員に定時退社の徹底

(2)業務の棚卸と選別

(3)業務のシステム化

(4)アウトソーシングの活用

 全社員に定時退社の徹底を決めたが、多くの社員から「仕事が多くて帰れない」という意見が出た。そこで業務の棚卸と選別を実施し、システム化できる業務はシステム化を行い、さらに外部に委託できる業務はアウトソーシングを活用することにより、定時退社を実現した。

 また定時退社をするためには、業務のスピード化が必要になる。そこで、以下の6つのルールを策定した。

(1)社内資料は作りこまない

(2)会議は30分以内

(3)社内メールに「お疲れさまです。」は使わない

(4)社内のスケジュールは勝手に入れる

(5)プロジェクト化

(6)社内の根回しをする

 さらに残業ゼロの最終兵器として、「17時に帰っていいよ制度」を実施した。これが予想以上の効果を発揮することになった。残業ゼロを実現することで、「アフター5が充実する→新しいアイデアが浮かぶ→ヒット製品が生まれる」という成長サイクルを確立することができた。

 「アフター5に新しいアイデアが浮かぶなど信じていなかった。以前、インプットした数しかアウトプットは出ないと言われたが意味が分からなかった。早く帰って映画を見ることで、会社を休んで旅行に行くことで売り上げが上がるのと思っていた。しかし現在、17時に帰っても、ブラック企業時代以上の成果を上げている」(岩崎氏)。

 その理由は、"発想力"である。インプットによる新しいアイデアが、新製品を生み、業績につながっている。しかし、問題もあった。会社の業績は好調だったが、多くの社員が暗かった。そこで外部のコンサルティング会社に頼んで、企業サーベイを実施したところ、その結果は最悪なものだった。

 「私自身がワンマン社長のため、会社の風通しが悪くなっていた。そこで"挑戦"という会社のゆるぎない価値観を作成し、本気で取り組んだ。さらに社員に権限を移譲し、社員の成果を承認する人事制度を導入した。こうした取り組みにより、社員にやりがいが生まれ、新しいことに挑戦する社風が醸成された」(岩崎氏)。

 社員に権限を委譲したことで、海外展開をしたい、テレビショッピングで販売したい、店舗販売をしたいなど、新しい企画が社員中心に実施され、売り上げが向上するようになった。岩崎氏は、「社員には制度も必要だが、それ以上に"やりがい"が重要であるということを学んだ」と話す。

 この取り組みの一環として、社員からの社内の改善提案も受け付けている。

 「ウォーターサーバーを置いてほしい、無農薬野菜を支給してほしい、好きな書籍を購入したいなど、さまざまな提案がくる。提案が採用されると、1件あたり500円が支給される。却下されるものもあるが、お試しで始めてみるものもある。現在では、年間610件の提案がある」(岩崎氏)。

 例えば、子どもが病気になったときのための病児ベビーシッター使い放題制度もその1つ。

 岩崎氏は、「残業がなければ一生働けると思っていたが、子どもが病気になると働くことができない。そこでこの制度が生まれた。本当はパパの会社にも半分負担してほしいが、パパが休むとクビになる会社が多いのが実情。しかたないので、うちの会社が払っている(笑い)。男性も、女性も、会社から早く帰れる時代がきてほしい」と締めくくった。

(ITmedia エグゼクティブ)

最終更新:9/28(水) 10:31

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