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メール1本で46億円を盗難! 欧州を舞台にした巨額BEC詐欺

THE ZERO/ONE 9/28(水) 12:27配信

2016年8月12日、ドイツの大手電気機器メーカー「LEONI AG(以下LEONI)」が、BEC詐欺(CEO詐欺)の被害に遭ったことを報告した。4日後の8月16日、同社は詐欺の被害額が4000万ユーロ(約46億円)であったことを伝えるとともに、その損害は同社の年間予測純利益に影響を及ぼさないということ、また同社のIT基板やデータのセキュリティにも影響が出ていないことをウェブサイトで発表した。しかし詐欺そのものについては調査中とされ、事件の詳細は語られなかった。

8月30日頃から、地元メディアの報道により、ようやくLEONIを襲った詐欺の詳しい手口が報道されはじめた。それは「いかにもBEC詐欺」と感じられるような内容であるのと同時に、この犯罪の周到さを改めて思い知らされるものでもあった。

北米圏で激増しているBEC詐欺については、今年の7月にも詳しく説明した(『経営者を装ったオレオレ詐欺!? FBIが警告する「BEC詐欺」が激増中』)。しかし今回の事件は欧州を舞台としたものだ。つまりBEC詐欺に対する注意喚起が北米ほど頻繁に行われてこなかった地域で「典型的なBECの手口」が用いられ、巨額の被害が発生した。日本にとっても他人事ではない事例なので、ぜひとも紹介しておきたい。

事件の背景と概要

まずは詐欺の被害者となったLEONIがどんな企業なのかを説明しよう。。来年で創業100周年を迎えるLEONIは、各種電気ケーブルやコードセット、ワイヤー、光ファイバー、配線システム、及びそれらの関連製品などを世界中に提供している業界第4位、欧州最大のメーカーだ。多種多様な同社の製品は、コンピューターや電化製品のみならず、BMW、メルセデス、ロールスロイスなどの車両の配線やケーブルとしても利用されている。

LEONIはドイツを拠点とする企業だが、同社のウェブサイトが提供している事業案内によれば、世界32ヵ国(うち欧州は17ヵ国)に7万6000人の従業員を抱えており、アジア大陸・アメリカ大陸・アフリカ大陸にも製造拠点や販売拠点を配置している。

そして今回のBEC詐欺の標的となったのは、本拠地のドイツではなく「ルーマニアにある一事業所」であったことが地元の新聞社によって明かされた。その新聞を追うようにして複数の地元メディアも事件の詳細を報じたらしいのだが、残念ながら筆者はルーマニア語を全く読めないので、ここでは国内の報道内容をまとめたルーマニア発の英語ITニュースサイト『SOFTPEDIA』による8月31日の記事を紹介したい。

SOFTPEDIAによると、この巨額の詐欺事件の捜査を担当したのは、ルーマニア警察の捜査部門のトップ組織DIICOTであったという。その当局者曰く、当事件の犯人が「詐欺の標的」として選んだのは、ルーマニア北部の町ビストリツァにあるLEONIの事業所でCFO(最高財務責任者)を務めている一人の女性だった。

彼女の元に届いた詐欺メールは「ドイツの『LEONI最高経営幹部』のメンバーの一人から送られたものに見えるよう、慎重に作り上げられた偽のメール」だった。その内容や、文中で使われた言語については何も語られていないが、この詐欺メールは「同社の独自のポリシーに則った形式のもの」だったという。さらに犯人は、同社が利用している送金プロトコルを事前に理解したうえでメールを送っていた、とも伝えられている。

そして「ドイツの最高経営幹部から直々に送金の要請を受けた」と信じて疑わなかった彼女は、相手がメールで指定したとおりの銀行口座へ送金を行った。つまりは偽のメールに騙されて金を振り込んだ、という単純明快な事件である。

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最終更新:9/28(水) 12:27

THE ZERO/ONE

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