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ライバル社に転職するなら「損害賠償を」...そんな就業規則は有効なの?

弁護士ドットコム 9/28(水) 10:12配信

同業他社に転職したいが、今の職場の就業規則で禁止されている、労働者に職業選択の自由はないのか? 弁護士ドットコムの法律相談コーナーに、転職活動について悩む人々から相談が寄せられました。

製造業の会社で働くある男性は、同業他社への転職活動を行い、内定を得て入社の意思を伝えました。ところが現職場の就業規則を見ると、「同業他社への転職及び就職活動を禁止する」との記載があったのです。男性はこの規則を知らずに転職活動を行っており、「(現職場を)退職する際、懲戒処分などになる可能性はありますか?」と不安を抱いています。

また、現在は働いておらず、再就職活動中だという別の男性は、管理職として働いていた前の職場を退職する際、誓約書にサインをさせられたそうです。そこには、知りえた技術や営業上の機密事項の持ち出し禁止、同業他社への2年間の転職禁止などの項目が。さらに、これらに違反し、会社が損害を被った場合には「損害賠償を請求する」とも書かれていたといいます。

就業規則や退職時に書かされた誓約書に、「同業他社への転職禁止」との記載があるのに同業他社に転職した場合、現職場や前の職場から損害賠償を請求される可能性はあるのでしょうか。土井 浩之弁護士に聞きました。

 ●「同業他社への転職禁止」は法的に有効?

まず、退職後も元の会社の秘密を守るということが、就業規則で定められているか、特約がある場合は、その定めに従う必要があります。転職先に秘密を暴露するなど、定めを破った場合は、損害賠償請求の対象になります。ただし、その秘密を守ることが、必要かつ合理的でないというような事情がある場合は例外です。

そのような就業規則や特約がない場合でも、秘密を暴露したことで、元の会社に損害が生じたならば、秘密保持違反となる可能性があります。

次に、退職後に同業他社に再就職することについて考えてみます。同業他社への転職を制限する契約は、「競業避止義務契約」と呼ばれますが、この契約の有効性は制限的に認められています。

就業規則や特約に定めがない場合は、労働者には憲法で職業選択の自由が定められていますので、同業他社に就職したことそれ自体では損害賠償の対象とはならないでしょう。定めがある場合は、必要性や期間、地域などの範囲といった観点から合理的ならば、同業他社への再就職が損害賠償の対象となる可能性はあります。企業秘密である顧客リストを持ちだして同業他社に移り、顧客を引き抜くようなケースが念頭におかれています。

これに対して、工場作業など特に秘密にする情報もないような作業をしていた人が、同業他社の工場に再就職して工員となったとしても、元の会社に損害は生じにくいと考えられ、損害賠償の対象とはなりにくいでしょう。

【取材協力弁護士】
土井 浩之(どい ひろゆき)弁護士
過労死弁護団に所属し、過労死等労災事件に注力。現在は、さらに自死問題や、離婚に伴う子どもの権利の問題にも、裁判所の内外で取り組む。東北学院大学法科大学院非常勤講師(労働法特論ほか)。
事務所名:土井法律事務所
事務所URL:

弁護士ドットコムニュース編集部

最終更新:9/28(水) 10:12

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