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電力システム改革を「貫徹」する新たな施策、2020年に向けて実施へ

スマートジャパン 9/29(木) 11:25配信

 経済産業省が「電力システム改革貫徹のための政策小委員会」を9月27日に新設して、市場競争を加速するための方策や新制度の検討を開始した。「貫徹」の2文字に政府の意欲が込められているが、それほど電力市場の改革に向けて難問が山積していることを示している。

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 新しい委員会で検討する項目は6つある。電力市場に公平な競争環境をもたらす狙いがある半面、電力会社が抱える原子力や火力発電の課題を解決するための施策も盛り込まれている。2020年4月に実施する発送電分離(送配電部門の中立化)に向けて、電力会社の発電事業と小売事業の競争力を左右する重要な施策の導入が進んでいく。

 6つの検討項目の中でも特に注目すべきは2つの新市場の創設だ。1つは「ベースロード電源市場」、もう1つは「非化石価値取引市場」である。いずれも原子力発電の再稼働を前提にした市場になるため、現時点では実効性を判断しにくい状況だ。合わせて火力発電を対象にした「容量市場」の創設も検討項目に入っている。

 ベースロード電源市場を創設する目的は、電力会社が抱える発電コストの低い電力を広く市場で取引できるようにすることにある。ベースロード電源には石炭火力、大規模な水力、そして原子力の3種類が含まれる。電力会社の供給力を支える電源で、発電した電力の大半を自社の小売部門を通じて販売している。

 新規参入の小売電気事業者に供給される量は極めて少なく、電力の調達コストに格差が生じる一因になっている。この問題を解消する手段として、ベースロード電源市場を創設して電力会社から安価な電力を市場に供出させる狙いだ。新規参入者が低コストの電力を調達して価格競争力を発揮できるようになる。

 資源エネルギー庁が電力会社と新規参入事業者の電力供給計画を集計したところ、両者のあいだにはベースロード電源の比率に大きな開きがあった。10年後の2025年度の計画では、電力会社が供給する電力のうち3割以上をベースロード電源が占めるのに対して、新規参入事業者では4.6%に過ぎない。原子力の再稼働を見込みにくいことに加えて、電力会社が他社に供給していない現状を想定した結果だ。

 ベースロード電源市場を有効に機能させるためには、電力会社に一定量の電力を市場に供出するように義務づける必要がある。特に原子力に関しては、国策民営の方針をもとに多額の国家予算を投入して推進していることから、可能な限り市場に供出することが求められる。

 原子力の発電コストが低いのは、電力会社が負担する費用が小さくて済むためである。立地自治体の交付金のほかにも、今後の増大が見込まれる使用済み核燃料の処理費用や老朽化した発電設備の廃炉費用の一部を国や国民が負担することになる。その結果で生まれる安い電力のメリットは国全体で共有するのが妥当だ。

原子力の電力を市場で取引する目的と思惑

 政府は2030年度に達成するエネルギーミックス(電源構成)の目標の中で、原子力の比率を20~22%程度に設定した。この目標を達成するためには、建設中の原子力発電所を含めて全国で45基のうち35基以上を稼働させる必要がある。現状のままでは目標達成は極めてむずかしく、抜本的な対策を早期に打ち出さなくてはならない。

 その1つが「非化石価値取引市場」の創設だ。エネルギーミックスの最大の目的は、2030年のCO2(二酸化炭素)排出量を2013年比で26%削減することにある。化石燃料を使わない原子力と再生可能エネルギーを合わせて44%以上の比率に高めることがCO2排出量の大幅な削減に不可欠になっている。

 政府は「エネルギー供給構造高度化法」を2016年4月1日に改正して、電力の販売量が年間5億kWh(キロワット時)以上の小売電気事業者を対象に、2030年度の販売量の44%以上を非化石電源で供給するように規定した。新市場を創設して各事業者が非化石電源の電力を調達しやすくする。と同時に再生可能エネルギーによる電力の調達コストを引き下げて、国民が負担する賦課金を軽減することにもつながる。

 ただし再生可能エネルギーの電力の大半は、2017年度から送配電事業者(電力会社の送配電部門)が買い取る仕組みに変わる。固定価格買取制度(FIT)の対象になる電源は卸電力取引所を通じて、市場で電力を売買する方法が主流になる。この仕組みが定着すれば、小売電気事業者が再生可能エネルギーの電力を安く調達できる。新たに別の市場を作る必要性は低い。

 結局のところ、非化石価値取引市場を創設する最大の狙いは、原子力発電を拡大させることにある。安全性や環境負荷が大きく異なる再生可能エネルギーと原子力を1つの市場でどう扱うのか。国民や事業者が納得する制度を作り上げるのは至難の業と言える。

 このほかの検討項目を含めて、委員会では2016年内に中間の取りまとめ案を策定する方針だ。その内容を受けて経済産業省が新しい制度の設計に入る。新制度を実施するタイムリミットは、2020年4月に実施する発送電分離である。電力会社の発電事業と小売事業が健全な競争状態に変わらない限り、発送電分離を実施しても電力システムの改革は貫徹できない。

最終更新:9/29(木) 11:25

スマートジャパン