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コンセプトは「世界初」 イケメン大暴れ『HiGH&LOW』が10代女子の心をツカむ理由

ITmedia ビジネスオンライン 9/29(木) 8:03配信

 『HiGH&LOW』というタイトルを知っているだろうか。EXILE TRIBEや三代目J Soul Brothers、劇団EXILEなどが所属するLDHグループが総出演して大暴れする青春作品だ。テレビシリーズ(日本テレビ)2クールを皮切りに、7月には映画『HiGH&LOW THE MOVIE』(松竹系)を公開し、興行収入は20億円を超えた。さらにコミックス展開やCDリリース、ライブまで行うという大規模な“総合エンターテインメントプロジェクト”となっている。

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 この記事を読んでいる読者の中には「EXILEは1人も分からない」「どうも自分はターゲットではなさそうだ」と思う人もいるかもしれない。実際、その印象はある意味では正しい。映画を観た76万人の多くは出演者ファンのティーン層だ。

 大人にはピンと来ない、でもティーンの心には確実に届いている――そんな『HiGH&LOW』は、コンテンツとメディアミックスの成功例として学ぶべき点が多い。同シリーズを手がける、日本テレビ植野浩之プロデューサーに聞いた。

●『HiGH&LOW』というアーティストを作る

――『HiGH&LOW』は、どういった経緯で生まれた企画なんでしょうか。植野プロデューサーは、テレビ版の企画から関わっているんですよね。

植野: 「テレビ版の企画から」と言うと語弊があるかもしれません。そもそも『HiGH&LOW』は、“テレビ版が好評だったので、映画に進出する”……という企画ではないんです。もともとの始まりは2年くらい前で、「ブランドを作ろう」という話をしていたところにあります。日本テレビはテレビ局ですが、動画配信の「Hulu」を始めとしていろいろなところと連携するようになりました。そういう状況下で、“テレビでコンテンツを放送する”だけではなくて、“1つのコンテンツをさまざまなメディアで活用する”ことが会社の命題となっていた。

 どういうものを作れるかを社内で話し合っていたタイミングで、昔から付き合いが長かったHIROさん(EXILEのリーダー・LDH代表取締役)と食事をしました。日本テレビの命題についてお話ししていたら、HIROさんも「実は僕らも同じことを考えていたんです」という話になった。

――1つのコンテンツを他メディアに展開することを、LDHさんも考えていた。

植野: そうです。“テレビ番組”を作るためにコンテンツを作るのではなくて、コンテンツありきでやっていきたいと。『HiGH&LOW』という1つのコンテンツをどうやって作っていくか模索しながら、企画を考えていきました。

――『HiGH&LOW』というアーティストの出演先をどこにするか考えていくようなイメージですね。

植野: 企画を考えるときは、初めからコンセプトを考えています。僕は「誰もやったことがない」とか「初めて」という言葉が好き。“テレビと映画に展開”までは、結構普通ですし、僕もやったことがある。でも、そこにコミックが加わって、CDが加わって、SNSをやって、さらにライブまで加わったら、聞いたことがないじゃないですか。……というか、できないですよ。そこにネットとの連携などを含めたら、世界初と言えるんじゃないか――それが『HiGH&LOW』のコンセプトです。

 ビジネス的な視点は、コンセプトの後から考えました。根幹にあるのは「どうしたら世界初と言えるか?」「どうやれば驚きを作れるか?」。だから『HiGH&LOW』は企画が始まったときから“総合エンターテインメントプロジェクト”という言い方をしています。

――プロジェクト全体に対する反応はいかがですか?

植野: 盛り上がっていますね。夏休みの時期には、日本テレビ前のスペースでリアル店舗でフードやグッズを販売する「HiGH&LOW THE BASE」というイベントを行っていましたが、ものすごい売り上げでした。普通は“テレビで宣伝して、映画の興収でもうける”というスキームかもしれませんが、『HiGH&LOW』はそうではない。既存のスキームとは違う当たり方を狙っていましたし、その通りに今動いています。

●ストーリーよりも、キャラクター

――企画は「こういうお話にしよう!」という形で作り上げていったんですか?

植野: いえ、ストーリーというより、キャラクターがメインです。「どういう人がいたら面白いかな」「どういう衣装を着ているのかな」「チームを象徴するのはどういうマークかな」「このチームの人たちはどういう名前かな」と、キャラクターを作り上げていきました。

――『HiGH&LOW』には、「ムゲン」「雨宮兄弟」「山王連合会」「White Rascals」「鬼邪(おや)高校」「RUDE BOYS」「達磨一家」といった個性豊かなチームが登場します。それぞれにキャッチコピーやテーマソング、チームマークなどがあるのが特徴です。ちょっと、ファッションブランドに近いなという印象を受けました。

植野: 『HiGH&LOW』という大きなブランドがあって、その中にチームという派生ブランドがあるというのは近いかもしれないですね。

――本作にはLDHのアーティストや俳優以外の出演者も多いです。窪田正孝さんや斎藤工さん、林遣都さんや山田裕貴さんなど、人気俳優や勢いのある若手俳優も多数出演している。LDHだけで作品を作らなかったのはどうしてなんでしょうか?

植野: 広がりの問題です。他の事務所の今をときめく俳優に「一緒にやりましょう」とお願いをして出てもらいました。演技の専門家である俳優と、専門家ではないけれど独特の華があるアーティストをミックスすることで、相乗効果も狙っています。

 あとは、いろんな方に参加していただくことで、「『HiGH&LOW』はLDHと日本テレビが勝手に立ち上げたブランドではなくて、たくさんの人が賛同してくれているプロジェクトなんだ」と思ってもらいたいという気持ちもあります。

――出演者のファンが、新しく作品のファンになっているのではないでしょうか。どうして支持されたと考えてらっしゃいますか?

植野: 僕たちは「この世界観や、こういうキャラクターがいい!」と思って作っている。僕たちの中で「これが一番ササる!」と確信を持てて、テンションが上がるものを信じて出しています。でもそれがヒットする場合もあれば、ヒットしない場合もある。決めるのはユーザーなので、「僕たちがいいと思っているものを、みんなはいいと思ってくれるはずだ!」という感覚ではありません。いいと思って出しているものを、どういう風に一般の層に興味を持ってもらえるか、仕掛けを作っていくという感じです。

――『HiGH&LOW』の仕掛けはなんだったんでしょうか。

植野: どういうふうに一般の層に落としていけるのか、知らせていくのか。どういう風に興味を持ってもらうのかっていうことを考えて仕掛けをつくります。宣伝でいうと、公開までに20週連続でトレーラーを公開しています。これは映画でも初の試みだと思います。

――また“初めて”ですね。

植野: はい(笑)。全国200ヶ所での舞台あいさつも初じゃないでしょうか。それから、コンセプトを“全員主役”にして、主役をあんまり定めていません。LDHのファンも、他事務所からの出演者のファンも、それぞれに楽しめる作品になっている。映画の観客層は圧倒的に

ティーンが多いですが、実は、男性のファンもけっこう多いんですよ。

――意外です。男性ファンはどこに引かれているのでしょう?

植野: アクション、ファッション、音楽。これは他の作品にはないものです。アクションは『るろうに剣心』のアクション監督を招いて「日本映画でこれよりすごいものはほぼない」と言えるくらいのものになっているし、ファッションもこれ以上にオシャレなものはないと言い切れる。……ちょっと偉そうに聞こえますかね(笑)。でもそれくらいの気持ちで作っています。音楽も、それぞれのチームにテーマ曲がついて、アルバムまで出しています。こういう“一流のもの”って、男の人も好き。そこに引きつけられているのだと思います。

●ティーンの価値観に“刺して”いく

――ティーンがメインターゲットだと、マーケティングは難しくなりませんか?

植野: 『HiGH&LOW』に限らず、全てにおいてそうだと思うんですが、ティーンのもつ特性にフォーカスを当てていくんです。“衝動”や“カッコいいものやかわいいものが絶対という価値観”――そこに刺していくことが、絶対に必要だと思っています。

 たくさんいるキャラクターが、みんなカッコよくて、みんなオシャレで、マネしたくなる。「こういう男の子と付き合いたい」「こういう男の子に囲まれたい」という気持ちや、「こういう男の子になりたい」「こういう男の子になって女の子にモテたい」という気持ちが、テンションの上がる音楽とともに総体になっているのが、『HiGH&LOW』という作品です。

 今のテレビは、F2~F3層といわれる30~60代の女性が、視聴率を取る上で非常に重要になっています。もちろん人によって差がありますが、この層は“ちゃんとしたストーリー”で“ゆっくりしたスピード”のドラマを見ることに慣れている。そういう層には、『HiGH&LOW』は正直向かないですよね。説明もざっくりしているし、スピードも速すぎるし、まず登場人物が多すぎて覚えられないかもしれない。なんのために戦っているのかも明確じゃないし。

――琥珀さん(AKIRA)のために戦っているのかと思っていました。

植野: そうそう、それはそうです。そういうのを感覚的に理解する人は「仲間のために戦ってるんだね~」と受け入れますが、頭で考える人だと「正義のため」とか「国のため」とか、明確になっていないと見にくい。多くの作品は二元論になっているので、善悪がはっきりしている方が見やすいんです。でも『HiGH&LOW』は全員主役なので、悪人は作っていない。

――唯一「家村会」が明確に悪いくらいですね。植野さんは『HiGH&LOW』のほかにも、『お兄ちゃん、ガチャ』(2015)や『黒崎くんの言いなりになんてならない』(テレビ版2015、映画版2016)といったティーンがメインターゲットとなる作品のプロデューサーをいくつも務めています。女子中高生のハートをつかむ作品を作る秘訣(ひけつ)はなんでしょうか。

植野: 僕が言うと恥ずかしいんだけど……“キュンとできるかどうか”ですね。僕は脚本を作るときや編集するときは、女の人の気持ちになるんですよ。女の人が見たときに、どこでテンションが上がるのかを、すごく考えます。

――植野さんは男性なのに、どうしてティーンのトキメキポイントとズレないんでしょうか?

植野: 中身が幼いのかな(笑)。ただ、仕事柄、10代の子と普通に話すことが多いのは大きいですね。誰と話すときも、あんまり話す内容は変わらない。いつも人に会うと「何が一番面白いの?」「何でテンション上がるの?」「どういう子が好き?」と聞いています。誰に対しても、興味があることを普通に聞いちゃうくせがありますね。

――それはずっと昔からですか?

植野: 昔っからかもしれません。あと、作品を考えているときに、2つの脳があるんですよね。1つは『HiGH&LOW』のように「自分たちがカッコいいと思っているものを提示する」という脳で、もう1つは「どういう風に一般層に広げていくのか」というマーケティング的な脳。女性を対象にしたコンテンツを企画するときは、後者の脳で作ります。だから初めから、周りにいる女性に聞くんですよ。

――テレビ業界には、女性がいっぱいいるんですか?

植野: いや、僕の周りに特に多いですね(笑)。女の人の手厳しい意見をよく聞きます。「かっこ悪い!」とか「全然面白くない!」とかを聞いて、撮りながらでも取り入れていきます。周りの意見を聞かないと、男っぽくてダサくなってしまう。みんなどんどん聞いていけばいいのにと思います。

●対象層とズレないために

――『HiGH&LOW』は前者の脳で作っているとおっしゃっていますが、でも映画館で本作を見たときに、カッコいいシーンが出るたびに「キャーッ!」と女子の悲鳴が上がっていました。

植野: 基本的には「僕たちが好きなもの」ですけど、何カ所か女子ウケを狙った部分もありますね。僕は、男の人も女の人も、根本的にカッコいいと思っているものや好きなものは変わらないと思っているんです。例えば、アクションシーンは、女性が見て「これだったら痛くない」と思うレベルにしています。「痛い」と感じさせければ「カッコいい」が勝って歓声が上がる。バランスを取るようにしています。

――最後に、仕事において、大切にしていることを教えていただけますか。

植野: 今のところは、“僕が面白いと思っていること”と、“10代や女性が面白いと思っていること”が近いので、うまくいっている感じがします。でも、ズレは生まれてくる。だから常に、いろんな世代、いろんな性別の人の意見を聞きます。「どこがいいのか?」「どこが悪いのか?」「どこにキュンとするのか?」「どこにハマるのか?」を聞いて、微修正していく。今は“取り入れる”というレベルですが、もし自分の感覚と対象層の感覚がズレてきたら、100%人の意見を聞きます。

――大々的にズレたら、自分を変える。

植野: ガッと変えますね。僕の仕事は、自主映画ではありませんから。“人にササる”というのが全てです。

 『HiGH&LOW』の映画第2弾『HiGH&LOW THE RED RAIN』は、10月8日公開。雨宮兄弟(斎藤工、TAKAHIRO、登坂広臣)の人間ドラマにフォーカスしたストーリーになっている。バイクアクションやカーアクションも充実。『THE RED RAIN』から『HiGH&LOW』の世界に入ってみるのもオススメだ。

最終更新:9/29(木) 8:03

ITmedia ビジネスオンライン

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

北朝鮮からの脱出
北朝鮮での幼少時代、『ここは地球上最高の国』と信じていたイ・ヒョンソだったが、90年代の大飢饉に接してその考えに疑問を抱き始める。14歳で脱北、その後中国で素性を隠しながらの生活が始まる。 これは、必死で毎日を生き延びてきた彼女の悲惨な日々とその先に見えた希望の物語。そして、北朝鮮から遠く離れても、なお常に危険に脅かされ続ける同朋達への力強いメッセージが込められている。