ここから本文です

「いつかあの世で言ってやりたい」友人を亡くした20代男性の想い

STORYS.JP 9/29(木) 21:00配信

イチローを敬愛していた、メジャー球団「マーリンズ」のエース、キューバ出身のホセ・フェルナンデス投手が事故に遭い、亡くなられました。24歳だったそうです。

10年前の第1回WBCで王監督率いる日本チームが、キューバを下して世界一に輝いたとき、彼は14歳。

今年7月のインタビューでは「あのWBCを観て、イチローという選手にいつか会うことが私の夢になった」と語っています。

第一回WBCから時は経ち、母親と共にキューバから亡命して、アメリカで野球をプレイしていた彼は、マーリンズに入団。
2015年イチローの移籍を機に、イチローがチームメイトになりました。

「1日でもいいから、あなたのようになりたい。」イチローにそう伝えることもあったそうです。

2016年9月26日に行われた、フェルナンデス選手追悼の意が込められた試合で、ヒットを打ったイチロー。

試合後のインタビューでイチローは、しばらくの沈黙のあと「この1本は彼にあげます」とやわらかな笑みを浮かべました。
 
 
 

本日は、人生共有サイトSTORYS.JPに投稿されたこちらのストーリーをご紹介します。

■ 友達が死んだ ■

友だち(Y)が死んだ。僕は「バカだなー」と思った。
死んじゃうなんて、バッカだなー、って。
ちなみにYが死んだのはぜんぜんYのせいじゃない。

むしろYはできるだけ生きようとして持病の手術をうけて、でもその手術が失敗して死んでしまった。誰のせいかという話ならYが死んだのは医者のせいだ。

なんだ、医者なんて白衣を着て偉そうな顔してふんぞり返って、人ひとり助けることもできないの。
でも僕は医者の卵だ。サイテーだ、こんなの。

僕がバカだと思うのはYが死んだことそのものについてだ。
どうして死んじゃうの、バカなの。
病室のYをさいごに見送ったのがYの彼女さんで、手術が成功したらYは彼女さんと結婚しようとしていて、だからYは麻酔で意識をなくす瞬間にきっと彼女さんのことを考えていただろう、なんて出来すぎたエピソード、聞きたくなかった。

でも、たぶんそれぜんぶホントだから。
ダメじゃないか。死んだら、ダメじゃないか。

突然の訃報で実感なんてなかった。
なんか斎場の裏手、ラブホテルだったし。こんなとこに建てんなよ、って思った。出てきたカップル見て、ちょっと笑っちゃったくらい。
ずっと「またまたー」くらいのテンションでいた。そんなそんなー、もー、ねえ?
だって俺らまだアラサーだよ。人生これからっしょ! ほら、イエーイ!
なのにぜんぜん反応しないから。綺麗な花で飾られたままで。
僕はYがよく着ていた趣味の悪いお気に入りのシャツが棺の中に入れられるのを見てはじめて泣いた。

ああ、友だちが死んだ、と思った。

死はとても身近にあって、たとえばコンビニ。
香典袋も、墨汁のうすい筆ペンも、コンビニに売っている。たぶん何度も見かけているのに、ちゃんと意識することはない。必要がないから、そのときは。
でも、ある日いきなり突きつけられるのだ。これまで目を背けつづけてきた分の残酷さといっしょに。

バカだよ、本当に。
僕はYの元カノともなんどか一緒に遊んだことがあって、Yがこっぴどくフラれたときも慰めたりして、でも来てくれてたからね、あの子。居心地なんてすごく悪いはずなのに、最後まで残ってた。
ひさしぶりに話したら「いま支えてくれる人がいるみたいでよかった」とか声詰まらせながら言ってて、もうホントに、なにしてくれてんのって。
「いいヤツだった」とか「きっと幸せだった」とかいつのまにか過去形になって、手術の前日まで使ってた手帳なんてプライベートなもの展示されて。

それ読んだら、あれだ、ぜんぜん死ぬつもりなんてなかったんだ、ってわかった。不安はあったみたいだけど、ちゃんと手術が終わったあとのことも考えていて、今年の目標とか、そんなことが書いてあった。
だけど、書き込みはそこで止まっていて、あとはずっと空っぽのページ。これからも永遠に埋まらないのに、ただ日付だけが入ってる。
死ぬって、こういうことなんだと思った。

あと、もうこれは本当にバカだと思うんだけど、僕とYは同じ部活で同じ種目をしていて、でもずっと僕のほうが強くて。

むかしYに「どうしたらもっと強くなれると思う?」って聞かれたときに、僕は「週3で筋トレすれば」って答えたことがあった。
手帳見たらいまでもキッチリ週に3回、筋トレのメニューが書いてあって、おまえは本当にバカなヤツだよって思ったらもうダメで、外に出て声あげて、泣いた。

僕はたしかにいま医師国家試験の直前なんだけど、Yが僕には手術のことを伝えないように言っていたらしい。「余計な心配かけたくないから」と。
そんなことばっかり言う人間だった。誰にでも優しくて、ちょっとおせっかいで、僕と僕の元カノの仲を取り持とうとするような。それはまあ失敗したんだけど、そのときは本当に悲しそうな顔をしていた。
でも、じつは去年の秋に体調を崩して仕事を辞めて、それからずっと療養していたこととか、今年になってすぐ入院して、大きな手術をうける予定だったこととか、そういうのはさ。
ちゃんと言えよ、バーカ。

言いにくいことを言わないのは優しさじゃない。自分が他人を心配させるのが苦しいというのは優しさよりもむしろ自分可愛さじゃないか。
心の準備もなしに、最悪の結果を伝えられる身にもなってみろ。折り合いなんてつかないぞ。
そう、僕は怒っているのだ。
友だちが死んだから。

棺に入れた友人一同の寄せ書きには「そのうち会おう」とだけ書いた。
死ぬのが怖いのは、心のどこかで自分はずっと生きるものと思っているからだろう。本当はそんなことなくて、たぶん僕も死んでしまうのだ。
明日かもしれないし、何十年後かもしれないけど、そのうち、そっちの世界で会えたら、顔を見るなり、絶対に言ってやろうと思う。
「バーカ」って。
そしたら「おまえも死んだだろ」って言われて、また酒でも飲みたい。






みなさんにしばらく連絡してない友だちがいたら、この機会に近況報告でも。

----------------------------------------

フェルナンデス選手のご冥福をお祈りいたします。

最終更新:9/29(木) 23:39

STORYS.JP