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車いす渋谷さんが富士登頂 施設職員に背負われ

カナロコ by 神奈川新聞 9/29(木) 10:10配信

 横須賀市武の障害者施設「清光ホーム」に入所する車いすの男性が7月、職員と共に富士登山に初挑戦した。職員3人に交代でおぶわれながら登頂に成功。男性は人々の優しさに触れた夏の思い出を「行って良かった」とかみしめている。

 富士山登頂を果たしたのは、知的障害があり、自立歩行も困難な渋谷秀夫さん(66)。きっかけは今年初め、施設で登山雑誌を読んでいた時、「ここに行きたい」と富士山の写真を指さしたことだった。

 施設職員の梶山卓也さん(27)が述懐する。「普段は自分の意思を言わない人。よほど行きたいんだと思った」。梶山さんを含め体力に自信がある職員3人が集まり、登頂計画が始まった。入所者の希望で旅行に行くことはあるが、富士山を目指すのは初めてだったという。

 職員は専用の器具を使い渋谷さんをおぶって、近くの武山に2度登った。渋谷さんも歩行訓練や自転車型のトレーニング器具でリハビリを重ね、体力づくりに励んだ。

 迎えた当日。5合目から6合目までは馬に乗り、そこからは職員が交代で渋谷さんを背負い、他の2人は4人分の荷物を持って登った。午前10時に5合目をたち、9合目の山小屋に着いた時は午後10時になっていた。

 背負った梶山さんたち職員も、長時間同じ姿勢だった渋谷さんもすっかり疲れ果てた。そんな中で力になったのは、道中で声を掛けてくれた他の登山客の励ましだった。

 暗がりの中、山小屋の手前で疲れて動けなくなっていた時には、先行していた登山客10人ほどが下りてきて助けてくれた。翌朝の山頂はあいにくの天気だったが、山小屋のスタッフが晴れた日の御来光の動画を見せてくれた。

 渋谷さんは「たくさんの人と話せた」と大切な思い出を笑顔で振り返る。梶山さんは「最初は賛否両論あったけれど、協力してくれた職員、温かく見守ってくれた登山客、そして何より渋谷さん本人に感謝している」と話している。

最終更新:9/29(木) 10:10

カナロコ by 神奈川新聞