ここから本文です

次世代の世界最強トレーダーはAIか? 人間たちに勝算はあるのか?

THE PAGE 10/5(水) 17:00配信 (有料記事)

 投資の世界には新しい時代が到来しつつある。それは、ボット(ロボット・トレーダー)が市場を席巻し、相場の大変動を生み出す時代である。ボットの多くは人間がプログラムしたものだが、それに加えて、自分で学び自分で有効な投資手法を考える新世代のAI(人工知能)投資家も登場し始めている。これからの投資の世界は、いったいどのようになっていくのだろうか。(解説:ミリタス・フィナンシャル・コンサルティング・田渕直也)


  ボットが引き起こした“フラシュ・クラッシュ”

2010年5月6日、米国株式市場は突如として原因不明の暴落に見舞われた。わずか数分のうちに株価指数が9%も下落したのだ。その下落スピードは過去に例を見ないほどのすさまじさだった。しかも、その直後にやはり同じようなすさまじいスピードで相場が急回復していくのである。瞬く間に起きた暴落と急回復。それが“フラッシュ・クラッシュ※”だ。

 この“フラッシュ・クラッシュ”の原因とされているのが、高頻度取引(HFT)と呼ばれる高速コンピューター取引だ。HFTにもいろいろなタイプがあるが、ここでは代表的なものを一つだけ取り上げよう。

 たとえば、アップル株が114.25~114.50ドルで取引されているとする。低い方の114.25ドルが買い提示価格(ビッド)といわれるもので、今アップル株を売ろうとすればこの値段で相手がいることを示す。高い方の114.50ドルは売り提示価格(オファー)で、今すぐに買える値段だ。

 ここでもし、ビッドでの売りとオファーでの買いを同時に行えばその差額分だけ損をすることになる。これが売買コストだ。だが、その裏側で、ビッドを提示している投資家(もしくは業者)はアップル株を114.25ドルで買い、オファーを提示している投資家(もしくは業者)は114.50ドルで売っていることになる。

 HFTを行う高速コンピューター・システム(ロボット・トレーダー、もしくはボットと呼ばれる)は、こうしたビッドやオファーを提示しているのである。一般の投資家が売買する相手側にボットがいて、投資家が売買を繰り返すたびにビッドとオファーの差が彼らの利益として落ちていく。

 このやり方にはもちろんリスクもある。114.25ドルでアップル株を買った後、それがもっと高い価格で売れる前に株価が急落してしまったら、大きな損失が発生する。そこでボットは、様々な市場の動きや投資家の注文動向、最新のニュースなどをチェックしながら、異変を感じ取ったらすぐさま提示価格を変更したり、反対売買を行ったりしてリスクを最小化しているのだ。

 彼らの戦略が成功するかどうかはその反応の早さにかかっている。それは、ミリ秒(千分の一秒)やマイクロ秒(百万分の一秒)単位といわれるスピード競争だ。

 ここで、大口の売り注文が市場に現れたとしよう。ボットはその瞬間に、114.25ドルのビッド価格を大きく下げるか、場合によってはビッドをすべて取り消す。それまでに114.25ドルで買っていたアップル株がある場合には、それを直ちに売ってポジションを解消する。そうしたことが一瞬のうちに行われる。あちこちのボットが同じようなことを一斉に行えば、一瞬のうちに相場が急落することもありうるのだ。

 そして、ボットが生み出した相場の急落は、別の種類のボットの売りオーダーを自動的に発動させて、売りが売りを呼ぶ展開になりかねない。2010年5月6日に起きたのは、まさにそうした事態だったのである。“フラッシュ・クラッシュ”は、ボットが市場を席巻し、市場の急変動を引き起こす新しい時代の幕開けを告げるものであった。

※フラッシュ・クラッシュとは、「瞬間的な暴落」というような意味である。固有名称としては、2010年5月6日に起きた米国株式市場の急変のことを指すが、これに類した出来事は近年頻繁に見られるようになっており、フラッシュ・クラッシュという言葉自体が一般用語化しつつある。本文:7,235文字 この記事の続きをお読みいただくには、THE PAGE プラスの購入が必要です。

  • 通常価格:
    648円/月(初月無料)
  • 会員価格会員価格:
    540円/月(初月無料)

サービスの概要を必ずお読みいただき、同意の上、ご購入ください。

Yahoo!プレミアム会員登録はこちら(月額498円)

最終更新:10/5(水) 17:00

THE PAGE