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5年で190集落が消滅 「過疎地崩壊」のカウントダウン

ZUU online 9/30(金) 10:10配信

2015年4月までの5年間で過疎地域にある全国99市町村の190集落が消滅していることが、国土交通、総務両省の過疎地域集落現況調査で明らかになった。2010年の前回調査と比較可能な集落のうち、81.2%に当たる5万2058集落で人口が減少、過疎地の苦境がさらに深刻化している状況も浮き彫りになった。

65歳以上の高齢者が過半数を占める限界集落を抱える自治体は、集落維持へ懸命の努力を続けているが、実を結んでいない。崩壊に向かうカウントダウンが過疎地域からはっきりと聞こえるようになってきた。

■人口20%以上の減少は全体の13.7%

調査は国交、総務両省が過疎地域の実態を把握するため、おおむね5年おきに進めている。今回から過疎地域以外の離島、豪雪地帯の集落なども調査対象に加えた。対象地域を抱える1042市町村のうち、1028市町村から7万5662集落に関する回答を得た。

それによると、全国で消滅した190集落は、人口減少や高齢化などから自然消滅したケースが最も多く、全体の46.3%を占めた。東北(新潟県を含む)では、東日本大震災の津波被害による住民の分散転居で消滅する例が目立っている。

地域別にみると、東北が59集落と最も多かった。うち26集落を津波被災地が占めている。次いで九州29集落、四国27集落、中国25集落。いずれも山間部を中心に人口減少が著しく、限界集落を多く抱えている。

前回調査と比較可能な6万4130集落のうち、人口減少率が20%を超えたのは、13.7%に当たる8780集落。地域別にみると、北海道と四国の減少が特に目立った。逆に人口が増えたのは、13.6%に当たる8649集落にとどまっている。

市町村が「今後、消滅の可能性がある」と回答したのは、全体の4.9%に当たる3126集落を数えた。集落機能が低下し、維持困難な状況に陥っている消滅予備軍も、全体の4.4%に該当する2794集落に上っている。

限界集落は1万4375に達し、全体の22.4%を占めた。前回調査では1万91集落、15.6%だっただけに、拡大が続いている。地域で問題になっている事例としては、空き家の増加(82.9%)、商店やスーパーの閉鎖(64.0%)、耕作放棄地の増大(71.6%)などが挙がった。

国交省総合計画課は「過疎地域の人口減少は加速しているわけではないが、減速もしていない。人口減少と高齢化の進行が綿々と続き、地域の苦境が増大している」と分析している。

■四国は限界集落が全体の33.8%に

このうち、特に過疎地域の共同体維持が困難になっているのが四国だ。前回調査と比較可能な7216集落のうち、限界集落が全体の33.8%に当たる2426集落を数えた。限界集落数は中国の3829、九州の3045に次ぐが、集落全体に占める割合は全国の地区別で最も高く、前回調査を9.6ポイント上回った。

全員が65歳以上の集落も162あり、5年前より36集落増えた。集落全体に占める割合も1.7%から2.3%に上昇している。全員が65歳以上の集落数では中国の217が最も多いが、集落全体に占める割合は四国が最も高かった。

徳島県西部の三好市では、池田町馬路地区で1集落が消滅した。前回調査までは75歳以上の高齢者2人が居住していたが、他地区へ移っている。

馬路地区は三好市の中心部から愛媛県境へ向かう途中にある山間の地域で、三好市中心部にある中核病院の県立三好病院まで車で30~40分かかる。公共交通機関が乏しく、車に乗れないと病院通いしにくい点が、高齢者の悩みの種になっていたという。

三好市地方創生推進課は「サテライトオフィスを5社誘致するなど人口減少対策に力を入れてきたが、限界集落を存続させるのは難しい」と対応に頭を痛めている様子だ。

■住民が行政サービスを担う地域も登場

集落維持に力を注ぐのは、三好市以外の自治体も同じだが、人口減少が続いて財政に響くようになれば、行政サービスを限界集落まで行き渡らせるのが困難になる。そこで、住民の行政参加で苦境を乗り切ろうとする自治体も出てきた。

島根県東部の雲南市では、市内の地区ごとに住民の自治組織を設け、国からの借入金で住民組織が行政サービスを担当している。厳しい山間部の鍋山地区では10年ほど前から、60代の住民7人が400世帯の水道検診を受け持ちながら、高齢者の見守りサービスを進めている。

雲南市は2005年に財政非常事態を宣言した苦しい懐具合だけに、窮余の策として打ち出したのがこの施策だ。しかし、見回る側の高齢者も年齢を重ね、いつまで継続できるか分からない状況に陥っている。雲南市政策推進課は「集落維持のため行政にできることにも限界がある」と厳しい口調を隠さない。

長野県南部の下條村は1992年度から道路の舗装など軽易な土木作業を住民の手で進めている。健全財政で「奇跡の村」と呼ばれている自治体だが、それを実現するために早くから予算節約につながる地道な努力を続けてきたわけだ。

下條村総務課は「今は年間ざっと500万円ほどの事業を住民に任せている。長くこの事業を続けることで住民相互の交流が深まり、村への愛着を持ってくれているようだ」と打ち明ける。

もはや自治体単独の力で限界集落の維持は難しい。かといって、東京一極集中を食い止められない中、国にも有効な策は見当たらない。高齢者だけが取り残された限界集落は、消滅のときを待つしかないのだろうか。


高田泰 政治ジャーナリスト この筆者の記事一覧 https://zuuonline.com/archives/author/takadatai
関西学院大卒。地方新聞社で文化部、社会部、政経部記者を歴任したあと、編集委員として年間企画記事、子供新聞などを担当。2015年に独立し、フリージャーナリストとしてウェブニュースサイトなどで執筆中。マンション管理士としても活動している。

最終更新:9/30(金) 10:10

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