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良好な雇用環境に支えられ、物価下落圧力はピークアウトは近い

ZUU online 9/30(金) 11:50配信

8月のコア消費者物価指数(除く生鮮食品)は、前年同月比-0.5%(コンセンサス-0.4%程度)と、6ヶ月連続のマイナスとなり、7月から変化はなかった。日銀の2%の物価上昇目標からは程遠い状況にある。

■インフレ期待後退は、原油価格のせいだけじゃない

日銀は、インフレ期待を2%程度へ持ち上げるリアンカリングの途上で、原油価格の大きな下落が起き、外的なショックに対する頑健性がまだ低いため、インフレ期待が後退してしまったことを指摘してきた。しかし、コアコア消費者物価指数(除く食料・エネルギー)も上昇幅が急速に縮小している。8月のコアコア消費者物価指数は前年同月比+0.2%(7月同+0.3%)と、昨年9月の同+0.9%から弱含んでいる。

原油価格の下落だけに原因を求めるのは限界があり、9月21日の金融政策決定会合でのこれまでの政策の総括では、原油価格の下落に加えて、2014年の消費税率引き上げ後の個人消費を中心とする需要の弱さ、そして2015年夏以降の新興国経済の減速とそのもとでの国際金融市場の不安定な動きを原因に付け加えられた。

■原油価格持ち直しと財政政策緩和への転換

一方、過去とは違い現在は、原油価格が持ち直してきていることに加え、政府は財政政策を引き締めから緩和に転じ、グローバルな景気・マーケット動向もG20などで合意した各国の総合的な政策対応などにより徐々に安定し、原因であったこれらの方向感は逆になるとみられる。更に、失業率が3%程度まで低下し、労働需給はかなりタイトで、人件費の上昇が物価を支える形にもなっている。

2017年初まではコア消費者物価指数の下落は続くが、2017年末には同+0.5%を上回るまで回復すると考えられる。9月の東京都区部のコア消費者物価指数は同-0.5%(コンセンサス-0.4%程度)と8月の-0.4%から若干下落幅が拡大した。一方、9月の東京都区部のコアコア消費者物価指数は同-0.1%と、8月の同+0.1%から低下し、2013年10月以来はじめて下落してしまった。まだ原油価格の下落の影響が残る10-12月期に、前年同月比でみた物価下落圧力はピークを迎えると考える。

■2017年にはデフレ完全脱却の動きが再加速

8月の失業率は3.1%(コンセンサス3.0%程度)と、7月の3.0%から若干上昇した。強い人手不足を感じている、企業の採用活動は新年度入り後もかなり強く、女性や高齢者の労働市場への参加による労働力人口の増加を吸収し、雇用はしっかり増加してきた。失業率は2月の3.3%から急ピッチで低下してきた。この間の労働力人口は0.9%、就業者も1.0%増加している。企業の採用活動の強さは続いているが、8月は台風などの天候不順もあり、雇用環境の改善は小休止となるだろう。

8月の有効求人倍率は1.37倍と7月から変化はなく、1991年8月以来の高水準を維持すると考える。2月の1.28倍からは急ピッチで上昇してきた。この間の求人数は2.4%増加しているが、求職者は3.9%減少している。企業の雇用者の獲得が徐々に難しくなってきているようだ。構造的に3%台より下には失業率は下がらないという意見もみられるが、財やサービスを求めた行列が多くみられるわけでもなく、限界点は3%よりかなり下にあると考えられる。2017年には失業率は3%を明確に下回り、総賃金の強い拡大がデフレ完全脱却への動きを再加速させていくと考える。

■追加緩和は焦らずに、日本経済持ち直しへ?

8月の鉱工業生産指数は前月比+1.5%(コンセンサス+0.5%程度)となった。5月は同-2.6%と、ゴールデンウィークの日並びがよく、工場が長期休暇で操業停止になったところが多かったとみられ、かなり弱かった。6月にはその反動で同+2.3%と上振れた。しかし、6月の英国のEU離脱問題での混乱があり、生産者の先行きへの不透明感が強くなり、在庫の増加に対する警戒感もあり、7月は同-0.4%と再びマイナスとなった。

在庫が抑制気味の中で、オリンピックに向けた耐久消費財の出荷の増加、そして消費・輸出ともに、底割れは回避した後、横ばいの動きになり、持ち直しに動こうとしていることが確認できる。8月は台風の影響により出荷・生産が一部滞ったとみられるが、再びプラスの結果となった。ただ、同+4.1%とかなり強い経済産業省の予測指数は大幅に下回っている。生産は、グローバルな景気・マーケットはまだ不安定であり、円高も進行してしまい、持ち直しのきっかけをまだつかめないでいた。

しかし、9月の予測指数は同―0.7%から+2.2%へ上方修正され、10月も同+1.2%と堅調である。経済産業省の生産の判断は、「一進一退だが一部に持ち直し」から「緩やかな持ち直しの動き」へ上方修正された。生産に先行する半導体等を含めた生産財の8月の生産の前年同月比が+3.9%(7月は-5.2%)と昨年11月以来のプラスに転じた。

政府は大規模な経済対策を決定し、秋から徐々にその効果が内需に現れてくるだろう。グローバルな景気・マーケットの不安定感を各国の政策対応で乗り越え、先進国の堅調な成長がなんとか持続している間に、その好影響が波及して新興国が減速した状態から脱していくとみられる。日本の輸出・生産の基調は強さはないが緩やかな持ち直しへ改善していくとみられ、循環的な景気回復力はより確かなものになってくるだろう。日銀が目先、追加金融緩和を焦るような状態ではなさそうだ。

会田卓司(あいだ・たくじ)
ソシエテ・ジェネラル証券株式会社 調査部 チーフエコノミスト

最終更新:9/30(金) 11:50

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