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清水翔太 音楽への愛を胸に、過去を脱却し、力強い一歩を踏み出した『PROUD』ツアー/レポート

エキサイトミュージック 9/30(金) 23:15配信

 
■清水翔太/【清水翔太LIVE TOUR 2016 “PROUD”】ライブレポート
2016.09.09(FRI) at 日本武道館
(※画像6点)

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「何度音楽を傷つけても、裏切っても、音楽と向き合ってここまでやってきた」

清水翔太が、9月26日(月)、『清水翔太LIVE TOUR 2016 “PROUD”』の千秋楽を地元・大阪城ホールで迎えた。初の日本武道館2daysを含む本ツアーは、今年3月に発表したアルバム『PROUD』を引っさげて、ライブハウス、ホール、アリーナと順に規模を拡大して開催。そのセミファイナルとなった日本武道館公演2日目(9月9日)を観たのだが、そこには初めての試みに積極果敢に挑戦し、新しい地平を開拓しようとする彼の姿があった。

とにかく今回のライブはセットリストの趣向がこれまでとガラリと違った。いちばんの大きな変化はバラードを激減させてミドルナンバーを増量させたこと。今回は最新アルバム『PROUD』の収録曲を全曲披露するメニューになっていて、そもそもツアーでアルバム全曲を披露すること自体が初の試みだったのだが、『PROUD』という作品は完全にヒップホップ寄りのサウンドプロダクションで制作されているためビートが効いていてリズムを感じることができるし、わかりやすくいえばミドルテンポの楽曲でも「乗って」楽しむことができる。

たとえば1曲目の「PROUD」もミドルテンポのヒップホップチューンだが、CD以上にビートを強調したバンドアレンジで披露。観客はヒップホップのライブでよく見かけるような手を挙げて前後に揺らす動きでビートに乗り、途中の「Hey! Hey!」という合いの手を大きな声でレスポンスし、大いに盛り上がった。

アコースティックギターと鍵盤だけで再現した「N.E.E.D」や、本人が客席に降りて直接手を取りステージに連れてきた女性客ひとりに向けて歌った「花束のかわりにメロディーを」はテンポが遅い曲だが、前者はラップが中心だからリズミカルだし、後者はメロディー自体が跳ねたグルーヴを内包しているため、自然と体が横に揺れるような感覚を覚える。

また、青山テルマとSALUをスペシャルゲストに迎えて披露された「MONEY」もゆったりとした幻想的なナンバーながら重厚なビートが響く曲。「天国にいる愛犬のトトに向けて書いた曲です。この曲を大切な存在を失ったすべての人たちに送ります」と前置きして本編の最後に歌われた「Damage」もスロウテンポのバラードではあるが、ビートを倍速に取るとバウンシーに感じられる作りになっている。つまり、今回の演目には、しんみり聞かせるようなしっとりバラードはナシ。それゆえライブ全体が、途中で止むことのない大きなグルーヴを生み出していた。

さらに今回はデビュー以来ずっと歌い続けてきた、清水翔太の代名詞とでも言うべき人気曲「HOME」を封印。ファイナルの大阪城ホール公演では地元開催ということもあってサプライズで披露されたが、昨年のツアーでも一昨年のツアーでも、アンコールの最後に歌われライブを締めてきたこの曲に頼ることなくライブをつくりあげた。

本当は、この日のMCでも言っていたが、もうひとつの代表曲「君が好き」もセットリストから外そうとしていたそう。とはいえ、その曲もこれまでとは趣向を変え、ライブの序盤に早々と披露。予想外の展開に、会場にはライブのクライマックスかと思うほどの歓声や嬌声がどよめき渡り、結果それがライブ全体の流れに良いダイナミクスをもたらしていた。

また、翔太自身がピアノやギターを演奏しなかったことも初めて。楽器を演奏するとどうしても動きが制限されるが、それがないため全体的に動きや賑やかさのあるステージになっていた。ライブ後半のラストスパートを盛り上げたトロピカルハウス調のナンバー「sonomama」で、ダンサーと一緒に軽快な足捌きを見せたシーンが特に印象的だが、今回はダンサーとステップを揃えて踊る曲が過去最高に多く、躍動感が向上。高揚感が途切れない、ジョイフルなライブになっていた。

日本武道館2daysの初日に続き、この日も10月5日に発売する新曲「My Boo」を披露。その曲をパフォーマンスする前のMCでは、「『PROUD』は攻めた内容だから今回のライブもすごく不安だった」と胸中を打ち明け、それを経てどういう新曲を作るべきか悩んだと吐露。

そしてアンコールのラスト「キミノセカイヘ」の前には、改めて『PROUD』について、「日本の音楽シーンで、こんなアルバム出せないんだって。だってCD売りたいもん。レコード会社さんだって、アーティストさんだって売らなきゃ食えないもん。でも、俺の才能とかやり方を信じてくれて、尖ったことをさせてくれた」と切り出し、「でもみんなが愛してくれるおかげで、少しずつ少しずつ(やれる)音楽が変わっていった。今のこのバランスでできてるのって俺しかいないと思う。(自分のような音楽性で武道館という舞台に立つことを)勝手に使命だと感じてる」と語った翔太。

そして「『俺、これで合ってるのかな』『俺がやるべきことってこれなのかな?』って9年間ずっと迷ってきた」と、今までの苦悩や葛藤も赤裸々に激白。「でも、自分を信じようって。どんなに心が折れても、次の日また頑張ろうっていう気持ちで音楽に向き合えるのは、今日みたいに、みんながクソでかい声で俺の名前を呼んでくれる日があるからなんだ」と感謝を伝え、さらにこう続けた。

「(『PROUD』を)いいじゃんって聞いてくれる人は今の音楽シーンを考えるとそう多くはないと思う。でも、武道館がこんなにたくさんの人で埋まってる。今を支えてくれてるんだよ、みんなが。プロになって音楽を裏切る行為もたくさんあった。本当は自分はこういうことをしたいけど、いろんな人のおかげでCDが出せるから、周りの人の言うことを聞くとか、いろんな瞬間があった。でも、好きなんだよ、音楽が。だから乗り越えてきた。何度音楽を傷つけても、裏切っても、音楽と向き合ってここまでやってきた。みんながいてくれることが本当に意味のあること。みんなに伝えなきゃ意味がないと今も思ってる。音楽つくるしかできないんだもん、俺は。だから、本当に心から感謝してます。だから、俺の願いはひとつだけ。この一番大切なとき、このいちばん苦しいときに支えてくれてる今日来てくれてるみんなと、また会いたい」

10分以上に渡り、ひと言ひと言を噛みしめながら語り、武道館に集まった1万人の心を激しく打ったこのMC。翔太の熱い想いと真摯な姿勢に、MCが終わると会場からは万雷の拍手が起こった。ちなみにこの日の公演は映像収録されていたので、ぜひともこの日のMCはノーカットで映像化してもらいたい。

とにもかくにも、異例尽くしと言っても過言ではないほどの新しいスタイルでライブに臨み、今の清水翔太の真髄をつまびらかにし、これから始まる清水翔太の世界を垣間見せた今回のツアー。この成功はきっと彼の誇りに代わるだろうし、2年後に迫ったデビュー10周年に向けて、ここから翔太は大きな飛躍を見せるはず。音楽への愛を胸に、勇気を出して過去を脱却し、日本の音楽シーンで未開の地を切り拓くための力強い一歩を踏み出した清水翔太に大きな拍手を送りたい。
(取材・文/猪又 孝[Do The Monkey])

最終更新:10/1(土) 23:15

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