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“男性の職場”で女性は活躍できるのか? 「女性が強い会社ランキング」1位企業が実践する働き方

ITmedia ビジネスオンライン 9/30(金) 11:52配信

 女性活躍推進法が施行され、「女性活用」が多くの企業にとっての課題になっている。女性比率15%のゲーム業界が頭を悩ましている。どうすれば女性が働きやすくなるのか、どこに注力すれば女性が働き続けられるのか──。

【大ヒットゲーム「ダウト」などを手掛けるボルテージ】

 他業界にも共通する悩みとその解決法を、女性スタッフが多いボルテージの東奈々子副会長が「東京ゲームショウ2016」で語った。課題は「長時間労働」と「キャリアモデル」にあるという。

●「女性が強い会社ランキング」1位のボルテージ

 ボルテージは1999年に創業したゲーム会社。2010年に東証マザーズにIPO(新規上場)を果たし、翌年には東証1部に上場した。14年には売上高100億円を突破し、今も成長を続けている。

 メインビジネスは女性向けの「恋愛ドラマアプリ」。「働く女性がストレスを抱える社会の中で、寝る前に女心を取り戻してもらう」をコンセプトに、これまでに100タイトルほどをリリース。イケメン彼氏のうそを暴く『ダウト』や戦国武将と恋に落ちる『天下統一恋の乱』などの大ヒットタイトルも生まれ、累計利用者は世界5000万人に上る。近年では、北米向けの恋愛ドラマアプリや、女性だけでなく男性もターゲットにしたサスペンスアプリもリリースし、ビジネスの軸を増やすべく奮闘している。

 会長兼社長の津谷祐司さんと、副会長の東さんの2人で創業した同社は、今や社員数459人に成長。本社は東京・恵比寿に構え、サテライトオフィス、名古屋スタジオ、サンフランシスコスタジオと計4つの拠点を持つ。

 まだまだ“男性の職場”であるゲーム業界に属する同社だが、社員の約60%が女性だという。管理職に占める女性の割合も36%と、日本の平均である11.6%を大きく上回る。さまざまな取り組みを評価され、15年の「女性が強い会社ランキング」(Vorkers)で1位を獲得した。

●課題は「長時間労働」と「キャリアモデル」

 女性社員の活躍の場を作るためにはどうすればいいか。東さんはゲーム業界について2つの課題を提示する。それは「長時間労働」と「キャリアモデル」だ。

 ゲーム業界は、帰宅時間が通常時で平均午後8時、繁忙期だと午後10時半を超えるという環境だ。労働環境も二極化しており、従業員数300人以下の企業は特に厳しい。長時間労働が前提になると、子育て中の社員は働きづらく、評価もされにくくなる。

 女性の30~40代のロールモデルが存在せず、数年後のキャリアを思い描けないことも大きな問題だ。育休後の復帰社員が少なかったり、管理職が少なかったりすると、その会社で働くモチベーションを大きく下げてしまう。

●2つの課題をいかにして解決するか?

 同社はこれら2つの課題をいかにして克服しようとしているのか。

 長時間労働に対する解消策として掲げるのは、フレックス勤務だ。単純に「残業ゼロ」といった目標を定めると、「プライベートよりも仕事を優先してバリバリ働きたい」といった社員の気持ちを削ぐことにもなりうる。ある程度コアタイムは決めつつ、子育て中であれば朝型に、プライベートよりも仕事をしたい期間であれば夜型に――と、自身で働き方の選択ができるようにする。

 同時に、米サンフランシスコスタジオ立ち上げ時のノウハウを生かし、「量より質」「ツールの活用」「テレワーク」などの考え方の浸透も進める。

 キャリアモデルについては、まず「仕事と出産・育児の両立は不可能なのではないか」という不安を解消する。

 「世の中の制度は女性に対応できていない。子育て社員への『優しさの勘違い』にならない制度を作っていく必要がある」(東さん)

 同社で実際に活用され、好評なのは「早期復帰支援金」制度。育児休業は基本的に12カ月だが、「早く仕事に戻りたい」という意見が多数寄せられていたという。そこで、育児休業給付がなくなる分、10カ月未満で復帰した場合は月給2カ月分の支援金を支給するようにしたところ、利用者が相次いだ。

 さらに、「サブステ制度(役職代理)」も取り入れる。管理職が育児や介護などで休業する場合、単純に部下をそのポストに昇進させてしまうと、休業から復帰した際に“戻ってくる場所”がなくなってしまうという悩みもある。そこで、代理の担当者を立てるサブステ制度を活用することで、有能な管理職も安心して休みを取ることができる上、代理の担当者も短期間リーダーの経験を積むこともできるという。

●女性部下のモチベーションを上げるためには?

 「頑張っている優秀な女性社員がモチベーション低下で辞めてしまう」という悩みを持つ企業は多い。そのための対応策にはどのようなものがあるだろうか。

 「男性社会において作られた“出世”のイメージを変えることが必要」(東さん)

 多くの企業は、給料のモデルを「基本給+役職手当」で作っている。「女性管理職が社内で少ない」「自分より上の世代がまだ管理職になっておらず“上が詰まっている”ように見える」「育児や介護などで、管理職を目指すことが難しい」という思いを抱いている女性社員は、その企業内で昇給(出世)することを諦め、場合によっては転職・退職してしまう。

 そうした事態を防ぐために、昇給の仕組みを2軸にする。「役職手当(管理職になると付く)」と「職能手当(スキルが伸びると付く)」などを用意する。「管理職になれなくても、エキスパートになることで昇給できる」というルートを用意すれば、モチベーションは下がりにくい。

 仕組みだけではなく、上司の心構えも重要だ。特に男性上司と女性部下では、コミュニケーション手法の違いが問題になることもある。

 「女性社員に対しては、より注意深く話を聞くことが必要。話を聞いて、解決が難しいようなら、女性社員同士で場をもうけることも効果的。意識して声をかけ、『あなたのことをちゃんと見ているよ』というメッセージを伝えるべき」(東さん)

 特に全力投球型の女性社員は、産休社員のサポートなどで「割りをくっている」という気持ちを抱いていることもある。その頑張りを評価しないと、大きな不満につながってしまう。

●男性社会で長く働く3つのポイント

 最後に東さんは、女性に対して「男性社会で長く働くために必要な3つのポイント」を語った。

・「仕事に対するゲーム感覚」「人間関係の悩みから一歩引く」「手柄を自分のものにする」は参考にする。逆に、「プライベートを全て仕事にささげ、長時間労働をしがち」な部分は参考にしない
・職能か、もしくはユーザーのスペシャリストになることを目指すべきだ。「誰よりもユーザーのことを考え、ユーザーを知っていて、数字やデータで語れる」という姿勢で仕事をするのがポイント
・会議に出席して『私は数字はちょっとよく分からない』と言っていると評価にはつながらない。ゲーム業界は特に、KPIやROIなど、結果が数字として出やすい。日ごろから感覚を数字で語るクセをつけよう

最終更新:9/30(金) 11:52

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