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本当の「どこでも働ける」とは?――野尻湖で働くLIG 中田泰雄さんに、Iターンの理想と現実を聞いてみた

@IT 9/30(金) 13:00配信

 こんにちは。「しごとのみらい」の竹内義晴です。

 長野のU&Iターン事情をお届けする本連載、第1回「都会に疲れたら田舎においで!――長野で働くエンジニアの給与、残業時間、求人数」は、長野の全体像やエンジニアの仕事事情を紹介しました。今回は実際にIターンして長野で働いているエンジニアにお話を伺い、U&Iターンの「理想と現実」に迫ります。

【LIG 野尻湖オフィスから見える景色など、その他の画像】

 お話を伺ったのは、東京から長野にIターンした中田泰雄さん。中田さんは、長野県上水内郡信濃町「野尻湖」にある、インターネット業界で有名な「LIG(リグ)」のリモートオフィスで働いています。

 インタビューの前に、野尻湖について簡単に紹介しましょう。

 野尻湖は、長野県北部にある湖です。豊かな自然と、バス釣りやワカサギ釣り、水上スキーやウェイクボード、カヌーなどのアクティビティーで知られています。ナウマンゾウの化石が発掘された湖としても有名です。

 野尻湖は、筆者の住まいから車で10分ほど。良くも悪くも「どんなところか」をよく知っています。それだけに、LIGのリモートオフィスが野尻湖にあることを知ったときは、「の、野尻湖に?」と思わず声が漏れたほど驚きました。

 中田さんは野尻湖で、どんな働き方をしているのでしょうか。

●長野での仕事

竹内 LIGがどんなサービスを提供している会社か紹介してください。

中田泰雄さん(以降、中田さん) LIGは、主にWebに関するサービスを提供している会社です。コーポレートサイトやメディア構築の受託開発や運用支援、LIGブログという自社メディアを通した広報支援、自社で開発したWebサービスを提供しています。

竹内 本社が東京にありながら、野尻湖オフィスをオープンすることになったきっかけを教えていただけますか?

中田さん 弊社の代表が野尻湖の出身だったのがきっかけです。代表の実家を改装して、2014年にゲストハウス「LAMP」をオープンしました。その後、地域の人たちと顔見知りになり、ビジネスの地盤も作れたので、「次は、Webの仕事をリモートワークできる環境を作ろう」と、野尻湖オフィスを作りました。僕は、2015年12月から野尻湖オフィスで働いています。

○リモートオフィス環境

竹内 受託開発のお客さんは、どこの地域が多いんですか?

中田さん 9割以上は東京です。

竹内 長野よりも本社の仕事が多いということですね。

中田さん そうですね。長野では、信濃町へ移住した人やイベントを紹介する「ありえない、いなかまち」という移住者支援サイトを運営しています。

竹内 本社とリモートオフィス間で不自由なく仕事をしていくために、どのような環境の工夫をしていますか?

中田さん テキストベースのやりとりは「ChatWork」です。また「Skype」は常時つながっています。東京のメンバーと話したいことがあれば、Skypeに向かって「おーい」と話し掛けます。

竹内 「おーい」と(笑)。普通のオフィスとあまり変わらないですね。とはいえ、不自由に感じることはありませんか?

中田さん すぐに話したいのに話せないときぐらいで、ほとんどありません。あらかじめ打ち合わせの時間を決めてSkypeでつなぐこともあります。

竹内 野尻湖オフィスの良さはどんなところですか?

中田さん 良い環境で働けることです。景色は良いし空気もきれい。通勤ラッシュも皆無ですし。私はもともと人がゴチャゴチャしていないところが好きなので、それもいいです。

○移住のきっかけ

竹内 長野に移住しようと思ったきっかけは何ですか?

中田さん 「Wantedly」で「長野でオフィスを立ち上げる。家はシェアハウスで、家のうらには畑があって……」という記事を見て、「楽しそうだな」と思って求人に申し込みました。

竹内 「楽しそう」が動機なんですね。今までは東京で働いていらっしゃったんですよね、東京が嫌で移住されたんですか?

中田さん 東京が嫌……というわけではありません。「景色や空気がきれいなところで働いてみたい」というのが、移住の動機です。もともとアウトドアが好きだったのもあります。

竹内 「景色や空気がきれいなところで働いてみたい」と思う人はたくさんいるけれども、それを実際に選ぶ人は少ないように思います。中田さんがそれを選べた理由は何でしょう?

中田さん 結婚していないので、「行きたい」という気持ちだけで動けたことですね。そして「地方の環境に興味があるか」ではないでしょうか。「たまに行くのはいいけれど、ずっとは嫌」という人もいるでしょうし。

竹内 「移住する」ためには、会社を辞めたり、引っ越ししたりと、いろんなものを「手放す」必要がありますよね。不安はありませんでしたか?

中田さん それほど深く考えていませんでした。それよりも、面接で話を聞いたら「楽しそう」でしたし、面接も通ったので……「じゃあ」という感じで。面接が受かっていなければ移住していなかったです。

●長野のライフスタイル

竹内 長野は期待通りの場所でしたか?

中田さん もともと、特別な「何か」を期待していたわけではないので、「まぁ、こんな感じ」という印象です。また、移住したからといって、自分が変わるとも思っていなかったので。

竹内 長野、特に信濃町は雪が深いところです。雪に対する印象はどうでしたか?

中田さん 雪の多さには驚きましたけれど、2015~2016年の冬は雪が少なかったので、脅されていたほどではありませんでした。本当の厳しさは、まだ知らないのかもしれません。

竹内 除雪は大変ではありませんでしたか?

中田さん 車が出せればいいぐらいなので、それほど大変には感じませんでした。

竹内 通勤は車ですか? 交通の面で不便に感じることはありますか?

中田さん 車です。歩いても5分ぐらいの距離です。必要がなければあまり出かけないので、それほど不便には感じていないですね。

○同僚とのシェアハウス生活

竹内 会社の同僚とシェアハウスに住んでいるとのことですが、24時間会社の人と一緒の生活ってどうですか?

中田さん 部屋が分かれているので、不満を感じることはないです。食事は一緒に食べることもあれば、食べないこともあります。基本は別々です。

竹内 シェアハウスの良いところは何ですか?

中田さん まだ地元の知り合いが少ないので、コミュニケーションをとる相手がいるのが良いです。雪を片付けるのも、1人では大変ですし(笑)。

竹内 会社の人といつも一緒だと、「仕事とプライベートの切り分けが難しいのでは?」と思うのですが、オンとオフの切り分けはどうしているんですか?

中田さん 切り分けは特にしないです。家で仕事をすることもありますし。

竹内 切り分けがないのなら、時間の管理はどうしているのですか? ……残業とか。

中田さん どうしても納期がせまっている時以外は、残業はなるべく行わないようにしています。LIGはチーム単位の独立採算で評価されるので、残業をすると自分たちの目標利益にも影響してしまいます。そのため、プロジェクトの予算範囲内で残業が収まるよう工夫しています。

 チームの雰囲気が自由なので、休憩時間に気分転換でスケボーをしたり、釣りをしたりするメンバーもいます。ある程度自由に自分たちの裁量で働ける分、目標が達成できないと給料にも影響します。そこはシビアに評価されます。

竹内 なるほど、結果重視なんですね。

技術力のブラッシュアップ@地方

竹内 続いて、技術力のブラッシュアップについて伺います。地方のエンジニアから「学ぶ機会が少ない」「東京には、いろんな勉強会があるけれど、地方は少ない」という声をよく聞きますが、どのようにお考えですか?

中田さん 僕、勉強会って勉強している感じがあまりしないんです。

竹内 あー、確かに(笑)。刺激にはなるけれど、「勉強になる」「技術力が身に付く」とは限りませんね。でもエンジニア同士の出会いになるのではないですか?

中田さん LIGでは月に1回、東京と長野をオンラインでつなぎ、ライトニングトークを同時中継する勉強会をやっています。長野市の会場には長野のエンジニアが集まりますし、松本市なども含めればエンジニアのイベントはいろいろありますので、出会いの機会はあります。

竹内 なるほど、作ろうと思えば出会いの機会はあるんですね。技術力のブラッシュアップとして、他に意識していることはありますか?

中田さん 本を読んで新しい知識を身に付けるなど……でしょうか。自社ブログのネタ探しとしても、本は読んでいます。

○休日の過ごし方

竹内 休日は何をしているのですか?

中田さん こちらに友人が遊びに来るときは一緒に出掛けますし、月に1、2回は仕事に合わせて東京に行っています。

竹内 予定が何もないときは? 不便さや退屈さを感じることは?

中田さん 退屈なときはあります。東京だったら、何も予定がない土曜や日曜日でも、新宿や渋谷に出かけてふらっと本屋に入ったりすると、何かしら面白いことがあります。しかし、こちらだとそういうことができません。でも、平日は本当に良いところです。

●「どこでも働けるエンジニア」になろう

竹内 地方で働いてみたいエンジニアにメッセージをお願いします。

中田さん 移住をしてみたかったら、してみたらいいと思います。1、2年働いてみて、もしダメだと思ったら戻ればいいし。「移住」だけを切り取って、重く捉えなくてもいいのかな、と思います。

竹内 もっと気軽でいいと。

中田さん わが社はセブにもオフィスがありますし、東京にもあります。「今月はセブで、来月は東京で……」という働き方が自由にできるチームになっていきたい……という話をよくしています。「どこでも働ける」が実現できたらいいなと思います。

竹内 私が28歳でUターンしたときは、「もう、後戻りできない」というくらい大きな決断でした。けれども、中田さんのお話を伺って、もっと気軽な印象を受けました。「移住」というより「移動」みたいな。

竹内 「どこでも働ける」エンジニアになるために目指しているイメージはありますか?

中田さん エンジニアは「手に職がある仕事」です。手に職があれば、働く場所や会社は自由に選べます。動こうと思ったときに「うちに来てくれ」と言われる人になれたらいいなと思います。

竹内 選ばれるから自由に働ける。そのために、自分を磨く……ということでしょうか。

中田さん そうですね。「出張! どこでもオフィス」のように、「どこでも働けるし、遊べちゃう」を体現できたら、最高です。

●「Life is Good」なエンジニアライフを過ごすために

 中田さんの移住は、「あれこれ考えて……」というよりも、「やりたいのだからやってみる」という、力みのない自然な印象を受けました。

 「どこでも働ける」は、インフラや環境的なことだけではなく、「うちに来てくれ」と言われるような「技術力」や「人としての魅力」も含まれるのではないかと感じました

 「誰もがどこでも働ける環境を選べるわけではないよ」と思う人もいるでしょう。けれども、「どこでも働ける自分になる」という「ビジョン」を持ち、そのための「行動」を起こしていれば、働き方の幅を広げるられることに間違いはなさそうです。

 そうすれば、「Life is Good」なエンジニアライフを過ごせるのではないでしょうか。

最終更新:9/30(金) 13:00

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