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「工場ルポ」〈操業100周年のPPC・佐賀関製錬所〉=世界トップ級のコスト競争力

鉄鋼新聞 9/30(金) 6:00配信

 銅製錬の国内最大手、パンパシフィック・カッパー(PPC)の主力拠点である佐賀関製錬所(大分県)が今月18日、操業開始から100周年を迎えた。電線や伸銅品などさまざまな分野で使われる銅を安定供給しながら発展を続け、現在では世界トップクラスのコスト競争力と年間45万トンの生産能力を誇る日本を代表する製錬所に成長。廃電子基板などから有価金属を回収するリサイクル拠点として資源循環型社会の構築にも貢献している。次の100年に向けて進化を続ける佐賀関製錬所を訪れた。(相楽 孝一)

 佐賀関製錬所は1916年に操業を開始。日本鉱業、日鉱金属、日鉱製錬、PPCと続く歴史の中で常にグループの中核事業所と位置付けられてきた。当初は溶鉱炉1基体制(年産能力8400トン)だったが、70年に自溶炉法を導入。96年には生産量を落とさずに自溶炉を2炉から1炉化する技術革新を成功させ、現在では操業当初から約50倍の生産規模にまで成長した。主力となる銅製品(粗銅、電気銅)のほか、副産物である硫酸やスラグの生産、貴金属やレアメタルの回収も手掛けている。
 原料となる銅精鉱は南米や東南アジア、豪州などから、リサイクル原料は北米や台湾を中心に世界中から受け入れている。佐賀関では5万トン級の大型船が着船可能で、年間100~130隻の船が到着しているという。14年からは同社が出資するチリ・カセロネス銅鉱山で産出された鉱石の受入れも開始しており、原料の安定確保に一役買っている。
 また、鉱石の安定的・効率的な輸送に貢献するのが、JX金属グループが保有する鉱石・硫酸兼用の輸送船「鉱硫船」だ。同船は日本―チリ間の往路は鉱石を運び、復路は硫酸を積むことができる画期的な輸送船。ばら積み船とタンカーで別々に輸送するよりも燃料消費量と排出ガス量を大幅に低減できる。
 船で運ばれた銅精鉱は環境保全に配慮した密閉式のベルトコンベアで貯鉱舎に運ばれ、設定された品位・成分にブレンドされた後、自溶炉に送られる。自溶炉では炉の上部から銅精鉱と常温高酸素空気が一緒に吹き込まれ、酸化反応で銅品位65%程度のマットとスラグに溶解・分離する。佐賀関は出酸能力3万2千N立方メートル/時の酸素プラントを有し、自溶炉1炉当たりの生産能力が世界最大級の高い生産性を誇る。現在は1時間当たり215トンの原料処理が可能だという。
 自溶炉は来年、73年の操業開始以来、初めての煉瓦更新を含む大型更新を実施する。鉱石、リサイクル原料も含めた処理能力を上げるため、炉容量の拡大やボトルネックとなり得る設備の改造など最適なかたちを検討している。
 自溶炉で生成したマットは転炉で銅品位99%の転炉粗銅となる。スラグは練カン炉でさらに銅分を回収した後、セメント向けや土木向けの材料として出荷される。転炉粗銅は精製炉で酸素を除去し、銅品位99・5%の精製粗銅となり、連続式鋳造機で電解用のアノード(1枚372キロ)に鋳造される。アノードは佐賀関と日立精銅工場で電気分解し、99・99%以上の電気銅となる。佐賀関は768槽の電解槽を有し、生産能力は年間23万トン。1槽にアノード50枚、カソード(ステンレス板)49枚を交互に挿入し、直流電流を流すことでアノード中の銅をカソードに電着させる。アノードは18日、カソードは9日周期で引き上げる。アノード1枚当たり2枚の電気銅(1枚150キロ)を生産するかたちだ。
 電気銅は国内外に出荷されるほか、敷地内にある関連会社の日本鋳銅でケーク・ビレット(タフピッチ、リン脱酸、無酸素)に合金・鋳造化して出荷される。主な出荷先は東アジアが全体の6割程度、日本鋳銅向けが3割程度を占める。
 電解工程で発生した殿物からは貴金属やレアメタルなどの有価金属を回収している。佐賀関では金とセレンを製品化し、銀、白金、パラジウム、テルルは半製品の形でJX金属・日立事業所に送られて製品化される。金については現在の月間3トンの生産能力を同4トンに引き上げる能力増強が進められている。
 佐賀関では銅精鉱を年間130万トン程度処理しているが、近年はその品位低下が大きな課題だ。従来は30%を超えていた銅品位が現在は26%程度まで落ちている。このため、同じ量の鉱石を処理しても生産できる銅量は減少する。佐賀関ではこうした銅品位の低下に対応するため、リサイクル原料の積極的な受け入れにも取り組んでいる。現在は年間10万トン程度のリサイクル原料を処理しているが、今後もさらなる増処理を図るため、前処理設備などを含めた処理能力の増強なども検討している。
 また、安定操業とコスト競争力強化に向けた設備のIoT化やAI(人口知能)の活用などにも積極的に取り組んでいく。第一段階としては熟練したオペレータの経験・ノウハウをデータ化し、誰が操業しても一定の成績が出るような仕組みづくりを進めている。さらに自溶炉をはじめとする大型設備の操業安定化に向けたIoTの活用などその取り組みを段階的に深化させていく考えだ。

最終更新:9/30(金) 6:00

鉄鋼新聞

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