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【インタビュー】『世界一キライなあなたに』原作者&監督、迷いながら選んだラストに自信

cinemacafe.net 10/1(土) 13:00配信

イギリスをはじめ各国で話題を呼び、世界850万部を超えるベストセラーとなった恋愛小説が、満を持して映画化された『世界一キライなあなたに』。原作のジョジョ・モイーズが自ら脚本を手がけるとともに、ロイヤル・ナショナル・シアターやウエストエンドで数多くの作品に携わった演劇界のベテラン演出家、シーア・シェアイックが長編映画の初メガホンをとった。

【画像】エミリア・クラーク&サム・クラフリン

ジョジョによると、小説のタイトルであり、原題の『Me Before You』は、「あなたと出会う前の私」という意味だという。イギリスのレトロな趣のある田舎町に暮らす、ファッションが大好きなルーことルイーザ・クラーク(エミリア・クラーク)と、バイクの事故により車椅子生活を送る元青年実業家ウィル・トレイナー(サム・クラフリン)は、彼女が彼の世話係兼話し相手を務めることになり、出会った。やがて2人はお互いにとって最愛の存在になっていくが、ある日、ルーはウィルの“ある決断”を知ってしまう…。

「撮影のときにスタッフがジョークを言っていたの。『この映画はクリネックスにスポンサーになってもらうべきだ』って。わかるでしょ?」と、いたずらっぽく問いかける原作者のジョジョ。本作は、とにかく泣ける…のに、なぜかその後に、じんわりと温かな気持ちになる不思議な魅力を持っている。

「実は映画の製作段階からすでに私たちは涙していたの。涙なしでは作れない作品だったわ。きっとキャラクターが脚本通りに表現されていれば、いろんな感情があふれ出るはずだし、その延長で笑いや涙も自然と生まれるの。(監督の)シーアは原作になるべく忠実なキャラクターを作ろうと努力してくれていた。だからこそ、映画を見ると自然に涙が出てしまうと思うの」と彼女は語る。

エミリア・クラークが演じた、本作の魅力を牽引する主人公・ルー(ルイーザ)というキャラクター像はどのようにして作られたのだろう?

「私はルイーザのことはごく普通の女の子だと思っているの。ルイーザは真っ直ぐな性格よ。でも、彼女の歩む道には困難がたくさんある。それでも彼女は優しさを忘れず、絶対に意地悪なことは言わないの。両親の教育が良かったのね。でもね、脚本を書いている段階で『汚い言葉を使うかしら? いや、使わないわ。こんなひどいこと言うかしら? いや、言わないわ』といろいろ迷いはあった。人物像はそうやって作り上げていくものだから」と、映画化への苦労に触れる。

さらに続けて、「おそらく特に若い女性は、彼女に共感する部分がたくさんあると思う。20代くらいの女性は『こんなに頑張ってるのに、どうしてうまくいかないのかしら』と思うものだし、そういう自分をルイーザに投影するはずよ。あれくらいの年齢の女性たちは、別に怠けているわけでも、意欲がないわけでもないけれど、思うようにいかなくてフラストレーションがたまるものなのよ」と、多くの女子たちの思いを代弁する。

そんな原作のルイーザが持つイメージは、「ゲーム・オブ・スローンズ」で示される若き女王の姿ともどこか重なり、素顔の明るさとも相まってエミリアにぴったりだった。一方、ウィル役のサムには、『スノーホワイト』や『ハンガー・ゲーム』シリーズなど、これまでの役柄から清廉でたくましい男というイメージとのギャップがあった。

監督のシーアは語る。「エミリアは誰よりも先にスカイプで話した役者だった。だから脚本について話したのはエミリアが女優の中では一番最初だったの。そのときすでに彼女は小説を読んでいて、大好きだと言っていたわ。そのときの会話はすごく弾んだの」。その後もオーディションは続き、最終的には300人以上の女優と会ったという監督。「そのときに一番大切にしていたことは、役者がルイーザとウィルになっているところを想像して、彼らの間に素敵なケミストリーが生まれるかどうか。そうやって候補者を2014年の夏に男女6人にまで絞ったの」という。結果、最後にエミリアとようやく対面した監督は、「ルイーザがいた! ちゃんといるじゃない!」と、当初の直感が合っていたことに自信を覗かせる。

また、ウィル役の候補にも6人の俳優が選ばれたが、「最後にサムと(エミリア)の本読みになって、私の中に電撃が走ったの」と監督。「なかなか言葉では説明できないけれど、まるで現実に生きているルイーザとウィルを目の当たりにしたようだった。オーディションはものすごく長いプロセスだったけれど、2人がいてくれたおかげでキャスティングの決断には全く困らなかったわ」。

さらに、ジョジョも続ける。「私は作家だから演技に関しては詳しくないけれど、そんな私でさえもサムとエミリアの間にあったケミストリーがはっきりと分かった。ウィルとルイーザがスクリーンから飛び出してきたようで涙が出たわ」。「もし、舞台版『Me Before You』を作っていたとしたら、映画とはまったく違うキャスティングをしていたかもしれない」と監督は言う。「けれど、カメラは被写体に魔法をかけるの。サムとエミリアは魔法をかけられたわ。ハッとさせられたの」。

確かに映画を観ているうちに、どんどん2人の関係に引き込まれていく。だが、やがて、ある種の期待や予想を覆す展開が、この物語には訪れる。

原作のジョジョは、「ラストに関して、迷いはあった」と告白する。「私にとっては物語を書くとき、キャラクター作りが一番大変な作業なの。けれどウィルとルイーザに関しては、それがスムーズに進んだ。まるで彼らのすべてが分かっていたみたいに。この物語で真っ先に思いついたのは、車椅子でダンスするシーンだった。そこから彼らがどういう人物なのかを掘り下げていったの。まったく違う境遇にある2人を引き合わせるのは楽しかったし、物語を展開させて行くのも面白かった」。

しかし、「あるとき突然、『もう無理!』と自信をなくしてしまったの。私は普段、読者のためにも物語のラストは語らないように心がけているけれど、この物語を書いている途中にエージェントに電話して、ラストを2つ用意したいと提案したの。読者自身が最終的にどちらか選べるようにするというものだったわ。けれど、エージェントはそのアイデアには感心していなかった。そこで最初に考えていたラストに立ち返ったの。そうして正解だったと思ってるわ。私が選んだラストが、きっとキャラクターの気持ちに忠実だと思ってる。読者や観客の中には、もちろん賛成しない人もいるはずだけど、私にとって大切なのは、ウィルがなぜその決断を下したのか、なのよ」。

観客は、あなたが選んだラストに賛成しないかもしれないと?

「人は自分の主義や経験というフィルターを通して、小説を読んだり映画を観たりすると思うの。小説に関してだけ言うなら、批判的な意見はほとんど聞かなかったわ。正直なところ批判を受ける覚悟を決めていたけれど、幸いそれはなかった。それどころか、四肢麻痺の方や介護士から良い反響をいただいたわ。本の中に出てくる苦労やユーモアは本当にあって、彼らの暮らしを忠実に描いてくれていたって」。

そして映画については、「(サムが演じた)ウィルはアクティブでセクシーな男性だったでしょ。試写を観た女性が泣きながら会場から出てきて『ウィルに惚れた』と言っていることがある。私たちはそれが本当にうれしいし、素敵なことだと思っているの。私たちはちゃんとウィルという人をみんなに見てほしいと思っていたし、女性たちは車椅子ではなく、ちゃんとウィルを見て彼に惚れてしまうの」。

その言葉を受けて、監督は「さっきジョジョが、小説には2つラストを用意しようと思ったと言っていたけれど、映画には1つしかラストはなかった」と補足する。「きっとジョジョは小説を書いているときは、ものすごく感情的になっていたはずだから、ラストを2つ用意したかったと思うけれど、映画を作るときには、スタジオも、私も、ジョジョもみんながラストは、あの1つだけという意見で一致していたわ」と語っている。

なお、小説「Me Before You」は続編「After You」がすでに海外で出版されているが、もし本作がヒットしたら、続編の映画化の可能性もありそう?

「ジョジョが続編があると教えてくれたとき、正直『知りたくない!』と思った。そして、映画がちゃんと公開されるまでは続編は読まないと決めたの」と監督。「まったく違う物語だから、私はまだそこに足を踏み入れたくないと思っているの」。

そしてジョジョは、「もし、いまの質問がシーアとサムとエミリアで一緒に映画を作りたいかという意図なら、もちろんまた一緒にやりたいわ。現場は楽しかったし、役者たちは臨機応変に頑張ってくれたから。スタッフやキャストはみんな自分のエゴを出さず、本当に作品のことを考えて行動していたわ。前向きで素晴らしいチームだった」と明かし、称賛を贈る。

最愛の人に出会い、これまでの人生が一変する物語。その物語は、まだまだ続いていくのかもしれない。

最終更新:10/1(土) 13:00

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