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東京五輪で「ラブホ」が活躍する理由

ZUU online 10/1(土) 10:40配信

中国人観光客による「爆買い」がめっきり鳴りをひそめた。東京中心部の百貨店が、中国人向けに改装した売り場を日本人向けに改装し直したり、高級化粧品売り場をカウンセリング中心の売り方に改めたりと、インバウンド消費の動きに翻弄されているのが、日本の小売業の現状だ。

■外国人観光客のトレンドの変化 「消費から体験」へ

最近までの、高品質な日本の製品を日本で買う、といった消費一辺倒でハイテンションな観光から、日本の「気候」「自然」「文化」「食」に触れる、落ち着いた「体験型」の観光に移行しつつあるのが、海外からのインバウンド観光客のトレンドとなっている。

日本政府観光局(JNTO)が最近発表した2016年7月の訪日観光客数(推計)は、約230万人と、去年7月と比較して19.7%の伸び率を示している。また2016年1月から7月までの累計訪日観光客数は、約1400万人と去年の同じ時期と比べ26.7%と大幅に増えている。

この分析からわかる通り、「爆買い」という日本にとって直接的に経済効果の高い観光目的でなく、日本が持っている本質に触れる外国人観光客は、確実に増えているのだ。

■訪日観光客で注目の「ラブホ活用」

政府としても、訪日観光客を増やすことは、重要施策の一つである。今年3月に開催された「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」では、訪日外国人観光客数を2020年に4千万人、2030年には6千万人とする目標を打ち出したのだ。安倍首相が掲げる経済改革の目標であるGDP600兆円を達成するため、インバウンドの観光を起爆剤にしたい目論見だ。

その一方、インバウンドの訪日観光客が増えて問題になるのが宿泊場所の不足だ。ホテル業界は中長期的に見て増え続ける観光客をさばくため、ホテルの新築や増床など打てる手段はとってきたが、実際のところ、訪日観光客の増加割合に対して客室増加が追いついていないのが現状だ。

そこで驚くことに宿泊場所不足に一役買うのが「ラブホ」なのだ。

民泊とは、空き部屋を活用したい人たちと安く宿泊したい人たちを、Airbnbに代表されるマッチングサイトを通じ、宿泊場所を提供することだ。単に観光目的の旅行客だけでなく、出張時にも民泊を使うケースも徐々に増えている。日本においては旅館業法との兼ね合いもあり、法規制の面でグレーの部分も多いが、規制緩和の流れの中で、認知度が急上昇している。

政府は2020年東京五輪、パラリンピックに向け、外国人観光客の増加によっておこるホテル不足の解消を目指し、稼働率に比較的余裕があるラブホテルの運営者がこれを観光客向けの一般ホテルに改装する場合、条件付きながら資金面で後押しする方針を固めたと公表した。

新たなホテル建設を待つより、既存の建物を活用した方が手っ取り早く、費用対効果が大きくなる点が、大きなメリットだからだ。一般住宅でも、新築から中古への流れができつつある今、既存の建物を活用する柔軟な発想で、今後も増え続けることが予想される訪日観光客に対応することは、特別突飛な発想でもない。

■日本の国際化に一役買うか? ソフト面での充実も必要

改装に当たって、特に問題になるのがその費用をどのように調達するか。それに関し厚生労働省は今年4月1日、ラブホテル事業者が一般ホテルへ改装するための融資を受けやすくなるよう、政府系金融機関である日本政策金融公庫に対し、「資金に関する相談に特に配慮するよう」通達を出した。

従来、政府系金融機関は公序良俗に反する業者は融資対象外だったのだが、ラブホテルから一般ホテルへの改装という条件なら、通常のホテルへの融資に該当する(厚労省)としているのだ。

ラブホテルは風営法により18歳未満の利用が禁じられているので、そのままの設備では、ファミリーが宿泊することは不可能。よって一般のホテルとして運営するには旅館業法による営業許可が必要となる。業法に沿った営業をするためには、外の看板を撤去する、ダブルベッドをツインベッドへ変えるなどの客室内外の改装や飲食物を提供する設備のほか、宿泊客と顔を合わせる対面式のフロントやロビーを作る必要が出てくる。

全国防犯協会連合会の2014年のデータのよると、ラブホテルは全国に約6千店あり、平均稼働率は平日で約4割程度しか無いという。その一方、国土交通省観光庁が発表した、今年6月のビジネスホテルとシティホテルの平均稼働率(速報値)はそれぞれ73%、78%と高水準が続いている。

都道府県別のラブホテルの数は、東京都、北海道、大阪府が約300件、福岡県が約280件、千葉県、静岡県が約230件など、やはり大都市近郊に数は多い。これらを一般ホテルに改装し、増え続ける訪日外国人旅行者に対応することは、現実に即した一案だと思える。

しかし、ハード面での改装だけでなく、ソフト面の充実を図る必要は言うまでもない。接客という考えが、ほとんどないのがラブホテル。「おもてなし」の心を持ったうえで、生き残りをかけて一般ホテルに改装し、日本の国際化に一役買うのもよいのではないだろうか。

マネーデザイン(http://moneydesign.co.jp/)代表取締役社長 中村伸一
学習院大学卒業後、KPMG、スタンダードチャータード銀行、日興シティグループ証券、メリルリンチ証券など外資系金融機関で勤務後、2014年独立し、FP会社を設立。不動産、生命保険、資産運用(IFA)を中心に個人、法人顧客に対し事業展開している。日本人の金融リテラシーの向上が日本経済の発展につながると信じ、マネーに関する情報を積極的に発信。

最終更新:10/1(土) 10:40

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