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無駄じゃない? 小さな製品のパッケージが巨大になる理由

ITmedia PC USER 10/1(土) 6:25配信

連載:牧ノブユキのワークアラウンド(PC周辺機器やアクセサリー業界の裏話をお届けします)

理由の1つは万引き対策

 外付けのHDDやUSBメモリといったPC周辺機器は、現状の規格の範囲ではこれ以上は不可能なほど本体サイズの小型化が進み、かつての製品に見られたゴツいボディーの面影は全くなくなった。また拡張カード類では、マニュアルの簡略化やドライバCDの省略も進み、付属品も少なくなりつつある。

 これだけ条件がそろえば、それらを収めるパッケージは容易に小型化できそうなものだが、現実は必ずしもそうではない。小さな本体に似つかわしくないほど巨大なパッケージが、変わらず店頭に並んでいるのだ。

 パッケージが小さくなれば輸送コストも下がり、また販売店にとっても同じ面積で多くの製品を陳列できるようになるため、メーカーにとっても販売店にとってもプラスになりそうなものだが、実際はそうではない。これは一体どのような理由によるものなのだろうか。メーカー側、販売店側それぞれの事情を探ってみよう。

●大きなパッケージは万引き対策だが通用しない場合も……

 パッケージを小型化できない理由としてよく知られているのは、万引き対策だ。ポケットにすっぽり入ってしまうような小さなパッケージだと、防犯タグを取り付けるにしても限界があり、容易に万引きされてしまう。

 これが文房具の消しゴムやシャープペンシルの芯など安価な品であればまだしも、USBメモリやメモリカードなどは何千円もする場合があり、万引きによるダメージは非常に大きい。それゆえ、パッケージサイズを大きくすることでポケットに入れられなくし、物理的に万引きを防ぐという、アナログな対策が取られているというわけだ。

 もっとも、パッケージを大きくすると購入後の持ち帰りにも支障を来すので「持ち帰りが面倒だから通販サイトで買う」という理由で客を逃したくない販売店側としては、この方法は痛しかゆしだ。また年々売上を伸ばしつつあるネット通販では、そもそも万引き対策は必要ではないため、万引き対策だけを目的としてパッケージを大きくすることは、かつてに比べると減少しつつある。

 ちなみに、先ほど例に挙げたUSBメモリやメモリカードはここ十数年ほどで店頭での現物展示はほぼ姿を消し、いまでは展示カードによる陳列が一般的になっている。セールスポイントや仕様など、パッケージに書かれたのと同じ情報を印刷した展示カードを店頭につるしておき、それをレジに持っていくと、会計時にバックヤードから現物が出てくるというシステムだ。

 これは万引き防止の意味合いもあるが、製品の特性上、容量違いや色違いなどのバリエーションが多く、パッケージが大きくなると陳列が困難になるためだ。

 なおここまで紹介した、万引き対策としてのパッケージサイズの大型化は、外国人窃盗団には全く通用しない。外国人窃盗団は日本の万引きとは異なり、小脇に抱えられる程度のサイズであれば製品を強引に持ち去ろうとするからだ。

 これらへの対抗策として考え出されたのが、空箱による展示である。空箱での展示は主に店頭展示にボリュームを出し、在庫の縮小を悟られないために用いられるが、外国人窃盗団に対する持ち去り対策としても有効に機能しているのが現状だ。

●パッケージは輸送箱のサイズから逆算して作られる

 さて、パッケージサイズが肥大化するもう1つの理由は、メーカーが定める「規定梱包」の関係によるものだ。パッケージが小さくならない理由の本命は、むしろこちらといっていい。

 あらゆる製品には、輸送箱ごとの封入数を定めた「規定梱包数」なる単位が存在している。規定梱包数は少なければ数個、多ければ100個とかなりの幅があるが、1つの輸送箱にその数がぴったり収まるよう計算されている。

 身近なところだと、食玩などで10個のパッケージが1つの展示箱に入ってコンビニの店頭に置かれているのは、「規定梱包数=10」ということになる(食玩は、実際にはさらにカートン単位の規定梱包があるが、ここでは話を単純化するため省略する)。

 販売店からの注文をこの規定梱包単位で請けるようにすれば、メーカーは工場から納入された輸送箱をわざわざ開梱して数量を調整しなくて済むので、発送時の手間がかからないほか、荷受をする販売店側にとっても検品が容易になる。特に食品や化粧品などでは、規定梱包以外の端数での注文はNGというケースがほとんどだ。

 規定梱包数はメーカーのWebサイトやカタログにも、取引先向けの情報として「規定梱包数=12」などと書かれていたりするので、これまで知らなかった人は、意識して見てみると面白いかもしれない。

 さて、規定梱包数は輸送箱のサイズを統一して物流コストを下げるのを目的に考え出されたものであり、パッケージサイズは全く異なる製品でも、規定梱包単位だと同じ体積になるよう設計されている。

 例えば、製品Aのパッケージの体積が製品Bの2倍であれば、製品Aの規定梱包数を5、製品Bの規定梱包数を10にすることで、体積は同じになる。こうすれば同一の輸送箱が使えるため、輸送コストも等しくなる。混在してパレットに積んだり、コンテナに詰め込んだりするのも容易になるというわけだ。

 現実的には、ありとあらゆる製品を1種類の輸送箱でまかなうのは難しいため、数種類の輸送箱を用意し、どれかに適合するようにしておくのが常である。

 もし、イレギュラーに小さい製品が出てきた場合でも、最終的には輸送箱にぴったり収まるサイズにする必要があるため、パッケージのむやみな小型化はできない。あくまでも輸送箱ありきで、そこから逆算してパッケージサイズは割り出されるのだ。

 これが、製品の小型化や付属品の減少にもかかわらず、パッケージがなかなか小さくならない最大の理由だ。戦略的な事情で特殊なパッケージサイズを採用するといった判断がない限り、この原則が崩れることはない。

●不ぞろいなパッケージサイズが意味するもの

 もっともこれは、製品開発のほとんどのプロセスを自社主導で行っているメーカーの場合だ。OEM(ODMを含む。以下同)製品の場合、OEM元からパッケージの型紙が提供され、それに合わせて国内向けのパッケージデザインが起こされる。こうした場合、どんな詰め方をしても自社の輸送箱にぴったり収まることのない、イレギュラーなサイズのパッケージが誕生することになる。

 それゆえ、不ぞろいなパッケージサイズを見ると、その製品がOEMかどうか判別する1つの手掛かりになる。OEM製品でも自社オリジナルのパッケージを起こす場合もあるので「パッケージサイズがきっちりそろっていればOEMではなくオリジナル」というわけではないが、その逆、つまり「他とはパッケージサイズが不ぞろいな製品はOEM」である可能性は、かなり高い。

 もちろん「OEM製品=悪」というわけではないが、他社製品のOEMであれば同一製品が他のルートで流通していることも多く、そちらの方が安価に入手できることもあるので、必要以上にこだわらなくともよい。自社のオリジナル製品なのか、それともOEM製品なのかは、こうした思いもよらないところからも判別できるのだ。

最終更新:10/1(土) 6:25

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