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コンビニに負けない親になるには

ニュースソクラ 10/2(日) 19:00配信

【いま大人が子供にできること(21)】お金なんてかけずに子どもをよくみて

 日本が大きく変化したのは1970年前後……コンビニとマクドナルドとウォークマンの登場によるもの、が大きかった……と私は思います。

 コンビニがこんなにも日本の文化をひっくり返すだなんて、誰が予想したでしょう(ウォークマンについてはまたこの次の機会に)。

 当時は、こんな夜遅くまでやっててくれる便利な店ができたんだ!
 すごーい!
 じゃなかったでしょうか(当時は本当にセブンイレブン……で23:00までしかやっていなかったので、いまほど華やかで便利ではありませんでしたが)。
 
 でもそれが子どもの世界をかなりひっくり返すことになってしまった、と思うのは、コンビニが主食を売るようになったからです。
 それまでは朝昼晩、親は三食ご飯を作らなくてはなりませんでした。

 それ以前の物資が不足していた時代には、そもそも材料を手に入れるのから苦心しなければならなかった……。
 外食する場所も、物もなかったときには、必死になってご飯を食べさせることイコール親の愛情のあかしになり得ました。

 それが朝、千円渡せば子どもはとりあえず飢えずに生き延びることができるようになってしまったのです。
 コンビニだけではなく、気軽に外食できる店が増え、毎食お米を炊かなくても食べようと思えば食べられる、という時代になりました。
 その後、90年代になると孤食(一人でご飯を食べること)と個食(家族がバラバラで食べること)が叫ばれるようになり、小学校のカリキュラムに“食育”が加わりました。

 ある食育の授業のあと、コンビニでカツ丼ではなく、揚げ出し豆腐といんげんのごま和えと豆ご飯、という渋い買い物をしている三年生の男子を見て、いや、小学校時代の教育って凄い、知識は本当に力になるんだ、と思ったものです。
 子どもって、教えられて納得したことはちゃんとやるんですよね。
 じゃ、そういうものは使っちゃダメなのか、といわれそうですが、それは頻度の問題でしょう。
 いつもは作ってて困ったとき外食、なのと、ほとんど……なのは違うでしょ?

 子どもたちはお父さんやお母さんの作ったカレーは美味しい、といいます。
 子どもは食料だけでなく、ご飯のときに愛情も食べるのです。

 ドイツの「おじいさんのマフラー」という短編集のなかに、休日、お母さんを休ませるためにレストランへ行こう!
 息子を楽しませるためにドライブだ!
 というお父さんが出てくる話があります。

 おそらく四年生くらいのその息子は作りかけの模型を作っちゃいたいし、スープだけのご飯だって、レストランのよりマシだからうちにいたい、と思うのですが、口には出せません。
 
 このお父さんは悪い人ではないし、かなりゼイゼイいって人並みの家族サービスをしなくちゃいけない、と頑張っているのですが(ですからひそかにいまいましい、とも感じているわけですが)肝心の息子のことはちっとも見ていません。

 なにをしたい?

 とも聞かないし、彼を喜ばせたい、とは初めから“思いつかない”のです。
 息子はそれを敏感に感じ取ってこっそりため息をつく、という児童文学です(そう、これでも、子どもの本なんです)。

 それと対照的なものに『かばくんとおとうさん』(あかね書房)という日本の絵本があります。
 
 かばくん(幼稚園くらい、男の子)のお父さんは、じゃ、お願いね、とお母さんがお出かけしてしまったあと、炊飯器をあけて
 “おっ、かばくん、ご飯があるよ。おにぎりにしよう”
 という、あまり家事が得意ではなさそうなお父さんです。

 でも彼は、めんどくさいからとファストフードに行こうとはしません。
 ちゃんとおにぎりを作ろうとします(具はなんにも入ってなさそうですが)。

 このお母さんは、自分の夫を信頼しています。
 だから昼御飯の用意なんかしないでとっととでかけていけるのです。

 かばくんは素直に、わーい、おにぎり、といって喜びます。
 そうしてお父さんは、いいこと考えたぞ、と洗濯物干しのロープとシーツで庭にテントを作り、そこでおにぎりを食べよう、といいます。
 そりゃ、楽しいに決まってるよ!

 子どもが楽しいと思うことと大人が楽しいと思うことは、ずれることがあります。
 大金払っていった遊園地より、ブランコのほうがよかったりするのです。
 子どもを楽しませ、幸福にするのにお金がいるとは限りません(お金がいるものもありますけどね)。
 
 パジェロ買ってテント買ってバーベキューセット買ってキャンプだ!
 というのが、かつて流行ったことがありました。
 でもそれって子どものためじゃなく、あなたが欲しかったんだよね?
 と思ったことが結構ありました。

 親の趣味と子どもの趣味がぴったり同じなら子どもも楽しいでしょう。
 でも、やりたくない、といっても聞いてもらえなかったら、楽しくないよね?

 ローストビーフやステーキがいるのではなく、カレーやおにぎりでいいのです。
 立派なテントやアウトドアの設備はなくても、シーツのテントでいいのです。

 お父さんが作ってくれた!
 お父さんが自分のいうことに耳を傾けてくれた……支持してくれた……ということは子どもを幸福にします。

 それは確かに手間ですが、そうしてたいていは普通でまるっきり派手ではなく、やりがいがない、と感じるかもしれませんが、その手間はそれごと子どもに手をかけた、ということで、子どもたちはそれを敏感に感じ取って、心が“食べる”のです。

 なにが必要かは、欲しいかは個人差があります。
 本気でディズニーランドに行きたい!と思ってる子どももいれば、おにぎり持ってブランコ!と思ってる子どももいるのです。

 ですから、相手を見て何が欲しいのか、何が必要なのかを考えることと、自分がやってやりたいと思うことが本当に子どもを幸福にするのか、それとも自分がやりたいだけなのか、をチェックする必要があります。

 人間はとても上手に自分を騙すいきものですからーー。

■赤木 かん子(本の探偵)
1984年、子どもの本の探偵としてデビュー。子どもの本や文化の評論、紹介からはじまり、いまは学校図書館の改装からアクティブラーニングの教えかたにいたるまで、子どもたちに必要なことを補填する活動をしている。
高知市に「楽しく学校図書館を応援する会」として学校図書館モデルルームを展開中……。
著書多数。

最終更新:10/2(日) 19:00

ニュースソクラ

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