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椎名林檎の東京五輪への伏線、フレンチポップとの繋がり 「渋谷系音楽」を世界に提示か

MusicVoice 10/2(日) 15:16配信

 盛況のうちに幕を閉じたリオ五輪。8月21日、9月18日におこなわれた閉幕式で、次回開催都市・東京によるパフォーマンスが繰り広げられた。クリエイティブ・スーパーバイザーと音楽監督を務めたのはシンガーソングライターの椎名林檎。このショーに使われている音楽を考察する限り、彼女はクールジャパン・ミュージックとして「渋谷系」を世界に提案しようとしていることがうかがえる。そして、今月初めに東京・フランス大使館でおこなわれた、映画『男と女』制作50周年記念記者会見でも椎名の伏線が見え隠れてしていた。それは、複数のジャンルが入り組む「渋谷系音楽」のなかの「フレンチポップ」とのつながりだ。

 あまりに有名なこの映画『男と女』の主題歌を歌ったのは映画にも出演している作曲家ピエール・バルー。この映画をきっかけに彼は音楽レーベル「サラヴァ」を立ち上げたが、このレーベルも今年で50周年を迎える。それを記念して「現代のフランス人歌手がこのレーベルから生まれた名曲をカバーする」というコンセプトのもと、コンピレーション盤『サラヴァの50年』がフランス、カナダ、日本で発売が決定しているのだ。興味深いのは、この作品には日本勢として2人のシンガーが参加している点である。一人はカヒミカリィ、そしてもう一人が椎名林檎。

 “いわゆる”「渋谷系」として多くの人が思い浮かべる音楽は、フレンチポップの影響を受けた楽曲なのではないかと思う。囁くようなボーカルが特徴の、あのサウンドだ。まさしくな楽曲が収録されたこのCDにウィスパーボイス日本代表とも言える、カヒミカリィと肩を並べて椎名が登場しているのは驚きである。

 しかし、椎名は過去に、元々シャンソンで現在はジャズスタンダードとなっている楽曲「枯葉」をフランス語でカバーするなどもしている。だからフレンチポップを歌う事は何も特別なこととは思えなくもない。ただ、意味深いのは彼女の参加曲なのだ。

 椎名が歌ったのは、1968年フランスでおこなわれた10回冬季五輪の記録映画『白い恋人たち(原題=13 jours en France)』主題歌をリメイクしたもの。彼女はこれを「13 jours au Japon ~2O2O日本の夏~」と改題し、歌詞を改変している。原題の意味は「フランスにおける13日間」。つまり改題後の意味は「日本における13日間」となる。東京オリンピックにかけて選曲、歌詞の置き換えに至ったことは疑うべくもない。

 関係者への取材によると、今回の日本人歌手2人の人選は、ピエール・バルーの夫人アツコ・バルーによるもの。椎名は今年3月頃にオファーを受け、興味を示し、参加が決定したのだという。選曲については椎名サイドから提案があったようだ。歌詞のアレンジを普段は許さないピエール・バルーもその内容が「サラヴァらしいスピリットがある歌詞だ」と喜んでこの歌詞を許諾したそうだ。

 海外でも発売される作品にこの様な楽曲を選択するとは、やはり彼女が「渋谷系」を世界に発信しようとしていることの伏線なのだろうか。これで複数のジャンルが入り組む「渋谷系」の中から「クラブジャズ」「ハウスミュージック」に続き、「フレンチポップ」にも椎名による五輪の印が押された形になる。(取材・小池直也)

最終更新:10/2(日) 15:37

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