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在宅医療・みとり知って 「自宅で最期」富山市わずか8.5%

北日本新聞 10/2(日) 0:39配信

■医師・看護師の訪問増

 住み慣れた自宅で最期を迎える「在宅死」の割合が8・5%(2014年)と、人口20万人以上の都市で全国2番目に低い富山市。国の医療の方針が在宅重視にシフトする中、近年は、市内でも訪問診療を行う開業医や看護師らの活動が活発化してきた。在宅でのみとりは少数派で市民の理解があまり進んでいないことから、在宅医療に携わる医師らは「自宅で医療を受け、みとり、みとられるという選択肢があることを知ってもらいたい」と話している。(社会部・荒木佑子)

 「きょうは胃ろうの管を交換しますね」。9月上旬、富山市内の民家。やまだホームケアクリニック(富山市二口町)院長の山田毅医師(42)が、ベッドで横になる男性(83)に声を掛けた。男性は脳梗塞や肺炎で入退院を繰り返し、寝たきり状態。山田医師は手早く胃ろうのチューブを交換し、正しく胃内に挿入されたかを内視鏡で確認した。

 男性と2人暮らしの妻(81)は「病院に行かなくても来てもらえるから心丈夫。助かっている」と笑顔を見せた。

 市内の在宅療養支援診療所は32カ所(2015年3月)。11年には市内の開業医や看護師らが連携して在宅医療の向上に取り組む「とやま在宅協議会」が発足し、今年9月末に住民主体の「健康まちづくりマイスター連絡会」と初の情報交換会を開くなど地域での浸透を図っている。

 在宅医療を担う開業医は外来診療も手掛けるケースが大半だが、14年開設の同クリニックは訪問診療中心。通院が困難な高齢者や末期がん患者らの自宅を1日7軒ほど定期診療に回り、急変時は24時間体制で駆け付ける。医師は4月から1人増の2人体制になった。山田医師は「在宅医療は『お金のある人しか受けられない』『1人暮らしでは無理』などと思われがち。実態を知ってほしい」と語る。

 在宅療養支援に取り組む看護師やリハビリスタッフも増えている。訪問看護ステーション(休止中除く)は市内に26カ所あり、この3年で7カ所増。14年開所のアモール訪問看護ステーション(黒瀬北町)は、看護師に加え、リハビリスタッフを充実させている。4月から働く理学療法士の稲生拓也さん(27)は「住み慣れた環境で自分らしく過ごすには在宅でのリハビリが必要」と考え、病院から転職。「高齢化が進む中、在宅サービスの必要性は増している」と言う。言語聴覚士の虎谷恵美さん(34)は、嚥下(えんげ)障害の高齢者らの自宅を訪れリハビリを施している。「病院でなく、地域に出て活動する言語聴覚士は少ない。もっと増えるといい」

 本郷はなの木薬局(本郷町)は6年前、薬剤師が老老介護の家庭や末期がん患者宅に出向き服薬管理・指導する支援を開始。利用者は月約70人に増えた。薬剤師の松本裕樹さん(35)は「医師や看護師らと協力し、いろんな目で患者を見ることが大事」と話した。

 市は来春、総曲輪小跡地で開設する地域包括ケア拠点施設に在宅医療を担う「まちなか診療所」を設ける。医師3人体制を目指しており、在宅医療の普及を図っていく。


■受け皿整備、不可欠 県内、全国平均下回る
 2015年に県内で病院や診療所で亡くなった人は79・7%。自宅は9・9%(全国は12・7%)にとどまる。25年には3人に1人が高齢者になると見込まれ、病院でみとる医療を続けるには財政的に限界がある。国は、症状が比較的軽い患者は自宅療養などに切り替えてもらい、不必要な入院を減らして医療費を抑える方針を打ち出している。

 県内では、25年の適切な医療体制を示す「地域医療構想」の策定に向け議論が進む。国の推計による県内の25年の必要病床(病院ベッド)数は、14年より4703床少ない9552床。全国一律の計算式で算出し、地域の実情を反映した数値ではないものの、ベッドを削減する分、在宅医療などの受け皿は不可欠だ。

 県内で在宅医療に従事する医師は、12年の288人から15年には456人に増加。訪問看護ステーション数(休止中を除く)は12年の39カ所から16年には61カ所に増えており、変化の途上にある。

北日本新聞社

最終更新:10/2(日) 0:39

北日本新聞