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「ハイサイ・ハイタイ」の一歩先は? 岐路に立つ那覇市のしまくとぅば普及運動

沖縄タイムス 10/2(日) 18:30配信

 那覇市の「ハイサイ・ハイタイ運動」が、ことし5年目を迎えた。日常業務にしまくとぅばを取り入れる市役所内の草の根運動が根付きつつある一方で、市民向けは、本年度はしまくとぅば継承・普及に特化した大人向け事業がゼロに。関係者は「『ハイサイ』の一歩先をみてほしい」と訴えている。(社会部・篠原知恵)

 「ハイターイ」のあいさつで始まる朝礼や庁内放送、毎日午後3時に流れるしまくとぅばのラジオ体操。市役所内には「ハイサイ市民課」に「ちゃーがんじゅう課」、通称・ハイサイ君の登場するステッカーや自動販売機まで-。

 2012年4月、翁長雄志前市長(現知事)の肝いりで始まったハイサイ・ハイタイ運動。「日々の生活でうちなーぐちを耳にする機会がめっきり少なくなった。特に役所内はそう感じる」。運動スタート初日の前市長の発言を受けた形で役所のあちこちにしまくとぅばが踊り、市職員に冊子「すぐに使えるウチナーグチ」も配布。まさに行政を挙げた運動が滑り出した。

 それから5年余り。12年に運動推進計画を取りまとめた市の企画調整課の担当者は「庁内で確かに息づいてきている。庁内のメールやりとりにしまくとぅばを使う職員も増えた」と、確かな歩みに自信を深める。

 だが他方で市役所の外に目を向ければ、足どりのおぼつかない側面もある。

 しまくとぅば継承・普及のため、13年度から始まった「うちなーぐち講座・成果公演」と「島々ぬくとぅば語やびら大会」の両事業。一括交付金を財源に3年続き、若年者から高齢者まで多くの市民が参加して好評だったが、本年度は「中止」になった。

 市の文化振興課によれば、重複する部分があることから両事業を「うちなーぐち講座・成果公演」事業に一本化することを決定。「語やびら大会」は廃止した。だが、講座後の成果公演で使ってきたパレット市民劇場が、公演時期に改修工事で利用できず、本年度はうちなーぐち講座事業そのものも中止したという。

 このため本年度は、市のしまくとぅば継承・普及に特化した大人向け事業は“ゼロ”に。ハイサイ・ハイタイ運動の一貫で12年度に作成したしまくとぅば教材を市内小学生に配布するのみになった。

 一方でうちなーぐち講座は成果公演よりも、週1度の講座がメインで「本末転倒」との見方も。関係者からは「成果公演の会場を別にしたり、どこかで講座そのものだけするなどして事業継続できたのでは」と残念がる声が出ている。

 「さみしい。那覇市はしまくとぅばの普及・啓発に先鞭(せんべん)をつけたが、今では県のほうが積極的に取り組んでいるくらいだ。もっと力を入れてほしい」。市文化協会うちなーぐち部会の名嘉山秀信事務局長も言う。「しまくとぅばはウチナーンチュの魂、自分たちの文化を継承するツール。ハイサイ、ハイタイのカタコトで止まらず、継続的に取り組んでほしい」と求めた。

 6年目を前に、市の「ハイサイ・ハイタイ運動」は岐路に立っている。

最終更新:10/4(火) 16:00

沖縄タイムス