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人気の「合同会社」が事業承継に向かない理由

ZUU online 10/3(月) 7:10配信

「合同会社を設立し、仲間とビジネスを始めた」--。司法書士という職業柄、筆者はこのような話をよく聞く。

この「合同会社」という会社形態をご存じだろうか。2006年5月1日に会社法が施行された際に認められた比較的新しい会社形態である。特徴は出資者の責任が株式会社同様に「間接有限責任」であること。誤解をおそれずに言ってしまうと、出資者の責任が「軽い」のだ。

昨今、この「合同会社」は非常に人気のある会社形態になっている。政府の統計によると、合同会社の設立は2006年こそ3392件であったがその後右肩上がり。2012年には1万件の大台を突破し、2015年になると2万2223件にまでなっている(株式会社の設立登記件数は、15年は8万8803件)。

しかしながら、合同会社形態には「落とし穴」がある――。合同会社形態を採用してしまう理由と、合同会社の事業上のデメリットを紹介する。

■コストが安く、柔軟な会社運営が可能

合同会社形態が人気なのには理由がある。株式会社に比べ、合同会社はコストが少なくて済むのだ。

必要な経費といえば会社設立費用。株式会社であれば、設立登記に必要な税金などで最低でも20万円ほど用意しなければいけない。一方で合同会社なら約6万円で設立が可能だ。この他にも、株式会社なら必須になる定期的な役員変更登記や決算公告の義務などがない。

また、株式会社とは違って、会社運営が柔軟にできるのも合同会社のメリットである。たとえば利益を配当する場面だ。株式会社では基本は株式数の比率で各株主への配当額が決まってしまう。一方で合同会社なら、定款に定めることで出資比率とは異なった形での柔軟な配当が可能になる。仲間内でビジネスを行う際、各人の貢献度を考慮し、出資比率とは異なった基準で配当ができるのだから合同会社は便利な会社形態である。

■合同会社は「事業承継」で不利?

そんな便利な合同会社だが、ビジネスに適さない面がある。まず一つ挙げるとするならば、「事業承継で不利になることがある」のだ。

通常株式会社なら、大株主である経営者が亡くなった場合は、相続人が株を相続し、会社に対して影響力を持ち続けることが可能だ。今度は経営者であった者の子が大株主になるのだから、自分自身を経営者に立てて、ビジネスを引き継ぐことはさほど難しくない。

合同会社では原則これができない……。合同会社の場合、出資者が亡くなった場合、相続人に出資が当然には相続されることがない。会社法によると、出資者の死亡は退社扱い、簡単にいうと「出資の清算」が行われて、出資者という地位はなくなってしまう。事業を承継させる場面で、これは非常に大きなデメリットといえる。

出資者という地位を相続の対象にすることは可能だが、別に手続が必要になる。会社の根本規則である「定款」で、出資者の地位は相続の対象になる旨を定めなければいけないのだ。

■「事業の継続」も不利?

注意点がまだある。合同会社は「事業の継続」が困難になりやすい会社形態なのだ。

たとえばこういう場面を考えてみて欲しい。特に親族でもない、数人の仲間が集まって新しいビジネスを立ち上げる。コストも安く、柔軟な会社経営ができる合同会社を選択し、各自が出資した資本に基づいて仕事に着手する。

これはよくある場面だが、合同会社という形態を選択したがために、ビジネス自体をたたまなければいけなくなることがある。仲間内で意見の相違などが出て、会社を辞めると言い出す者が出てくる。

法律によると、会社との縁を切りたいと申し出た者は、出資者という地位を自ら失うことが認められている。問題になるのは出資額の返還。会社が出資を受けた分を、その者に返すと会社財産の流出で会社を維持できないこともある。

それだけではない。会社が順調に成長していたとしたら、当然「投資の成果」が表れている。各自出資した額が100万円だとしても、会社が軌道に乗ったことで資産規模・ビジネス規模が何倍にもなっていることがあるのだ。このとき、出資を引き揚げる者は、投資の成果も含めて回収することを主張するだろう。

一人の者が会社から離れるとき、会社から財産が流出する……。株式会社ではこれはあり得ないことだが、合同会社ならあり得る。考えてみて欲しい、会社に現金がなく、出資者に返還するために会社財産を売却しなければいけないなどの場合は、もう事業の継続が不可能になることがあるのだ。

合同会社は便利な反面、採用には注意しなければいけない。自分自身の資産管理会社等に利用する場合は別だが、実業のために合同会社を利用するのは少し考え直した方がよいかもしれないのだ。(碓井孝介、司法書士)

最終更新:10/3(月) 7:10

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