ここから本文です

火力発電の稼働率をIoT×AIで改善、東京電力と三菱日立のノウハウ

スマートジャパン 10/3(月) 9:25配信

 火力発電所の運営に最先端の情報技術(IT)を導入する動きが活発になってきた。先行するのは東京電力フュエル&パワー(東京電力FP)だ。プラントメーカー大手の米ゼネラルエレクトリック(GE)と9月26日に提携したのに続いて、3日後の29日には三菱日立パワーシステムズ(MHPS)と提携することを発表した。相次ぐ提携を通じて国内と海外に火力発電所の運用支援サービスを展開していく。

【その他の画像】

 新サービスのキーワードは「IoT」(Internet of Things、モノのインターネット)である。火力発電所の中核になるタービンをはじめ、さまざまな設備にセンサーを設置してネットワークでつなぎ、運転状況に関するデータをリアルタイムに収集・分析するITの手法だ。分析結果をもとに発電設備を最適な状態で制御できるため、稼働率や発電効率が向上して燃料費やCO2(二酸化炭素)排出量の削減に役立つ。

 東京電力FPとMHPSは提携の第1弾として、フィリピンで稼働中の火力発電所にIoTによる遠隔監視システムを導入して効果を検証する予定だ。フィリピンの首都マニラから東南に100キロメートルほどの地点にある「パグビラオ(Pagbilao)発電所」が対象になる。

 この火力発電所は1996年に運転を開始した石炭火力発電所で、丸紅とJERA(東京電力FPと中部電力の合弁会社)の共同出資会社が運営している。新たにIoTとAI(人工知能)の技術を駆使した遠隔監視システムを導入して、稼働率の向上や発電効率の改善、メンテナンスの最適化に取り組む。IoTとAIを組み合わせると、過去の運転実績のデータも参考にしながら、システムが最適な判断を下して発電設備を制御できる。

 東京電力FPとMHPSの試算によると、火力発電設備の稼働率あるいは発電効率を1%向上させることができれば、発電量の増加や燃料の削減につながって、年間に数億円の収益改善を期待できる。世界各国で数多く運転中の火力発電所に適用した場合の経済効果は極めて大きい。

国内最大の火力発電所でもIoTを導入

 東京電力FPはIoTを活用したGE製の設備管理システムを導入するプロジェクトも並行して推進していく。千葉県にあるLNG(液化天然ガス)火力発電所では国内最大の「富津(ふっつ)火力発電所」から導入を開始する計画だ。

 富津火力発電所で最新鋭の4号系列にGE製のシステムを導入して、発電設備に設置したセンサーから送られてくる情報をもとに運転状況を監視する。IoTを駆使して発電設備を効率的に運用する「デジタル・パワー・プラント」の国内初の試みとして取り組む。

 一方で東京電力FPは福島県内に最先端の石炭火力発電所を建設するプロジェクトを推進中だ。石炭をガス化してから発電する高効率の発電設備で、10月中に県内2カ所の火力発電所の構内で建設工事を開始する。このプロジェクトで採用する石炭ガス化複合発電設備はMHPSが納入する予定になっている。両社で新たに手がけるIoTとAIを駆使した運用支援の仕組みも導入する可能性がある。

 東京電力グループは2014年1月に策定した「新・総合特別事業計画」の中で、発電・送配電・小売事業の長期戦略を打ち出した。火力発電事業を担う東京電力FPは燃料の調達から発電設備の運用までを一貫して手がけるサプライチェーンを展開して、コスト削減を進めることが戦略の柱になっている。

 さらに2015年3月には中部電力と合弁でJERA(ジェラ)を設立して、国内の火力発電所の運営を除く全事業をJERAに移管した。JERAは2030年までに海外の発電事業を現在の3倍以上の2000万kW(キロワット)に拡大する一方、国内でも発電所の新設・リプレースの規模を1200万kWに増やす計画だ。

 東京電力FPは各分野の有力企業と連携しながら、国内外の火力発電事業でリーディングカンパニーの地位を強化していく。新たにIoTを駆使した運用支援サービスを開始して、他社が運転する火力発電設備も事業の対象に加える。

最終更新:10/3(月) 9:25

スマートジャパン