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古里の農業に新風 6次化で魅力発信 磐梯町の鈴木翼さん

福島民報 10/3(月) 12:52配信

 福島県磐梯町の農業鈴木翼さん(31)は就農して3年目の今年、トマトや会津身不知柿などの加工品を次々に開発、販売している。東日本大震災と東京電力福島第一原発事故による逆境に負けず、新たな発想で農業の可能性に挑み続ける。
 磐梯町西部の上西連地区。黄金色の棚田が広がる一角で3棟のビニールハウスが日を浴びて光る。地下60メートルからくみ上げた天然水で育まれたトマト「磐梯天授(てんじゅ)」は昼夜の寒暖差でうま味を増す。
 代々続くコメ農家の長男として育った。ただ、「農業は格好悪い」と思い込んでいた。郡山市の専門学校を卒業後、市内を拠点にロックバンドのドラム兼ボーカルとして、アルバイトで生計を立てながら東北や関東のライブハウスを巡った。
 震災後の平成23年12月、音楽活動に区切りを付け、会津若松市の自動車販売店に就職した。自宅で原発事故による米価の急落を受け、父一三(かずみ)さん(57)が肩を落とす姿を見た。「無理に継ごうと思わなくていいぞ」。父の言葉が耳に残った。「何とかしなければ」。販売店を辞し、農業への葛藤を抱きつつも、25年4月から父を手伝った。
 初めに曽祖父の代から大切にされてきた会津身不知柿の管理を任された。ある日、蔵で一枚の写真を見つけた。柿畑に立つ、若き日の父の姿があった。農業と向き合い、自分を育ててくれた父に自らを重ね、26年4月に就農した。
 安定した収入を確保するため、町内でトマト栽培の名人とされる遠藤晃正さん(51)に教えを請うた。10アールで栽培を始め、26年は目標の収量7トンに1トン及ばなかった。苗の間隔を見直し、昨年は8・5トンと成果を上げた。今年は昨年以上を見込む。いつしか農業に夢中になっていた。
 昨年の冬、規格外のトマトの活用を思い付いた。町内の農家の加工所を利用し、専門家の助言を受けて試行錯誤を重ねた末にトマトを原料にしたデザートのムースを開発した。今年5月に町内の道の駅ばんだいで発売すると、4日間で200個を完売した。インターネットでも販売し、9月には会津身不知柿と町内の農家から仕入れたブルーベリーを使ったムースも発売した。
 インターネットを通じて資金を集めるクラウドファンディングを活用し、今年から20アールの畑にエゴマを作付けした。今月中旬にも約200キロの収穫を目指している。60リットルほどのエゴマ油を搾り、12月に道の駅ばんだいで販売する考えだ。
 昨年からはトマトの収穫体験を始め、次世代を担う子どもたちに魅力を発信している。さらに町内の農家と連携した6次化の輪を広げ、地域の活性化を目指す。「自分の得意分野を生かし、町の素晴らしさを全国に届けたい」と夢を語る。
 磐梯町観光協会の岡部哲也副会長(46)は「自らの農産物を使って町の魅力を発信したいという熱い思いを応援したい」と話している。

福島民報社

最終更新:10/3(月) 12:55

福島民報