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【インタビュー】ジ・アゴニスト「バンド全員の音楽性の幅が拡がった」

BARKS 10/6(木) 23:24配信

カナダ出身のエクストリーム・メロディック・メタル・バンド、ジ・アゴニストが通算5作目のアルバム、その名も『ファイヴ』を2016年9月28日に発表した。

◆ジ・アゴニスト画像

ダニー・マリノのヘヴィかつメロディアスなギターとアリッサ・ホワイト・グルーズの女声ヴォーカルがせめぎ合うメタル・サウンドを引っ提げてデビューを飾った彼らだが、アルバム3枚を発表後にアリッサがアーチ・エネミーに加入するために脱退、バンドの存続に暗雲が垂れ込めることになった。

だが、彼らはヴィッキー・サラキスを迎えて完全復活。『アイ・オブ・プロヴィデンス』(2015)でのデス・ヴォイスとメロディアスなクリーン・ヴォイスの双璧をフィーチュアしたサウンドは世界的に大絶賛を浴びた。

そして2016年、ニュー・アルバム『ファイヴ』はさらにエクストリームかつドラマチックに進化したジ・アゴニスト・サウンドを堪能することができる凄盤だ。現代メタル・ディーヴァ最高峰の一角を占めることになったヴィッキーが『ファイヴ』について語ってくれた。

──『ファイヴ』はあなたが加入して2作目のアルバムとなります。あなたのメンタリティは前作『アイ・オブ・プロヴィデンス』と比べてどのように変化しましたか?

ヴィッキー・サラキス:プレッシャーは減ったと思う。前作はジ・アゴニストに参加して初めてのアルバムだったけど、音楽面ではプレッシャーは感じなかった。自分が好きな音楽をやっていただけだからね。とはいっても、バンドのファンが自分を支持してくれるか、頭の中では不安に思っていたかも知れない。『アイ・オブ・プロヴィデンス』が熱狂的に受け入れられたことで、そんな心配がなくなったわ。ヴォーカルや歌詞のアイディアは誰かの“後任”でなく、自分らしく書くことができた。『ファイヴ』の方がはるかに自分のアイデンティティが込められているわ。

──『ファイヴ』の音楽性の幅が拡がったのは、あなたのインプットが大きいのでしょうか?

ヴィッキー・サラキス:私だけでなく、バンド全員の音楽性の幅が拡がったと思う。私自身についていえば、メタルは大好きだけど、それ以外のジャンルの音楽もずっと聴いてきた。メタル・シンガーになる以前からハード・ロック、ジャズ、ラテンなどのカヴァー・バンドで歌ってきたし、イタリア語、ドイツ語のオペラも歌ってきたわ。1年半クラシック歌唱を学んだけど、もっとモダンな音楽をやりたくて、独学で自分のスタイルを築いたのよ。私はオリジナルなことをやりたくて、このバンドでもリフやコード進行をもらうと、自分なりの要素を加えるようにしている。ブラック・メタルのリフとビートの上にメロディアスなヴォーカルを乗せたりね。バンド全員が私のインプットを歓迎してくれるし、これからも曲作りに貢献していければいいと考えているわ。

──アルバムのソングライティングはどのように行っているのですか?

ヴィッキー・サラキス:多くの曲はダニー(マリノ/ギター)が書いているわ。パコ(パスカル・ジョビン/ギター)も「ジ・アンカー・アンド・ザ・セイル」「ザ・ヴィレン」の2曲を書いている。曲のラフなアイディアを渡されて、私がどのように歌うかは任されているわ。歌詞の95%は私が書いているけど、ダニーもアイディアを出したりする。ギター・ソロは大半がパコね。

──ジ・アゴニストはカナダのモントリオールを本拠地としていますが、あなたの“サラキス”という名字はギリシャ系、ダニーの“マリノ”がイタリア系など、異なった文化が音楽性に反映されているでしょうか?

ヴィッキー・サラキス:うーん、カナダのケベック州にはさまざまな民族や人種が住んでいるけど、あまり異文化という感じはしないし、バンドの音楽に民族音楽が影響を与えているとは思わないわ。私は両親ともギリシャ人で、アメリカで生まれて10歳のときにギリシャに移ったのよ。でもロックをやりたかったから、私だけカナダに住むことにした。

──あなたが影響を受けたバンドやシンガーは?ギリシャの音楽からは影響されましたか?

ヴィッキー・サラキス:アネク・ヴァン・ガースバーゲンやミカエル・オーカーフェルト(オーペス)、それからもちろんブルース・ディッキンソン(アイアン・メイデン)、ロニー・ジェイムズ・ディオ(レインボー、ブラック・サバス、ディオ)…メタル以外だとトリ・エイモス、スティング、アデルなどからインスピレーションを得るわ。バンドではイン・フレイムスやペイン・オブ・サルヴェイション…ギリシャのメタル・バンドには良いものも多いけど、あまり影響は受けていない。女性ヴォーカルのバンドだとナイトウィッシュやエピカみたいなタイプのバンドが多くて、あまり好みではなかったのよ。

──『ファイヴ』の1曲目「ザ・モーメント」はアルバムからのリーダー・カットとなりましたが、それは何故でしょうか?

ヴィッキー・サラキス:「ザ・モーメント」はアルバムで最初に完成させて、すべてがピッタリはまった曲ね。ヘヴィでありながらキャッチーでエモーショナル、コーラスが心に染み入る曲で、アルバムの音楽性を集約すると思った。それでアルバムの1曲目にして、ビデオも作ったのよ。アルバムにはスピード・メタル・チューンもあるけど、インパクトがあるのはこの曲だと思う。

──アルバム全体のムードとは異なりながら、バンドの新たな代表曲のひとつとなりそうなのが、ジャジーでメランコリックなバラード「ザ・レイヴン・アイズ」ですね。

ヴィッキー・サラキス:うん、「ザ・レイヴン・アイズ」はすごく気に入っているし、バンドにとっての頂点のひとつだと考えている。ジ・アゴニストの新しい側面を表現している曲で、アルバムの他の曲と異なったタイプだから第1弾シングルには向いていないけど、聴いた人はみんな気に入ってくれているわ。この曲の原型はダニーがアコースティックで書いて、私にケータイで送ってきたのよ。『アイ・オブ・プロヴィデンス』の「ジェントル・ディジーズ」の発展形と言えるかもね。あの曲はアコースティック・ギターとヴォーカルだけで完成させたけど、「ザ・レイヴン・アイズ」にはもっと何かが必要だと感じた。それでピアノを加えたりした。アレンジャーのイゴール・コロシェフは一度曲を聴いてインスピレーションを受けて、ストリング・カルテットを加えたりしたアレンジを助けてくれたわ。ストリングスを入れたことで、まるでジェームズ・ボンド映画の主題歌みたいになった(笑)。プロデューサーのマイク・プロトニコフに「どんなヴォーカルをイメージしているの?」と訊かれて、「アデルみたいな感じかな」と答えたのを覚えているわ。

──イゴール・コロシェフは元イエスのキーボード奏者としても知られていますが、彼との作業はどんなものでしたか?

ヴィッキー・サラキス:イゴールは本当に音楽的な人物だった。とにかく作業が速くて、何か決定すると次の日までにどうにかしてくれるのよ。天才というのはこういう人なのかと納得したわ。

──インストゥルメンタル曲「ザ・ウェイク」のミックスもイゴールが担当していますね。

ヴィッキー・サラキス:そう、「ザ・ウェイク」は私がピアノで書いた曲よ。以前オーケストラ・アレンジを実験したことがあるから、その手法を当てはめてみた。この曲に続く「ザ・レザレクション」はプログレッシヴな曲で壮大なエンディングがあるから、組曲として効果的だと思ったのよ。

──「ザ・レザレクション」と「ザ・トライアル」はアルバムでも屈指のドラマチックでダイナミックな曲ですが、これらの曲を書くプロセスはどんなものでしたか?

ヴィッキー・サラキス:どちらの曲もダニーがラフなアイディアを書いて、私に渡してきたのよ。「ザ・レザレクション」はすぐに歌詞を書いて完成させることができたけど、「ザ・トライアル」はどうすればいいかわからなくて、いったん横に置いて、他の曲を完成させてからもう一度聴き返して、新鮮な視点から書き直したの。

──「ザ・トライアル」のダークでシアトリカルな大曲志向の構成は、ピンク・フロイドの『ザ・ウォール』に収録されている同題の「ザ・トライアル」に通じるものを感じました。

ヴィッキー・サラキス:私たちは皆ピンク・フロイドのファンだし、『ザ・ウォール』はロックの歴史に残る名盤だから比較されるのは光栄だけど、まったく意識していなかった(笑)。“トライアル=裁判”というのは人間の本性がすべて露わになる場だし、ドラマチックな舞台なのよ。

──メロディアスなヴォーカルからグラウルまで多彩な歌唱がジ・アゴニストの音楽性に新たな起伏をもたらしていますね!

ヴィッキー・サラキス:うん、でも私はまず第一にシンガーだと考えている。どの曲でもまずメロディアスに歌うことを頭に置いて、リフがそれを求めるときだけ、グロウルやスクリームをするようにしているわ。叫んだり唸ったりするよりも、歌うことの方が大事なのよ。私は歌う才能を神様から授かったと考えている。歌唱というのは生まれ持った“才能”によってかなり左右されるのよ。私は作曲家やピアニストにもなりたかったけど、それはゼロからのスタートになる。それよりも一歩踏み出しているシンガーになるのがベストだと考えたのよ。

──アイルランドのシンガー・ソングライター、ホージアの「テイク・ミー・トゥ・チャーチ」をカヴァーしたのは?

ヴィッキー・サラキス:「テイク・ミー・トゥ・チャーチ」をカヴァーするのはダニーが提案してきたの。メインストリームのヒット曲にジ・アゴニストの表現を加えて、新しいものにしたかった。ラジオで流れるような曲だけどダークで、メタル・ソングにアレンジするのがピッタリだと思ったわ。

──『ファイヴ』にともなうツアーで日本に来てくれるのを待っています!

ヴィッキー・サラキス:まず北米ツアーをエピカ、フレッシュゴッド・アポカリプスとやって、それからヨーロッパ、南米、日本などを回りたいと考えているわ。私がバンドに加入した直後(2014年)、一度ジャパン・ツアーが中止になっていて、すごく残念だった。バンドのメンバーは既に日本でプレイしているから、ファンがクレイジーになるさまをいつも話してくれる。子供の頃から『ドラゴンボール』『ONE PIECE』のような日本の漫画を読んできて、大人になってからも『攻殻機動隊』のファンだから、私にとって日本は夢の国なのよ。『ファイヴ』ツアーで日本に行くのが楽しみだわ。

取材・文:山崎智之
Photo by FAYA

ジ・アゴニスト『ファイヴ』
2016年9月28日日本先行発売
【100セット通販限定 サインカード付きCD+Tシャツ】¥6,000+税
【CD】 ¥2,500円+税
※日本盤限定ボーナストラック収録/日本語解説書封入/歌詞対訳付き
1.ザ・モメント
2.ザ・チェイン
3.ジ・アンカー・アンド・ザ・セイル
4.ザ・ゲーム
5.ジ・オーシャン
6.ザ・ハント
7.ザ・レイヴン・アイズ
8.ザ・ウェイク
9.ザ・レザレクション
10.ザ・ヴィレン
11.ザ・パスート・オブ・エンプティネス
12.ザ・マン・フー・フェル・トゥ・アース
13.ザ・トライアル
14.テイク・ミー・トゥ・チャーチ(ホージア カヴァー)
15.ザ・レイヴン・アイズ(アコースティック ver.)*日本盤限定ボーナストラック

【メンバー】
ヴィッキー・サラキス:(ヴォーカル)
ダニー・マリノ(ギター)
クリス・ケルズ(ベース)
サイモン・マッケイ(ドラムス)
パスカル“パコ”ジョビン(ギター)

最終更新:10/6(木) 23:24

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