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キヤノン、基幹部品のイメージセンサーを外販へ。ただし産業用に限ります

ニュースイッチ 10/3(月) 7:50配信

方針転換は大きな分岐点。カメラ販売の縮小で稼働率が低下?

 キヤノンは2年内をめどに、カメラ製品の競争力の根幹であるイメージセンサーの外販に乗り出す。これまで同社は技術で差をつけるため、イメージセンサーの基盤技術を外部に出していなかった。ただイメージセンサーの技術進化と産業分野へのカメラ用途の拡大により、外販の条件が少しずつ整ってきた。数年後に産業分野を中心に10―20%のシェアを目指す。同社による外販の開始は、拡大する市場へ大きく影響しそうだ。

 デバイス開発本部長の井上俊輔執行役員は「数年前から、超高感度センサーなど外販で価値を発揮できる特殊な技術は出てきていた」と話す。相補型金属酸化膜半導体(CMOS)センサーの開発において、フルサイズより小さいサイズ規格「APS―H」で2010年に約1億2000万画素、15年に約2億5000万画素を達成した。肉眼では認識できない遠方の建物や物体も鮮明な画像を得られる。

 15年初めには御手洗冨士夫会長が「外で売ることを考えてみてはどうか」と案を示し、プロジェクトは一気に具体化した。折しもカメラ市場が縮小して、自社センサー工場の稼働率低下が課題となっていた。すでに画素の多い多画素センサーは量産準備を完了しており、外販の第1弾として1―2年内をめどに事業化することを目指す。

 さらに、このほど外販の核となるグローバルシャッター機能を搭載したセンサーを開発した。光から変換した情報を全画素で同時に読み出すことで、高速に変化する被写体も歪(ゆが)みなく撮影する。同機能は主なターゲット市場となる産業用カメラの必須要件だ。同社は多画素センサーも含めて競合の民生カメラには外販せず、産業分野に訴求する。

 他社のグローバルシャッター機能を搭載したセンサーに比べ、キヤノンは映像制作にも使える画質にこだわった。同機能は映像をためるメモリーを大きくするため、画質を左右するフォトダイオードが小さくなる。そこでフォトダイオードとメモリーの配置の最適化や、情報の読み出し方を工夫。半分の大きさのフォトダイオードでも見かけ上、ためられる電荷の量を従来と同じに増やして、きれいな画像を両立した。

 第1弾として、17年1月に発売する自社の映像制作機器に同センサーを採用する。外販では「過剰性能にならないタイプも開発する」(井上執行役員)予定だ。

 またデバイスを生産する国内3工場のいずれかで、車載製品の生産に必要な規格の取得準備を17年内に整える。「まだ車はチャレンジのレベル」(同)としながらも市場成長の見込みが大きく、より高度なカメラ技術が求められる。成長途上の産業用カメラ市場で、キヤノンがどう存在感を示せるか注目される。

<解説>
 およそ2年前、当時カメラ部門のトップだった真栄田雅也社長は「色んな人から聞かれるけど、(イメージセンサーの)外販はやらない」と断言していた。カメラの基盤技術として差別化を維持することはもちろん、販路や顧客ニーズと自社技術のすりあわせ、ボラティリティーの激しさなど解決すべき課題は複数あった。

 その意味で外販への方針転換は、大きな分岐点だ。カメラ販売の縮小による稼働率の低下が大きな理由の一つだろう。用途を産業用に限っている点が一つの落としどころだったのだと思う。既に始めているマシンビジョンの外販も自信の裏付けになったかもしれない。ただ将来、車載向けも視野に入れるとなると、ソニーという巨人が立ちはだかる。事業の一層のスピードアップが欠かせない。

最終更新:10/3(月) 7:50

ニュースイッチ