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前立腺がんのロボット手術 患者の体の中にいるような感覚

山陽新聞デジタル 10/3(月) 11:38配信

川崎医科大付属川崎病院泌尿器科 上原慎也副部長(泌尿器科准教授)

 前立腺がんの手術を劇的に変えた米国生まれの手術支援ロボット「ダ・ビンチ」。12月に「川崎医科大学総合医療センター」として装いを一新する川崎病院は、新たな船出に当たり、最新鋭の「ダ・ビンチ」を6月に導入した。その手術を指揮するために白羽の矢が立ったのが上原だ。千葉県の民間病院から帰郷し、要職に就いた。

 上原が「ダ・ビンチ」を使った手術を初めて見たのは2004年、腹腔(ふくくう)鏡手術の視察のために訪れた米国の病院だ。国内ではその前年に腹腔鏡手術で患者が死亡し執刀医が逮捕される事件があり、医療界挙げて安全性の確保と先端手術の技術向上に乗り出していたころだ。

 患者から数メートル離れた距離から機器を遠隔操作し、患者に触れずに手術をする。精度の高さや患者の体に負担が掛からない出血の少なさに感激し「いずれは日本でもこれが主流になる」と確信した。

 07年、アジアで最も「ダ・ビンチ」が普及していたシンガポールに国費留学し、操作技術を習得した。その手術機器は2年後の09年にようやく国内で薬事承認された。以来、岡山大病院と、同大の関連病院である前任の我孫子東邦病院(千葉県我孫子市)で、320例の前立腺がんの全摘手術に携わった。全国でも上位にランクされる実績だ。

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 「自分が患者さんの体の中にいるような感覚なんですよ」

 そんなたとえが全く大仰ではないほど、メリットは大きいという。機器には4本の腕があり鉗子(かんし)の先端には人間の指先よりも器用に曲がる関節が付いている。鮮明な3D画像は拡大することもできる。手ぶれもない。

 「より確実な手術ができ、出血量が少ないため回復が早く、機能も温存しやすい」と強調する。

 開腹手術で実績を重ねてきた医師もその優位性を認め、手術に使うようになってきている。上原の元には、全国の病院から手術指導の依頼が舞い込んでいる。

 「開腹手術も腹腔鏡手術も、外科医の技量が物を言うが、『ダ・ビンチ』は少しコツをつかめば特に難しい手技は必要ありません。これからますます広がりますよ」

 泌尿器科が扱う疾患は数多い。「分野ごとにスペシャリストがおり、その方に診てもらうのが患者にとって最善である」と、全ての病気を自分一人で診る気はないという。川崎医科大(倉敷市松島)などと助け合いながら最善の医療を提供する考えだ。

 たとえば、「ダ・ビンチ」を所有していない施設からの紹介や合同手術は積極的に受け入れる。逆に、高度な専門性が必要な男性不妊症や更年期障害は、川崎医科大病院などに治療を依頼する。

 同病院でロボット手術をするのは前立腺がんの全摘のみ。腎がんや尿管がん、ぼうこうがんといったがんは内視鏡や腹腔鏡で対応する。泌尿器系のがんは進行が遅いものもあり、経過を追いながら、手術や治療が必要かどうかを判断することも多い。

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最終更新:10/3(月) 11:38

山陽新聞デジタル