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宅建業法改正でインスペクション導入がすすむ!? その目的とは?

SUUMOジャーナル 10/3(月) 8:00配信

平成28(2016)年5月に宅地建物取引業法の一部を改正する法律案が成立した。不動産を売却、購入するとき、消費者であるわれわれにとってもかかわりの深い法律だ。そこで、この改正にいち早くから注目し、対応している一般社団法人住宅不動産取引支援機構の矢部智仁さんに、この法律改正の背景と今後不動産取引がどのように変わっていくのかを、伺った。

■建物状況調査(インスペクション)によって、安心できる取引環境を

新築、中古を含めた住宅販売の中で中古住宅の流通シェアは、欧米諸国に比べて日本は極めて低い。中古住宅の流通を活性化させることが、国の大きな施策となっている。これが法律改正の大きな目的のひとつだと、矢部さんは言う。ただ中古住宅は、一般の消費者にとって建物の構造など見えない部分が多く、その状態や質に対する不安が付きまとうのが、現実だ。

「中古住宅を売り買いするときに、品質に関する正確な情報の開示を進めたい。その手段として、建物状況調査(インスペクション)というものがあります。これは、建物の構造耐力上の重要な部分の状況を専門家によって調査するもので、その結果を不動産取引において、きちんと示すことで、不安を解消していこうとするものです」

実際の法改正の重要なポイントは3つだ。
(1)媒介契約時に
宅地建物取引業者が、売主または買主に、建物状況調査(インスペクション)を行う業者を紹介できるかどうかを示し、意向に応じてあっせんする。

(2)重要事項説明書に
建物状況調査(インスペクション)の結果を買主に対して説明する。

(3)売買契約時に
建物の現況(基礎、外壁等)を売主、買主が相互に確認し、その内容を宅地建物取引業者が売主・買主に書面で交付する。

【図1】宅建業法改正の内容とメリット(出典:国土交通省「宅地建物取引業法の一部を改正する法律案 概要」より転載)

インスペクションの実施には、当然コストがかかる。しかし、現況の住宅の品質を正しく知ることによって、購入検討者は判断が早くなる。そのことは売主にとってもメリットだ。また、引渡し後、万が一瑕疵(かし)があった場合に、その補修費用等を保証する売主向けの保険「既存住宅売買瑕疵保険」への加入も、スムーズになる。保険の加入には住宅の検査およびその検査に合格することが必須だからだ。

「ただ建物状況調査(インスペクション)は今回の改正でも、義務化はされていません。しかし、大きな流れとして中古住宅の品質に対する情報開示の質を高めていく方向にあり、今回は、建物状況調査(インスペクション)というものを広く知らしめたいというのが、法律改正の背景です。費用は売主が持つのか、買主が持つのか、宅建業者が付帯サービスとして行う場合もあるでしょう。いずれにしても、売主にとっても買主にとってもメリットは大きいと思います」

■民法改正を念頭に、消費者保護を強化

宅地建物取引業法は改正されたが、施行は平成30年となっている。改正業法が施行される2年後に何があるのか。実はそのころに民法も改正、施行される予定だ。今、宅建業法以外にも、保険業法やマンション管理に関する法律なども、より質の高い情報開示を求め改正され、契約の実務が変わろうとしている。

「個人間の権利義務といった法律関係を規定した基本法である民法が、大きく変わろうとしています。そこで、
不動産や保険といった業種でも、関連する法律が、民法の改正をにらみつつ改正されているのが現実です」

民法の改正案そのものは、現在国会で審議中であり、正確な改正・施行のスケジュールは未定だ。
「民法改正の趣旨は、契約時、『契約の内容』を明確にし、何が『契約不適合』になるのかを明らかにしたいというのが流れです。そのことを踏まえると、不動産の売買にあたっては、契約前に売主、買主が、物件の状況等を確認し、書面にすることが求められると、考えています」

具体的にいうと、買主は建物の構造や質に不安を抱え、売主は物件引渡し後に欠陥・キズといった瑕疵が見つかった際にその修復や損害金を支払うリスクがあった。今後は契約時にインスペクションを行い、建物の状態を明らかにしておくことで買主にとっては住宅の質の不安が解消され、売主にとっては物件引渡し後のトラブルを防げるというわけだ。

つまり、「不明確であったリスクを、より明確にする。これを法律で課すことで、消費者保護を進めて行きたい」。これが大きな目的だ。

中古住宅は、個人間の売買が多い。中古住宅は大きな構造物であり、長年住み慣れた売主にとっても、その状況はつかみにくく瑕疵担保責任というリスクがあった。法律改正により、売買時にはより質の高い情報開示が求められ、それは取引の一層の安心をもたらすことにつながる。中古住宅の流通が促進され、住宅ストック活用の流れが、より大きくなっていくだろう。

●取材協力:
一般社団法人住宅不動産取引支援機構 矢部智仁さん

コハマジュンイチ

最終更新:10/3(月) 8:00

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