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「役立つ」研究求める日本の風潮を危惧 ノーベル賞・大隅教授の寄稿に注目集まる

ITmedia ニュース 10/4(火) 11:10配信

 ノーベル医学・生理学賞の授与が決まった東京工業大の大隅良典栄誉教授が昨年、文部科学省の競争的資金「科研費」(科学研究費助成事業)の公式サイトに寄稿した文章が注目を集めている。

 寄稿で大隅教授は、「すぐに役に立つ研究」ばかり求められる昨今の日本の風潮を危惧し、「『人類の知的財産が増すことは、人類の未来の可能性を増す』と言う認識が広がることが大切」と訴えている。

 「科研費について思うこと」というタイトルで昨年7月、科研費を運営する日本学術振興会のWebサイトに掲載されたもの。特に生命科学領域の研究に関して、科研費の制度について思うことをつづっている。

 大隅氏は寄稿で、「私の研究のほぼすべてが科研費に支えられてきた」と述懐。最近は、国立大学などへの運営費交付金が削減されたことで、「科研費などの競争的資金なしには研究を進めることは困難になっている」と指摘する。

 科研費は研究者個人を対象にしているため、「はやりで研究費を獲得しやすい分野の研究者を採用する傾向が強まり、大学における研究のあるべき姿が見失われそうになっている」と危惧。若者は新しい未知の課題に挑戦することが難しく、「次代の研究者はますます保守的になって新しいものを生み出せなくなってしまうのではないだろうか」と心配している。

 国全体で研究の「出口」を求める傾向が強くなっていることへの懸念も示し、「研究者は自分の研究が、いつも役に立つことを強く意識しなければいけない訳でもない」と指摘。「『人類の知的財産が増すことは、人類の未来の可能性を増す』と言う認識が広がることが大切」としている。

 さらに、「若者がほとんど就職試験での模範回答のごとく、考えもなく“役に立つ研究をしたい”という言葉を口にする。直ぐに企業化できることが役に立つと同義語の様に扱われる風潮があるが、何が将来本当に人類の役に立つかは長い歴史によって初めて検証されるものだという認識が、研究者の側にも求められていると思う」と、「役に立つ」研究を求める風潮に危機感を示している。

 今後の科研費のあり方として、「個人研究のための現行の科研費以外に、研究機関を対象とした研究環境整備を進める科研費の制度が創られると良い」と提案。また、「とりわけ基盤研究の絶対額が不足しており、採択率がまだ圧倒的に低い」とし、増額を求めている。

最終更新:10/4(火) 11:10

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