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三重の人気駅弁店の“名物社長”は元女優

デイリースポーツ 10/4(火) 11:19配信

 鉄っ子の間で知らない人はいないというほど人気の駅弁店が三重・松阪にある。創業明治28年から続く「駅弁のあら竹」だ。百貨店などで開催される「駅弁大会」に出店するとすぐさま完売になるほど、グルメファンを魅了する。

 「三重で唯一」の駅弁店あら竹には4代目の“名物社長”がいる。新竹浩子さんだ。「現場主義」をモットーに営業、製造、広報も勤め上げる敏腕社長。実は彼女、NHK大河ドラマに出演した経歴を持つ元女優なのだ。言葉や感情をたくみに操る女優を経験したことで「相手の心情をくみ取れるすべを持っている」と胸を張る。「言葉の裏にはその人の気持ちがある」と話すように言葉が与える影響が大きいことを誰よりも理解している。客と接する売り場では、「心がけを大切にしてほしい」とスタッフへの指導にも熱が入る。

 駅弁に使用される牛肉は松阪牛をはじめ、国産黒毛和牛のA4、A5ランク。米は三重県産のコシヒカリを使用。地元食材を愛し、一つひとつ手作りで添加物は不使用など味と質にこだわりを持っている。まさに「一弁入魂」。 

 双葉社漫画アクションの人気連載「駅弁ひとり旅」とコラボした「松阪でアッツアツ牛めしに出会う!!」(税込み1400円)は社長発案。いかにも男メシを伺わせるパッケージで、内容も充実している。容器はヒモを引き抜き数分待つだけで出来立てを演出してくれる加熱機能式容器を使用。ツヤツヤ白米に色鮮やかな錦糸卵を敷き詰め、その上にはどっさりと黒毛和牛のロース肉が君臨する。飾り付けには花形にんじんとほうれん草。ふたを開けた瞬間のガーリックと牛肉の迫力ある香りとボリュームに圧倒された。加熱をすることで牛肉の美味しさが引き出され、いつでもアッツアツを味わえるのが特長である。

 匂いも気にならない。自社商品を食べていた時に思いついた女社長ならではの発見を駆使した。それが「ガーリックパウダー」。生のガーリックと比べ、乾燥し粉末にしたものははるかに匂いが少ないという点に着目。次の商品で使おうと完成したのが「松阪でアッツアツ牛めしに出会う!!」だった。食べ応えがあるだけでなく、「食べた後は女性も気にせずキスできますよ~」と陽気に語る社長がお茶目だった。

 そんな新竹さんの人柄はFacebookでも垣間見える。毎日更新される自身のページには、イベントの様子や、店を訪れた客との写真でいっぱい。ファンから寄せられる「いいね」やコメントで盛り上がりをみせている。また、客とつながるツールとして社長が立ち上げた“ファンクラブ”「あら竹駅弁友の会」は「入会手続き不要、あら竹好きであれば誰でも大歓迎」と門口を広くして受け付けている。記者も「あら竹駅弁友の会新聞記者部会女子部」の部長に任命された。三重出身、男社会で働く女性という共通点から入会を受け入れてくれた。“本当の友達”になった感覚に陥り自然と頬が緩んでしまった。

 多忙を極めながらも「お客さんの素直な言葉が聞きたい」という思いからネットでの交流や、売り場に立つこと、配達など全てにおいて全力を注ぐ努力家。社長でありながら店の電話対応もこなす。明るい声で迎えてくれる受付嬢のようだ。客だけでなく取引先、スタッフ、人という人全てとフレンドリーに接することが社長の活力になっているという。1日の睡眠は3時間。美しい容姿とは裏腹に美容にかける時間は24時間のうち数分だけ。「1日30時間あればいいですね」。どこまでも仕事人間なのである。

 「うちは地方の小さい駅弁屋」と謙遜するが、社長というスパイスが駅弁により一層うまみをもたらし、人々を引きつける魅力になっていることは間違いない。誰よりも努力をして築き上げた駅弁屋の成長が三重に光を注ぎ込んでいる。(デイリースポーツ・疋田有佳里)

最終更新:10/4(火) 12:05

デイリースポーツ