ここから本文です

ロシアは対中戦略上、日本を必要としている

ニュースソクラ 10/4(火) 16:00配信

不安定な世界の行方/政治学者イアン・ ブレマー氏に聞く(下)

 米国が世界秩序に責任を持たない、あるいは持てない「Gセロ」 の状況のもと、米国と中国、ロシアの関係はどうなっているのか。 その日本への影響はどう見ればいいのか。地政学リスクの分析を専 門とする米国コンサルティング会社ユーラシア・ グループの社長で政治学者のイアン・ブレマー氏に話を聞いた。

――9月に中国で20カ国・地域(G20) 首脳会議が開かれた際、 専用機で空港に着いたオバマ大統領にレッドカーペットが敷かれた タラップを中国側が提供しなかったなど、 米中関係は悪化しているようにみえるが。

 レッドカーペットがないのはあまりナイスなことではないが、 関係が特に悪化しているかどうかは定かではない。( 米中関係などを)そのように「政治化」してとらえるのは、 いかがなものか。

 中国は何十年も前から強大化の一途をたどっており、今後10年以内に世界最大の経済大国になるだろう。 米国をはるかに上回る規模でアジア諸国と貿易を行い、 アジア地域における軍事力の構築を進め、 米国への反撃力も高めている。 中国の影響力が劇的に変化していることを考えれば、 米国が以前と同じ成果を手にしにくくなっているのは当然だ。

 米国はロシアを嫌っており、軽蔑しているが、 中国に対しては尊敬の念を示す。中国人も米国人に対し、 一種の尊敬の念を示す。双方とも、大人として振る舞っている。

 米国が、北朝鮮問題で中国に先んじ、高高度防衛ミサイル(THA AD) の韓国への配備を決定したときなどは中国は怒りを隠さなかったが 、ゲームの進め方を心得ている。逆に中国が米国を出し抜いても、 米国はむしろ、以前より大きな視点でとらえるようになっている。

 もちろん、(中国が軍事拠点化に乗り出している) 南シナ海の問題など、米中が深刻な問題を抱えているのは確かだ。 しかし、温暖化対策では協調しており、(中国からの) サイバー攻撃も減っている。その時々で良くもなり悪くもなるが、 米中は現在、まずまずの関係にあると思う。 

――9月にロシアで日ロ首脳会談が開かれたが、安倍首相は、 北方領土返還も含めた平和条約の締結を目指していると言われる。 ロシアも、日本からの経済協力などをにらみ、 日ロ関係の緊密化に意欲的だ。

 日ロ関係が緊密になるのはいいことだ。長期的に見て、 ロシアは中国と良好な関係を維持するのが非常に難しくなるだろう 。ロシアの周辺国に対する中国の影響力が高まっているからだ。 ロシアは、それを快く思っていない。

 ロシアは、エネルギーやインフラ、投資における中国( の影響力の高まり)を深刻な問題だとみなしている。たとえば、 中国はすでにロシアをしのぐ規模で対カザフスタン投資を行ってい る。こうした点を考えれば、長期的に見て、 ロシアは日本に単にお金を期待しているだけでなく、 戦略的観点から臨んでいる。

 プーチン大統領のように、 その気になれば領土問題を解決するパワーを持った強力な指導者と の関係構築は、安倍首相にとって重要なことだ。北方領土返還も、 将来的にはありうるだろう。

――米国務省は、 日ロ関係の緊密化に懸念を持っていないと表明しているが。

 米国にとって大きな問題だとは思わない。日本は、 米国が何かを必要とするとき、 常に助けてくれる非常に近しい同盟国だ。

 一方、米国人は、 ロシアと親しい中国やイランの対ロ政策がうまくいっていないこと や、フランスがシリア問題で(米国より)ロシアと、 より緊密に動いていることを認識している。9月のG20首脳会議 で、オバマ大統領は、 シリア問題でプーチン大統領と会わざるを得ず、 1時間半の会合を持ったが、あまりうまくいかなかった。

 米ロ政策から中国とロシアが得をするようなことがあれば、 米国にとっては芳しくない。米国は、 中ロ関係のみが深まるのを良しとしない。

 一方、中国も、 現段階で日ロ関係の緊密化を案じてはいないだろう。 ロシアが軍事・ 外交的に大きく何かを変えるようなことをするとは思わないからだ 。ロシアも、そうした動きは避けるだろう。

■聞き手 肥田 美佐子(ジャーナリスト 在NY)
ニューヨーク在住ジャーナリスト。東京都出身。「ニューズウィーク日本版」編集などを経て1997年、単身渡米。米広告代理店などに勤務後、独立。08年、ILO(国際労働機関)メディア賞受賞。米経済、大統領選など幅広く取材。現在、経済誌を中心に寄稿。カーリー・フィオリーナ元ヒューレット・パッカードCEO、ジム・オニール前・英財務省政務次官、シカゴ連銀副総裁、トム・リッジ元国土安全保障長官など、米(欧)識者への取材多数。

最終更新:10/4(火) 16:00

ニュースソクラ

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

318歳のホログラムが語るSF世界での愛の未来像
SF作家のモニカ・バーンは、人種、社会そしてジェンダーの型にはまらない登場人物たちが織り成す、豊かな世界を想像しています。このパフォーマンスにおいて、バーンはピラーという登場人物としてホログラムで登場し、人間が宇宙に移住した近未来から、愛と喪失の物語を過去の私たちに向けて発信します。「想像する未来と実際の姿の対比はいつだって面白いのです」とバーンは言います。