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スマホで防災無線を遠隔放送 川口の企業が開発、気象情報の放送も

埼玉新聞 10/4(火) 10:32配信

 モノのインターネット(IoT)製品の開発や販売を手掛けるクエスタ(埼玉県川口市、大石守社長)は、スマートフォン(スマホ)の通信技術を活用して遠隔放送ができるクラウド型拡声放送設備「スマ放クラウド」を開発した。スマホを使ってどこからでも、建設工事現場の作業員への指示や防災無線放送ができ、建設業者や自治体を中心に幅広い需要が見込まれそうだ。

■大震災を教訓に

 開発のきっかけは、東日本大震災。防災対策本部の建物から避難指示を出し続けた職員が、津波にのまれて犠牲になったとのニュースを聞いて胸を痛めた。大石社長は「どこからでも避難誘導放送ができていれば、悲劇は起きなかった。防災対策の向上に役立てばと思い、製品の開発に着手した」と振り返る。開発を進める中で、災害の影響を受けやすい建設工事現場でも活用できるよう改良を重ねた。

 「スマ放ステーション」は受信端末や特殊アンプ、スピーカー、ソーラー電源、内蔵バッテリーが一体になった製品(高さ約120センチ)。配線や充電が不要で設置場所を選ばない。専用アプリ「スマ放マイク」をインストールしたスマホが拡声マイクの代わりとなり、カメラ映像で現場の状況を確認しながら作業員に的確な指示が出せる。

 アプリの機能には、あらかじめ4種類の音源(サイレン、ラジオ体操第一、開始チャイム、終了チャイム)がインストールされ、音源ボタンを押せばすぐに放送を開始できる。気象庁が発信しているゲリラ豪雨予報などの気象情報を、自動で受信・放送する機能も付いている。

 自治体や学校の放送設備を活用する場合は、無電圧接点装備の「スマ放ブリッジ」を既存の防災アンプに接続することで、スマホでの操作が可能になる。価格はスマ放ブリッジが数万円、スマ放ステーションは40万円程度になる見込みという。

■危機感から創業

 同社は大石社長がIoT関連事業を手掛ける北海道の企業を退社し、独立して立ち上げたベンチャー企業だ。2012年1月にフィリピンで創業し、昨年11月に川口市上青木のSKIPシティ内にある研究室に本社を移転した。創業の理由は、日本の産業に危機感を抱いたからという。

 「前職の仕事でフィリピンに出張した際、韓国政府の国家戦略を目の当たりにして驚いた。韓国はフィリピン政府と協定を結び、フィリピンに英語学校を400校も作っていた。韓国のビジネスマンが短期間で英語を習得し、世界中で活躍できるようにするためだ。韓流ドラマやK―POPアイドルの海外展開も、自国のイメージアップを図る戦略。その事実を知った時、日本はこのままではまずいと痛感し、創業を決意した」

 金融機関も事業を後押し。スマホ端末の量産化やアプリ開発の資金として、日本政策金融公庫と埼玉りそな銀行が総額4千万円の協調融資を行った。「社歴の浅いベンチャー企業に、リスクを取って融資をしていただいたことに心から感謝している。事業を成功させ、日本の産業が世界で輝くための一助となりたい」。

 製品は年明けから本格的に販売を開始する予定。問い合わせは同社(電話048・485・8593)へ。

最終更新:10/4(火) 10:32

埼玉新聞